日本大学理工学部

Step2

量子論と識別不可能な同種粒子

量子科学研究所

身の回りの物質を分割していくと,究極的には分子や原子,そしてそれらを構成している素粒子のようなミクロな粒子に辿り着きます.そのようなミクロな粒子たちの運動を記述するのが量子論(量子力学)と呼ばれる物理学の理論です.この量子論によると,同じ種類の粒子は全くの無個性で,原理的に区別をすることができません.この「同種粒子の識別不可能性」は非常に深い意味を持ち,例えば元素の周期表はこの識別不可能性(と角運動量の量子化と呼ばれるもの)の帰結として導き出すことができます.

この講義ではまず量子論の初歩について概観した後,同種粒子の識別不可能性に基づく粒子の分類およびその応用を紹介します.この分類は粒子の統計性による分類と呼ばれ,同種粒子を交換した時の振る舞い方で大別されます.代表的な粒子統計としてボーズ・アインシュタイン統計とフェルミ・ディラク統計というものがあるのですが,他にも沢山あって,実は粒子たちが住んでいる空間の幾何学(特に空間の次元)に応じて様々な粒子統計が存在します.逆に言うと,空間の幾何学をコントロールすることで様々な粒子統計を創出することができ,近年ではこの事を積極的に利用した量子コンピュータへの応用などが盛んに研究されています(下図参照).本講義では同種粒子の識別不可能性をテーマに,量子論の基礎から最先端の研究までをできるだけ平易に紹介したいと思います.

  
円周上に住む同種粒子AとBの交換の例.青色の曲線は粒子の軌跡を表します.粒子が円周上に制限されていると粒子交換の方法が多様になり,このことの帰結として様々な興味深い量子現象が創発します.

大谷 聡
大谷 聡
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