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【参加報告】航空研究会メーヴェ34「鳥人間コンテスト2017-人力プロペラ機ディスタンス部門-」この夏の記録。

「押切は後悔してないだろうか・・・」
パイロット塩見君は夕闇が迫る琵琶湖の空を静かに仰いだ。


7月30日(日)午前5時。
前日の晴天とは変わり、早朝から激しい雷とそれに続く突然の雨で、各出場チームはそれぞれの機体を守るため必死に作業をしている。
叩きつける雨。開催をも危ぶまれる状況の中、やがて天候が回復し、様々な情報が錯綜する中、鳴島代表や山添副代表も様々な判断を迫られキビキビと指示を出す。
そして3時間遅れで1番機がスタート。
昨年優勝の本学航空研究会は、予定通り全15チームのラスト、最終番機と決定した。


午後5時40分過ぎ。
日没予定時刻は午後7時。
安全確保のため、6時を過ぎると飛ぶことはできない。
こちらの焦りとは裏腹に、琵琶湖の湖面は夕陽で黄金色に、眩しいほどに輝いている。
太陽が沈みかけているのだ。
プラットホーム上では、慌ただしく準備が進み、風を読んでいる。
こういう時こそ平常心が大切だ。
機体をこの高いプラットホームから押し出す作業は練習ではできないので一発勝負だ。
この担当になっている鳴島代表は以前、「パイロット以外で、この完成された美しい機体を最後まで持ってられるのは僕なんです。」と愛おしそうに機体を眺めながら言っていた。
塩見君とパイロットの座を争ったリブ班の押切君が既に泣いている。
最後の最後まであきらめきれなかったパイロットの夢。
でも今、自分の作った翼が塩見君を乗せてその瞬間を静かに待っている。
夕陽で翼とコックピットが金色に輝いている。
彼には格別に眩しく映っているはずだ。
彼らは、握手をしたり抱き合って頑張れよなんて言ったりはしない。
お互いの想いは十分過ぎるほど伝わっている。押切君の想いは今、コックピットの中に塩見君と共にある。
限界を超えて漕いでくれ!!


午後5時55分。審判員のGOサインが出た。
もう行くしかない。
しかし風は北東あたりから強めに吹いている。
塩見君は決断をする。
飛行予定の北ルートから南ルートに変える。
プロペラが回り始める。
そして塩見君の声が響く。


右翼OK
左翼OK
テールOK
3
2
1
GO!


メーヴェ34は今年も力強くプラットホームから滑り出した。
会場から「美しい・・・」とため息が漏れる。
メーヴェの機体は、まるで金色の絨毯のような輝く湖面と夕陽を浴びてそれは今まで見せたことのない表情で美しく輝き、その翼を雄大に広げている。


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うまく背風に乗った。
速い。すごくスピードが出ている。

「よっしゃあ、行くぞ!!」

気合の声が飛んでくる。


実は今回のプロペラには秘密がある。
外から見ると赤と白のメーヴェの機体名とカモメをデザインした模様になっているが、内側(パイロット側)からみると紺とピンクにデザインされている。
これはチームポロシャツの紺とピンクの色合いが好きな塩見君に、リラックスして飛んでもらいたいからというメンバーの愛情だ。


背風にのってぐんぐん進む。

「押切、飛んでるよ。 お前の分まで飛ぶから見てろって!」
「わかってるよ。」


15分過ぎたあたりでもう10キロを超え、その速さに会場が沸いている。
応援席ではメーヴェ34のメンバーそして1.2年生が声の限りに応援している。2年生の次期代表は、木村秀政先生の写真をしっかりと琵琶湖に向けて抱えて応援している。
皆想いは一緒。
今年は、昨年の優勝が決まった時点で最終番機になることがわかっていたので、様々な計測を重ね、風に負けない機体を作ってきた。
そして、パイロットの望む悠々と飛べる機体を作ってきた。
メンバー全員の一切の妥協のない、考え抜かれた機体だ。
来る日も来る日もほとんど欠席者もなく、全員で辛い時期も乗り越え作ってきた。
今、それは塩見君によって琵琶湖の大空に大きな翼をひろげている。


その頃湖面を見ると、ますます激しく波打ちはじめ、白波がたっている。
風が相当強そうだ。
そして気が付くと空が夕闇に包まれ始めている。

「負けらんねぇ。負けらんねぇんだよ!!」

塩見君は痛みと自分自身と戦っている。


15キロ付近、大型ビジョンでみるメーヴェは横から吹いてくる風に苦戦しているように見える。
大きくコースから逸れ始め、必死にペダルを漕いで立て直そうとしているのがよくわかる。
空もだいぶ暗くなってきて目標が見えているのかどうかも定かではない。


機体は湖面ギリギリの高度で何度も持ち直そうと上下させはじめた。
風が容赦なく吹きつける。
塩見君はもう声も出ない。


やがてメーヴェ34は静かに着水した。


記録は17406.86m。
約28分間のフライトだった。


ボート上の山添君が塩見君を引き上げる。
「よく頑張った。ありがとう。」
塩見君は顔をくしゃくしゃにして泣いている。
悔しさが押し寄せる。

「もっと飛びたかった。あーもう、もっともっと・・・・・」
「もっと遠くに飛びたかった・・・」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめん・・・・」
「押切を後悔させないように飛びたかった・・・」

悔しさが途切れ途切れに言葉となって出てくる。
着水する時の気持ちを聞かれ

「機体を作ってくれたみんなの顔が頭に浮かんだ」

と答えた。


そしてぽつりと

「押切は後悔してないだろうか・・・」

と夕闇迫る琵琶湖の空を静かに仰いだ。


会場からは、
この航空研究会の「モノづくり」に賭けた学生たちのまさに「ひたむき」な青春群像に、すすり泣きが漏れ、やがて大きな拍手に包まれた。


メーヴェ34メンバー

フレーム班久保田 関田 萩原 鳴島 宮内 和地
リブ班押切 笠原 北川 清水 三角 山添 
桁班加藤 土屋
尾翼班河原 高橋
プロペラ班浜野 村瀬
パイロット塩見


今年も応援してくださいました皆様、誠にありがとうございました。
心から感謝申し上げます。
航空研究会は来年の挑戦に向け、新しいチームが動き始めました。
どうぞこれからも応援をよろしくお願いいたします。
それから、今年滑空機部門で学生記録を塗り替え優勝された生産工学部津田沼航空研究会の皆さん、本当におめでとうございました。心からお祝い申し上げます。


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