人類の夢・室温超伝導を実現する
電子工学科
超伝導はその名の通り、「超」伝導です。通常の金属に見られる電気抵抗が「ゼロ」になるのです。液体ヘリウム温度(マイナス269℃)における超伝導の発見からすでに1世紀以上たちました。最近では、電力送電、高精度核磁気共鳴(NMR)等が注目されていますが、特に超伝導の身近な応用例として、東京―名古屋間を1時間で結ぶ、夢の超伝導リニアモーターカーがあります。また、エレクトロニクス分野では、SQUIDと呼ばれる超高精度磁気測定器による脳磁計測あるいは超高速スーパーコンピュータへの応用にも期待がよせられています。
ただし、現状ではいずれも極低温冷却が必要であるため、身近なものとなっていません。しかしながら、冷やさなくても超伝導の世界が実現する「夢の室温超伝導体」が発見されれば、私たちの生活は劇的に変わります。我々はこの特殊な状態を室温で発現する物質を探索、設計・作製しようと考えています。
「室温超伝導」を示す構造体は、様々に考えられます。私たちが研究している特殊なナノ構造体の模式図を示します。非常に薄い金属層を炭素原子が2次元的に蜂の巣(ハニカム)構造状に配列したグラフェンで挟み込みます。2枚のグラフェン間にエキシトン(電子(マイナス電荷)と正孔(プラス電荷)の対)が発生し、金属層の電子がエキシトンに引き寄せられることによって、高温でも伝導電子が対となるクーパー対が生まれると期待しています。