2019年 大学院理工学研究科 シラバス - 量子理工学専攻
設置情報
科目名 |
統計力学Ⅰ
臨界現象と繰り込み群
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設置学科 | 量子理工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 大谷 聡 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 木曜4 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | O44A |
クラス |
概要
学修到達目標 | 臨界現象と繰り込み群について学ぶ.はじめに平均場理論で臨界現象の普遍性を概観した後,Wilsonの繰り込み群を導入する.講義の後半ではFeynman図や演算子積展開を用いて臨界指数の摂動計算を行う.臨界現象の普遍性を繰り込み群の観点から理解することを目標とする.統計場の理論の手法の修得も目指す. |
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授業形態及び 授業方法 |
板書による講義形式 |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
熱力学・統計力学の基礎を修得していることが望ましい. |
授業計画
第1回 | 講義の概観 これから学ぶ臨界現象の普遍性および繰り込み群について概観する. |
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第2回 | 平均場理論1 Van der Waals状態方程式を用いて流体の臨界現象を調べる. |
第3回 | 平均場理論2 Ising模型の平均場近似を用いて強磁性体の臨界現象を調べる. |
第4回 | スケーリング仮説 一旦スケーリング則を認めると,臨界現象の普遍性が導かれることを学ぶ. |
第5回 | 調和振動子から場の理論へ 場の理論の簡単な導入.連成振動子の連続極限を取るとスカラー場の理論が得られる.これを学ぶ. |
第6回 | Ginzburg-Landau理論1 秩序変数と対称性に基づくGinzburg-Landauの現象論を導入する.これ以降,場の理論を用いる. |
第7回 | Ginzburg-Landau理論2 Ginzburgの判定基準と臨界次元について学ぶ. |
第8回 | Wilsonの繰り込み群1 繰り込み群変換を導入する.最も簡単なGauss模型を例に,繰り込み群変換を具体的に実行する. |
第9回 | Wilsonの繰り込み群2 繰り込み群変換の固定点が存在すると仮定して,固定点近傍の理論の振る舞いを分類する. |
第10回 | Wilsonの繰り込み群3 一旦固定点の存在を仮定すると,スケーリング則そして臨界現象の普遍性が導かれることを学ぶ. |
第11回 | Wickの定理とFeynman則 摂動論の導入.Gauss固定点周りでは,相関関数は全て2点関数の積の積分で与えられる事を学ぶ. |
第12回 | イプシロン展開1 ファイ4乗理論を題材に,Gauss固定点周りの摂動論からWilson-Fisher固定点での臨界指数を求める. |
第13回 | イプシロン展開2 引き続きファイ4乗理論の摂動計算を行う. |
第14回 | 演算子積展開1 1次の摂動論の範囲では,演算子積展開(OPE)の展開係数で繰り込み群のベータ関数は完全に決定される.これを示す. |
第15回 | 演算子積展開2 O(N)線型シグマ模型を題材に,Gauss固定点周りでのOPEからWilson-Fisher固定点での臨界指数を求める. |
その他
教科書 |
特に指定しない.
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
M. Kardar, Statistical Physics of Fields, Cambridge University Press, 2007
J. Cardy, Scaling and Renormalization in Statistical Physics, Cambridge University Press, 1996
R. Shankar, Quantum Field Theory and Condensed Matter: An Introduction, Cambridge University Press, 2017
K. G. Wilson, The renormalization group and critical phenomena, Rev. Mod. Phys. 55, 583-600, 1983
M. E. Fisher, Renormalization group theory: Its basis and formulation in statistical physics, Rev. Mod. Phys. 70, 653-681, 1998
1番上は臨界現象と繰り込み群の良い入門書.大体第5章までがこの講義に対応する.2番目はもう少し高級な内容を扱っており,第5章の摂動計算は全て演算子積展開を用いている.3番目は臨界現象の教科書ではないが,第11章から第14章にかけてWilsonの繰り込み群の良い解説がある.最後の2つはWilsonのノーベル賞受賞講演とWilsonの同僚で共同研究者のFisherの講義録.当時のエピソードも交えた良い解説記事.
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成績評価の方法 及び基準 |
レポート課題で成績評価を行う.試験は行わない.また,レポート課題は提出締め切り後に解答例を配布する. |
質問への対応 | 授業中・授業外に関わらずいつでも受け付ける.メールでも良い. |
研究室又は 連絡先 |
研究室: 駿河台校舎8号館2階823D Email: ohya@phys.cst.nihon-u.ac.jp Phone: 03-3259-0790 URL: http://aries.phys.cst.nihon-u.ac.jp/~ohya/ |
オフィスアワー |
水曜 駿河台 17:00 ~ 18:00 事前にメール等で連絡を入れるのが望ましい
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学生への メッセージ |
繰り込み群は統計物理だけでなく素粒子論でも登場する重要な概念です.この授業では2次相転移の臨界現象を題材に,1970年代前半にKenneth G. Wilsonによって創始された繰り込み群を出来るだけ分かり易く解説します.理論物理に興味のある全ての学生を歓迎します. |