日本大学理工学部

Step2

海の流れと生態系ネットワーク

海洋建築工学科

東京湾では、陸域近くの浅い海域が工業地帯などの用地を確保する目的で埋め立てられて来ました。その結果、干潟・浅場に棲むアサリなどの生物は、埋立地の間に辛うじて残った干潟・浅場や人工的に造成された小規模の海浜などに生息することとなってしまいました。しかし、アサリなどの生物は、海の大きな特徴である流れを上手く利用して、点在する生息場間でネットワークを構成して力強く生きています。アサリは卵から幼生の時期に海域を浮遊し、その多くは生まれた場所とは異なる場所に着底して成貝になると考えられています。海の生物はアサリだけではなく、海水の比重を上手く利用して、それに浮くことが出来る幼生たちを放ち、海の流れに乗せていろいろなところに運ばせ、生息域を拡大あるいは種の継続を図っていると考えられています。

例えば、東京湾では毎年のように「青潮」というものが発生していますが、青潮の発生した海域では逃げることが不得意な貝類(アサリ等)などが死ぬことになります。しかし、たとえ青潮によってある生息場のいくつかの生物が死滅したとしても、それぞれの生物で他の生息場とのネットワークが形成されていれば、再生は可能です。このように、生態系ネットワークは生物が生き残っていくために重要な働きをしています。

大塚 文和
大塚 文和
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アサリネットワーク模式図 アサリネットワーク模式図

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