第36回公開市民大学:田中誠

第36回公開市民大学:田中誠

クリーンエネルギー
理工学部精密機械工学科教授 田中誠

今から約30年前(1973年)、第4次中東戦争をきっかけにオイルショックが起こり、日本中がパニック状態となりました。日本各地でトイレットペーパの買いだめ騒動やガソリンスタンドの休日休業など記憶に残っていると想います。また、同じころ、車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)などが原因となる「光化学スモッグ」が発生し、小中学生が病院に運び込まれる出来事が連日のようにニュースになりました。

このようなことから、我々日本人は公害の源となり海外に依存していた化石燃料(エネルギー源)の見直しを真剣に考えなくてはならないことを認識しました。言い換えると、無限と考えていたことが実際は有限であるという事柄に気づきました。地球規模で見れば資源も大気も有限であるということです。この対応策として当時の通商産業省は新エネルギー政策を、また環境庁は公害対策を政策の大きな柱としました。

今回は、これまで述べたことを背景に「クリーンエネルギー」について考えてみたいと思います。なぜ、クリーンエネルギーを考えなくてはならないのでしょうか。それは、発電所や自動車のエネルギー源の大部分が、石油や石炭、天然ガスという化石燃料だからです。これらの化石燃料は枯渇資源といい、例えば石油はこのまま使用すると将来40年で使い果たすということです。また、これらを燃焼する際に、環境に悪影響をもたらす排気ガスや健康に良くない粒子が発生するということです。また、日本では、化石燃料の100%近くを海外からの輸入に頼っていることです。

これに対し、クリーンエネルギー(自然エネルギー)は、太陽エネルギーや水力、風力、地熱エネルギーを思い浮かぶように地球が存在する間、半永久的に利用できるエネルギーで、公害とはほとんど無関係であるということが言えます。まず、クリーンエネルギーの代表選手、太陽エネルギーについて考えて見ましょう。晴天時には1平方メートル当たり約1kWの太陽エネルギーが地球に注いでいます。日本全土では、日本に設置している発電所の電力量の3000〜4000倍ものエネルギー量が注がれています。

太陽エネルギーを直接電力に変換するものとして、電卓にも使われている太陽電池があります。太陽電池は、地球上で酸素の次に多く存在するシリコン(日本語ではケイ素と言います)を材料とします。太陽の光をシリコンに当てると電子が移動し光を直接電気に変えることができます。太陽電池は化石燃料を使用する内熱機関と違って、地球温暖化現象の原因であるCO2(二酸化炭素)、SOx(硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)などの排出ガスの心配もなく、もちろん振動、騒音もありません。現在は、1平方メートル当たり100ワット以上の発電が可能です。南向きの屋根に太陽電池のパネルを見たことがあるでしょう。価格は多少高く、1kW当たり70万円程度の費用が掛かります。日本国内では約40万kWの発電が行われており、2010年には500万kWの発電を考えています。

風力発電がテレビで取り上げられる回数が多くなっています。原理は簡単です。風の力で風車を回しその回転エネルギーを、電気エネルギーに変えるものです。今、10メートルの羽を持つ風車では、風の速さが毎秒10メートル(100メートル競走のオリンピック記録と同じ速さ)のとき100kWもの発電が可能です。風速の3乗に比例してエネルギーが増加します。

現在日本各地で風力発電が進んでおり、1機当り1000kWもの発電が可能な風力発電が行われております。2010年には400万kWの発電計画があります。燃料電池も今話題となっています。今までの自動車のエンジンの換わりに、燃料電池で発電しモータにより車を動かそうとするものです。燃料電池は水の電気分解の逆の反応を利用するものです。

これは、水素と空気があれば発電することができます。この反応で出てくるものは電気と水だけです。このため、環境には非常に優しい発電システムといえます。2010年には200万kWの発電を目指しています。これまで述べてきた、クリーンエネルギーの3つの例は、現状ではそれほど社会に普及しておりません。しかしこれからの地球環境を考えるとどうしても開発を進めなくてはならないものです。ヨーロッパでは酸性雨やチェルノブイユ原子力発電所の事故等から、自然エネルギーを活用しようという政策が進んでいます。ドイツ国内を旅行するとあちらこちらで風車が見られます。

エネルギー源の多くと食糧の多くを輸入に頼っている日本の今後を考えてみると、我々は少しでも多く身の回りにあるクリーンエネルギーを利用し、これからの子供たちに環境保全を考えた夢を与える義務があるものと思い、クリーンエネルギーの話をさせてもらいました。

プロフィール

〈略歴〉
1970年3月 北海道大学工学部卒業
1975年3月 北海道大学大学院博士課程単位取得退学
1976年12月 工学博士の学位取得(北海道大学)
1977年4月 通産省工業技術院機械技術研究所入所(2001年3月迄)
1980年2月 「光エネルギーエンジン・光吸収エンジン」で科学技術庁長官賞受賞
1981年4月 工業技術院サンシャイン推進本部併任(1982年3月迄)
1994年6月 ドイツ ダルムシュタット工科大学招稗研究員(1995年6月迄)
1996年4月 (財)マイクロマシンセンター出向(研究部長)(1998年3月迄)
2001年4月 日本大学理工学部
〈研究内容〉
各種エネルギー変換(光化学反応エンジン、スターリングエンジン、形状記憶合金エンジン等)、燃料電池
〈専門分野〉
機械工学、エネルギー変換工学、熱力学
〈著作〉
共訳:カーエレクトロニクス入門(啓学出版〉(1984)
分担執筆:蓄熱工学2(応用編)森北出版(株)(1995)

PAGE TOP