原子・分子をあやつり新しい応用物理分野を創造する
電子工学科
1986年に酸化物高温超伝導体が発見されてから、酸化物薄膜の作製技術が飛躍的に向上した。現在では原子1層ごとに堆積制御することも可能である(図1)。この酸化物は、現在の電子デバイス技術をSi系半導体と比較すると、格段に機能が豊富である。
酸化物は機能性の宝庫である。予想もつかない現象も観測される。例えば、材質の異なる両者とも電気を流さない絶縁体同士を原子レベルで接着させると、金属になり、抵抗ゼロの超伝導の性質さえ示す。我々は磁性原子を用いて原子レベルで様々な酸化物を組み合わせ、自然界には存在しない人工的なナノ結晶薄膜をデザインし作製することで、超低消費電力の不揮発性メモリを開発している。さらに、特異な現象の物理的起源を観測する装置と作製装置とを融合することで、迅速に「物理」と「応用」を直結し「新しい応用物理分野」を創造することを実践している。この手法の応用は無限にあり、50年先の先端電子技術を牽引している。
図1:パルスレーザー堆積法を用いた装置の模式図。原子レベルで制御しながら成膜する場合、電子線を用いる。電子線を「薄膜」を堆積する「基板」に照射し、その反射光強度を測定する。薄膜が「1層」「2層」・・・と堆積していくと、その反射強度は振動を繰り返す。さらに特殊な作製法を用いて、自然界に存在しない人工的なナノ結晶構造を作製することができる。