2017年 大学院理工学研究科 シラバス - 電気工学専攻
設置情報
科目名 | 素材工学 | ||
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設置学科 | 電気工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 松田 健一 | 履修期 | 後期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜4 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | I24A |
クラス |
概要
学修到達目標 | 「素材工学」は、基礎物性から材料応用、またそれらの社会への貢献についても広く検討を行う、広範囲をカバーする学問分野である。本講義では、とくに超伝導材料を取り上げ、超伝導現象発見から現代の新材料の開発、将来の超伝導デバイス応用までを広く俯瞰する知識を得ることができる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
板書とプロジェクタによる講義と学生の発表を併用した輪講形式。 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
本講義に臨むにあたっては、講義計画に照らして十分な予習をし、また講義後に復習を行うこと。本講義は学部レベルの数学や物性関連の知識を前提として実施される。他の大学院科目「物性科学特論」、「機能性材料特論」と合わせて履修することが望ましい。 |
授業計画
第1回 | 超伝導現象が発見されて以来、100有余年が経過し、超伝導を利用したデバイスや配線などの応用も数多くみられるにいたっている。一回目には、発見から今日までの歴史的経緯を概観し、またいくつかの代表的な超伝導材料を紹介する。 |
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第2回 | 超伝導に関する実験的な事実として「電気抵抗ゼロ」、「完全反磁性」、「磁束の量子化」を学ぶ。また、超伝導状態が熱力学的な「相」であること、相を特徴づける秩序変数としての「巨視的波動関数」を学ぶ。 |
第3回 | 超伝導に関するGinzburg-Landau 理論を学ぶ(ただし微視的理論との関連はここでは範囲外)。一般的な二次相転移に関するGL理論の適用を概観したあと、「コヒーレンス長」、「磁場侵入長」などの特徴的な長さのスケールを学ぶ。また、それぞれの長さスケールの比から、超伝導材料は「第一種超伝導体」と「第二種超伝導体」とに分類されることを学ぶ。 |
第4回 | 超伝導の微視的理論(BCS理論)を学ぶ1回目。まず、準備として、超伝導現象が発現するおおまかなメカニズムを概観したあと、電子ー格子相互作用について学ぶ。 |
第5回 | 超伝導の微視的理論(BCS理論)を学ぶ2回目。電子―格子相互作用が働く場合に、クーパー対と呼ばれる電子対が形成される可能性と、そのエネルギーの程度を知る。 |
第6回 | 超伝導の微視的理論(BCS理論)を学ぶ3回目。クーパー対の凝縮状態としての、超伝導基底状態を学ぶ。エネルギースペクトルにギャップが形成されることを学ぶ。 |
第7回 | 超伝導線材料について学ぶ。超伝導線として使用される材料や、超伝導線の構造について理解する。また様々な新材料が提案されている現状についても紹介する。 |
第8回 | 超伝導体を用いたジョセフソン接合の基本特性を学ぶ。直流ジョセフソン効果、交流ジョセフソン効果について学ぶ。またその電気伝導特性のモデルとしてのRSJモデルを学ぶ。 |
第9回 | ジョセフソン接合を応用した「超伝導量子干渉計」について学ぶ。非常に小さな磁場を検出できることから、多くの応用が実現している現状を学ぶ。特にrf-SQUIDとdc-SQUIDを学ぶ。 |
第10回 | ジョセフソン接合を応用した最近の研究として、「超伝導量子ビット」の例を見る。また、「量子ビット」を理解するうえで重要な「二準位系」に関する解説を行う。 |
第11回 | 超伝導量子ビットの代表的な例を学ぶ。Phase Qubit, Flux Qubit, Charge Qubitについて、その実験例を学ぶ。また、その実験結果の意味するところとしての「巨視的量子コヒーレンス」の概念を解説する。 |
第12回 | 超伝導体やジョセフソン接合を応用したメタマテリアル応用について、研究の現状を学ぶ。 |
第13回 | いくつかの特殊な超伝導状態について学ぶ。「p波超伝導体」、「トポロジカル超伝導体」などの新しい概念や材料に関する知見を学ぶ。 |
第14回 | 学生による発表と質疑応答(1) |
第15回 | 学生による発表と質疑応答(2) |
その他
教科書 |
必要に応じて講義資料を配布する。
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
V.V. Schmidt, The Physics of Superconductors, Springer, 1997
武田暁 『場の理論』 裳華房 1991年
日本物理学会 『量子力学と新技術』 培風館 1987年
G. Wendin, and V.S. Shumeiko, Superconducting Quantum Circuits, Qubits, and Computing, arXive:condmat/05080729v1, 2005
I.V. Shadrivov, et al., Nonlinear, Tunable, and Active Metamaterials, Springer, 2015
A. M. Zagoskin, Quantum Engineering, Cambridge University Press, 2011
R.P. Feynman 『ファインマン物理学(Ⅴ)』 岩波書店 1986年
参考書[1]は、超伝導全般についての、実験研究者にも非常に明快な教科書。
参考書[2]は、場の理論に関する技術的なことを比較的に平易に解説している名著。超伝導についても解説している。
参考書[3]は、少し内容的には古いが、超伝導デバイスやその周辺技術に関する解説書。
参考書[4]は、超伝導量子ビットや量子コンピュータについてまとまっている良いレビュー。
参考書[5]の13章には、最近の超伝導量子メタマテリアルに関する解説がある。
参考書[6]は、この分野をリードする著者による超伝導応用に関する教科書。
参考書[7]の第五巻21章は、ファインマンによる直感的な超伝導に関する解説がある。特にジョセフソン接合に関する記述は初学者にとって理解しやすい。
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成績評価の方法 及び基準 |
課題レポートの内容:50%と口頭試問:50% |
質問への対応 | 随時質問可. |
研究室又は 連絡先 |
駿河台校舎4号館429A号室 Tel : 03-3259-0772 |
オフィスアワー |
火曜 駿河台 10:40 ~ 12:10
土曜 駿河台 10:40 ~ 12:10
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学生への メッセージ |
数式によって理解するよりも,問題に対するイメージをしっかり持つことを心がけでください. |