2017年 大学院理工学研究科 シラバス - 機械工学専攻
設置情報
科目名 | 熱機関特論Ⅱ | ||
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設置学科 | 機械工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 庄司 秀夫 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜3 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | F33B |
クラス |
概要
学修到達目標 | 熱機関は自動車、建設機械、船舶、発電機、農業・工業用機械、として交通機関、物流、市 民生活に重要な役割を果たしている。また、エネルギー資源が不足する日本は、東日本大震災と福島原子力発電所事故で明らかになったように、エネルギー問題、電力エネルギー問題がある。この問題を解決する手法のディーゼルエンジンとガスエンジンとを利用した発電システムも熱機関が支えている。近年、電力エネルギーの安定した確保の観点から、大型ディーゼルエンジンを改造したガスエンジンの普及が顕著である。しかし、省資源の立場、地球温暖化・大気汚染等の地球環境から、更なる熱機関の排気対策技術、高熱効率技術の向上が求められている。最新の熱機関(ディーゼルエンジン,ガスエンジン等)の技術を知り、テーマ毎の背景にある熱機関の燃焼の基礎と制御技術を学ぶ。将来、熱機関分野に進む人だけではなく、工学の広い分野に進む人のためにも、熱機関の最新の技術、燃焼、排気対策技術、エネルギ問題を理解して貰えるようにする。 熱機関特論Ⅱ(後期)では,主にディーゼルエンジン(乗用車、商用車、発電、舶用),ガスエンジン及びディーゼル・ハイブリッドエンジンについて取り扱う. |
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授業形態及び 授業方法 |
毎回、テーマ毎の最新のディーゼルエンジン、ガスエンジン、ハイブリッドエンジン等の技 術論文、技術論文に関連する基礎資料を配布して、プロジェクター(Power-point) を利用して講義を進める。必要に応じてテーマの小課題を出して、レポート提出をして貰う。最新の技術情報を紹介するため、技術論文の変更と紹介テーマの順序変更が生じることがあります。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
シラバス(授業計画)に紹介する技術論文・資料を毎回、前もって配布するので、関連する技術について調べて、授業に臨むことが望ましい。 |
授業計画
第1回 | ディーゼルエンジンの基礎知識 [ ディーゼルサイクル・サバテサイクル、燃焼改善の考え方、熱発生率、噴射率、噴霧の蒸発、着火と着火遅れ、燃焼特性、排出ガスのPM (粒子状物質) とNOx (窒素酸化物)の生成) ] について。日本と世界のディーゼルエンジンの有害排出ガス規制について。ディーゼルの燃焼と過給機との関係について。前述のディーゼルエンジン燃焼に関する重要な項目を紹介する。 |
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第2回 | コモンレールシステムとインジェクター(ソレノイドインジェクター・ピエゾインジェクター・ユニットインジェクター)について。Φ-T(当量比-温度)マップとエンジン燃焼、ディーゼルエンジンの有害排出ガス対策技術 [EGR (Exhaust Gas Recirculation)、冷却EGR、高圧EGR、低圧EGR、後処理装置: DPF (Diesel Particulate Filter)、DPR (Diesel Particulate active Reduction System)、尿素SCR (Selective Catalytic Reduction),酸化触媒,吸蔵触媒]について。他 Φ-T(当量比-温度)マップとエンジン燃焼コンセプトの接点。 |
第3回 | 最新の乗用車用の低圧縮比ディーゼルエンジンについて。 (例)マツダ SKY-Dの乗用車用低圧縮比ディーゼルエンジン開発について。 (例)マツダ・小型スポーツ用多目的車SUV (CX-5)について。 (例)マツダ・効率のカギを握る圧縮比について。 (例)マツダ・高効率クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-D 1.5の開発 (CX-3)。 (例)マツダ・乗用車用ディーゼルエンジン技術最前線(小排気量クリーンクリーンディーゼ ルエンジンSKYACTIV-D 1.5の開発)について。他 |
第4回 | (例)ホンダ・新型2.2 Liter 低燃費ディーゼルエンジンの開発について。 (例)ホンダ・新世代1.6L 2ステージターボディーゼルエンジンの開発。 (例)ホンダ・新世代1.6L ディーゼルエンジンの開発(第1,2,3,4報)。 (例)日産・ 新型VR30DDTTエンジンの開発 (例)日産・エクストレイル搭載M9R型クリ-ンデーゼルエンジン。 (例)日産・NP300 Navara搭載 新型4気筒ディーゼルエンジン YS23DDTTの開発。 (例)三菱自動車・「新開発1.8 Liter クリーンディーゼルエンジン」について。他 |
第5回 | (例)トヨタ・新型2.8L直列4気筒ディーゼルエンジンの開発 (ESTEC GD)の開発。 (例)トヨタ・ディーゼル燃焼制御技術の現状と今後について。 (例)トヨタ・ディーゼルエンジンの低圧縮比化技術の研究について。 (例)トヨタ・1.4L小型直噴ディーゼルの開発。 (例)トヨタ・新型 1GD-FTV (ESTC GD) エンジンの開発。 (例)スズキ・新型セレリオ用2気筒ディーゼルエンジンの開発。他 |
第6回 | (例)スバル・水平対向ディーゼルエンジンの燃費向上開発について。 (例)スバル・水平対向ディーゼルエンジンの排出ガス規制対応と燃費改善技術開発。 (例)スバルボクサーディーゼル Euro 5 排ガス規制対応について。 (例)スバル・新開発 Euro6 規制対応水平対向ディーゼルエンジンの紹介。 |
第7回 | 最新のトラック,バスの大型,中型の商用車ディーゼルエンジン技術について。 (例)日野自動車・ポスト新長期排出ガス規制適合E13Cディーゼルエンジンについて。 (例)日野自動車・大型商用車用PM, NOx 低減後処理システムの開発について。 (例)日野自動車・ポスト新長期対応 「新型プロフィア」について。 (例)大型商用車低排出ガス・低燃費ディーゼルエンジンの開発について。 (例)中型商用車用新型ディーゼルエンジンの開発 (例)新型「日野デュトロ」用尿素フリー型ディーゼルエンジンの開発について.他 |
第8回 | (例)いすゞ自動車・次世代型中型商用車用スーパークリーンディーゼルエンジンの開発について。 (例)いすゞ自動車・新型商用車用ダウンサイジングディーゼルエンジンの開発。 (例)いすゞ自動車・いすゞ11型エルフ搭載・4JJ1-TC型ディーゼルエンジンの紹介について。 (例)いすゞ自工・中型トラック・フォワード搭載・ポスト新長期排出ガス規制対応について。 (例)いすゞ自動車・いすゞ10型ギガのエンジンについて。 (例)いすゞ・詳細化学反応を用いたDiesel燃焼解析。他 |
第9回 | (例)三菱ふそうトラック・バス(FUSO)・ JP09 規制対応 6R10 エンジンの紹介について。 (例)三菱ふそう・大型トラック「新型スーパーグレート」6R10 エンジンと尿素SCR BLUE TEC搭載について。他 (例)2.0 L BMW ツインパワー・ターボ・ディーゼルエンジン (320 d 搭載) の開発。 |
第10回 | (例)UDトラックス・新型Quon の大型ディーゼルエンジンとパワートレインの開発。 (例)UDトラックス(ボルボグループ)・ポスト新長期排出ガス規制対応 新型GH7エンジンの開発について。 (例)UDトラックス ポスト新長期排出ガス規制対応 新型GH5 / GH7エンジンの開発について。 (例)UDトラックス (ボルボグループ)・尿素SCR採用の変遷について。 (例)UDトラックス/三菱ふそう 尿素SCR BLUETEC について。他 |
第11回 | 天然ガスの特性と天然ガスエンジンの基礎知識について。 天然ガス(在来型ガス)とシェールガス(非在来型ガス)の資源について。 (例)ヤンマー 中小型ガスエンジンの技術動向。 (例)三菱重工業・リーンバーン・ミラーサイクルガスエンジンについて。 (例)三菱重工業・世界トップクラスの総合効率66%を達成したMACH Ⅱ-SI ガスエンジンについて。 (例)三菱重工業・高効率大型ガスエンジンの最新技術 (MACH-30G) について。 (例)三菱重工業・MACH ガスエンジン発電設備によるエネルギー節減とCO2 排出低減について。他 |
第12回 | (例)三井造船・高効率大型リーンバンガスエンジンMD36Gの開発について。 (例)三井造船・高効率大型ガスエンジンを開発について。 (例)三井造船・高効率大型ガスエンジンを開発 (第2報)について。 (例)三井造船・大型ガスインジェクション機関―拡散燃焼方式を採用した高効率・高出力率ガス燃料機関―について。他 |
第13回 | (例)新潟原動機・マイクロパイロットガスエンジンの燃焼技術とその市場実績について。 (例)新潟原動機・コージェネレーションガスエンジンについて。 (例)新潟原動機・22AGガスエンジンによる汚泥発酵メタンガス発電機について。他 |
第14回 | 商用車用ディーゼル・ハイブリッドエンジンについて。 (例)日野自動車・ハイブリッドエンジン[非接触誘導給電装置付ハイブリッドバス]について。 (例)小型トラック用ハイブリッドシステムの開発 (Light-duty Hybrid (Dutro HV) )について。 舶用・発電用ディーゼルエンジンについて。 理解度の確認。 |
第15回 | 舶用・超大型ディーゼルエンジン,自動車用天然ガスエンジン,DMEエンジンについて。 その他の補足技術、まとめ、理解度の確認、レポート課題の説明。 |
その他
教科書 |
鈴木孝幸, ディーゼルエンジンの徹底的研究, グランプリ出版, 2012, 1 edition
鈴木孝幸 『自動車用ディーゼルエンジンの理論と実際』 山海堂 2007年 第1版
伊藤,塚原,室木,神本,清水,高野,小川,高木 『夢の将来エンジン』 自動車技術会 2009年 第1版
粟野誠一 『内燃機関工学』 山海堂 1989年 第改定版
鈴木 孝 『ディーゼルエンジンの挑戦』 三樹書房 2008年
鈴木 孝 『20世紀のエンジン史―スリーブバルブと航空ディーゼルの興亡』 三樹書房 2001年
鈴木 孝 『エンジンのロマン―技術への限りない憧憬と挑戦』 三樹書房 2012年
鈴木 孝 『日野自動車の100年―世界初の技術に挑戦しつづけるメーカー』 三樹書房 2010年
浅妻 金平 『ターボチャージャーの性能と設計』 グランプリ出版 2014年
粟野誠一 『熱力学』 山海堂 1974年 第改定版
古濱庄一 『内燃機関』 森北出版 1997年 第1版
畑村耕一、世良耕太 『自動車エンジンの技術』 ナツメ社 2016年 第1版
畑村耕一 『自動車エンジン技術のわかる本』 ナツメ社 2009年 第1版
人見光夫、御堀直嗣 『マツダ スカイアクティブエンジンの開発 (増補新訂版)』 三樹書房 2016年 第1版
授業に必要な重要部分を随時コピーして配布します。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
自動車技術会・日本機械学会 『エンジンテクノロジーレビューVol.1, No.1 (2009/4)~ 最新号 [Vol.2, No.6 (2011/2)]』 養賢堂 2009年 第1版
自動車技術会・日本機械学会 『エンジンテクノロジーVol.1, No.1 (1999)~ Vol.9, No.6 (2007)』 山海堂 2007年
廣安博之、寶諸幸男、大山宜茂 『大学講義シリーズ 23改定・内燃機関』 コロナ社 2002年 第改定版第版
鈴木孝幸 『ecoテクノロジーへの挑戦』 毎日新聞社 2008年 第1版
畑村耕一 『自動車用エンジン技術がわかる本』 ナツメ社 2009年 第2刷り版
宮下直也、黒木秀雄 『自動車用ディーゼルエンジン』 1995年 第2刷り版
小林英夫、大野陽男、湊 清之 『環境対応・進化する自動車技術』 日刊工業新聞 2008年
『モーターファン・イラストレーテッド Vol.1~Vol.64 (2012/2)~最新号』 三栄書房 2010年
M.J. Pilling 『Low-Temperature Combution and Autoignition』 Comprehensive Chemical Kinetics, Volume 35 ELSEVIER 1997年 第1版
吉田幸司、岸本 健、木村元昭、田中勝之、飯島晃良 『基礎から学ぶ熱力学』 オーム社 2016年 第1版
斎間 厚、江良嘉信、増田哲三、庄司秀夫 『基礎 熱力学』 産業図書 2002年 第1版
各テーマ毎に,国内,海外の技術論文と関係情報をコピーして資料として提供します。
1. 内燃機関シンポジウム講演論文集,第8回(1990年)~第21回(2010年)~最新号、自動車技術会・日本機械学会
2. 自動車技術会・春季、秋季大会・学術講演会前刷集 (1990年~2010年~最新版)
3. 自動車技術会論文集
4. 日本機械学会論文集
5. 日本燃焼学会誌
6. 日本エネルギー学会誌
7. SAE International Journal of Engines (SAE Transactions)
8. Honda Technical Review Vol.1 (1989年)~2010年~最新版
9. Toyota Technical Review Vol.50, No.1, No.2 (2000年)~最新版
10. 三菱自動車・テクニカルレビュー No.10 (1998年)~No.14 (2002年)~(2008年)~(2010年)~最新版
11. スバル技法 No.27 (2000年)~No.29 (2002年)~最新版
12. 各自動車メーカーの技報(日野自工、日産自動車、日産ディーゼル、いすゞ自動車、マツダ、他)~最新版
13. 最新内燃機関,朝倉書店,河野通方,角田敏一,氏家康成,1996年,第2刷
14. 基礎・熱力学,産業図書,斎間 厚,江良嘉信,増田哲三,庄司秀夫,2002年,第14刷
15.燃焼工学ハンドブック,丸善,日本機械学会,1995年
16.燃焼生成物の発生と制御技術,テクノシステム,1997年
17.DMEハンドブック(日本DMEフォーラム編、オーム社)
18.資源エネルギー年鑑(通産資料出版会)
19.Motor Fan illustrated (三栄書房)、Vol.1~Vol.51~最新号
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成績評価の方法 及び基準 |
期末課題及び授業中の小課題(あるいは中間課題)のレポートで総合的に評価する. |
質問への対応 | 授業前後,428B室(飯島研究室)と教室で,随時受付ます. |
研究室又は 連絡先 |
駿河台校舎・4号館428B室 (飯島研究室) E-mail: shoji@mech.cst.nihon-u.ac.jp Tel. 03-3259-0739 |
オフィスアワー |
水曜 駿河台 15:10 ~ 18:00 428B室(飯島研究室)
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学生への メッセージ |
熱機関の重要な役割と地球環境に優しい熱機関,代替燃料機関, エネルギー資源問題の最新技術を学んで貰いたい. |