2020年 理工学部 シラバス - 教養教育・外国語・保健体育・共通基礎
設置情報
科目名 | 応用心理学 | ||
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設置学科 | 一般教育 | 学年 | 2年 |
担当者 | 伊藤 令枝 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 水曜3 水曜4 |
校舎 | 船橋 | 時間割CD | S33I S34H |
クラス |
概要
学修到達目標 | 心理学は、人の心を読むテクニックやマインド・コントロールなどではなく、人間の「こころ」を客観的に把握しようとする科学である。 そこで本講義では、環境(対人関係や状況など、個人を取り巻くものすべて)と人間行動との関係性についての基礎的な理論を学習し、人間の多様性と複雑性を科学的に理解することを目指す。 さらに、こころにまつわる俗説を批判的に思考する視点を養う。 |
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授業形態及び 授業方法 |
講義形式とし、パワーポイントによる提示と板書を併用する。 毎回、授業内容に応じた資料(インデックス程度)を配布する。 |
履修条件 | 履修を希望する学生は、初回授業に必ず出席すること(履修者を制限する場合もあるため)。 「心理学の基礎」(新カリキュラムでは「心理学」)と「応用心理学」はそれぞれ独立した科目であり、習得する理論や現象、そしてそのためのアプローチ方法が完全に異なる。そのため、2年生以上は、両科目を履修して、心理学を多様な側面から学習することが望ましい。 サブネジャー・コースについては、履修要綱等を参照のこと。 |
授業計画
第1回 | 心理学へのアプローチ -個性(性格、知能、学力、価値観など)の理解と多様性、ヒューマンエラーの心理学 【事前学習】「心理学」「応用心理学」両科目のシラバスを確認し、心理学の学習の意義を熟考する。(2時間) 【事後学習】人間は多様であり、お互いに尊重し認め合う姿勢が重要であることを認識する。(2時間) |
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第2回 | 個性とパーソナリティ(1) -類型論による性格の理解、フロイトやユングによる性格理論、タイプA行動パタン 【事前学習】個人差を測定することと、個人差について価値判断を行うこととの違いを考える。(1時間) 【事後学習】さまざまな類型論を概観し、類型論が衰退した理由を考察する。(2時間) |
第3回 | 個性とパーソナリティ(2) -個人差に関する家系研究とその危険性、血液型性格診断の非科学性 【事前学習】バーナム効果を実験的に検証し、性格診断や占いを信じてしまう要因を探る。(2時間) 【事後学習】ホロコーストや日本の旧優生保護法について調べ、優生学の危険性を考察する。(3時間) |
第4回 | 個性とパーソナリティ(3) -特性論による性格理解、個人差研究の難しさ、相関関係と因果関係、複雑系としての人間 【事前学習】ポアンカレの三体問題とバタフライ効果について調べる。(1時間) 【事後学習】性格調査を実施し、自己の性格を分析的かつ客観的に把握する。(3時間) |
第5回 | 感情・情動(1) -主観的な「感情」の科学、自律神経系の活動の測定、緊張(覚醒)状態の自己コントロール、モーツァルト効果 【事前学習】緊張状態と安静状態での心拍数を測定し、自己の情動を意識化する。(2時間) 【事後学習】表情筋の動きを自覚し、感情のコントロールを試みる。(2時間) |
第6回 | 感情・情動(2) -情動の発生メカニズム、情動中枢としての大脳の働き、感情・情動の知覚への影響 【事前学習】脳の3層構造仮説について調べる。(2時間) 【事後学習】ジェームズ-ランゲ説を具体的に考察する。(2時間) |
第7回 | 個人と社会(1) -自己意識と自己モニタリング、社会の目を通した自己理解、自己意識のまちづくりへの応用、割れ窓理論 【事前学習】「プルーイット・アイゴー」と守ることのできる空間理論について調べる。(2時間) 【事後学習】透明性の錯覚について実験的に検討する。(2時間) |
第8回 | 個人と社会(2) -見知らぬ他者同士の儀礼的無関心、パーソナル・スペース、スポーツ競技におけるホーム・アドバンテージ 【事前学習】ホーム・アドバンテージとその要因について調べる。(2時間) 【事後学習】自分の空間を保とうとする行動を記録して、パーソナル・スペースについて検証する。(2時間) |
第9回 | 個人と社会(3) -街中での援助行動とその阻害要因、傍観者効果、社会的意思決定の複雑性 【事前学習】電車内での援助行動を観察する。(3時間) 【事後学習】傍観者効果の生じる要因を具体的に考察し、状況が個人の行動を規定することを理解する。(1時間) |
第10回 | 個人と社会(4) -社会的促進と社会的抑制及びそのメカニズム、社会的手抜き、ホーソン実験と人間関係論 【事前学習】個人の課題遂行に対する、他者の存在の直接的な影響について実験的に検討する。(2時間) 【事後学習】社会的相互作用について、日常生活の中から具体的に発見する。(2時間) |
第11回 | 個人と社会(5) -集団圧力と同調、権威への服従、集団愚考、航空機事故にひそむ人的要因、アサーションの重要性 【事前学習】ハンナ・アーレントの提起した「悪の陳腐さ」について調べる。(2時間) 【事後学習】より平和的な社会の構築のために、個人個人が自覚すべきことを考察する。(2時間) |
第12回 | 災害と人間行動 -群集心理と没個性化、災害ユートピアと災害ディストピア、緊急事態での避難行動と「我先に」的行動 【事前学習】デモや仮装イベントでの暴徒化、ネット社会での炎上などの事例を収集し、その発生要因を探る。(2時間) 【事後学習】災害遭遇場面で、パニック的行動を抑制して確実かつ効率的に避難する方法を検討する。(2時間) |
第13回 | 情報と人間行動 -流言の発生と伝播、災害時の流言、水害事例にみる避難行動を遅くする心理 【事前学習】ポール・マッカートニー流言について調べる。(2時間) 【事後学習】災害時流言がパニックに直結しにくい理由を考察する。(2時間) |
第14回 | 集団催眠現象と集団パニック -催眠商法、トイレットペーパー買い占め騒動、火星人襲来パニック、関東大震災での差別的流言の発生と影響 【事前学習】豊川信用金庫取り付け騒ぎについて調べる。(2時間) 【事後学習】高度に発達した情報社会での情報リテラシーについて考察する。(2時間) |
第15回 | 心理学の歴史 -科学としての心理学、心理学の独自性、日本における心理学の受容 【事前学習】諸学問領域を連結し、「扇の要」的な役割を果たすとされる心理学の存在意義を考える。(1時間) 【事後学習】全15回の授業を通して学習した内容を総括し、人間及び自己に関する考察を深化させる。(3時間) |
その他
教科書 |
鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃(編) 『心理学』 東京大学出版会 2015年 第5版
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参考書 |
田之内厚三(編) 『ガイド 社会心理学』 北樹出版 2006年
岡村一成(監修)、藤田主一(編集) 『ゼロから学ぶ経営心理学』 学文社 2012年
内藤佳津雄・北村世都・鏡直子(編) 『発達と学習』 Next教科書シリーズ 弘文堂 2020年 第2版
藤田主一・齋藤雅英・宇部弘子(編) 『新 発達と教育の心理学』 福村出版 2013年
V.E.フランクル(著)、霜山徳爾(訳) 『夜と霧-ドイツ強制収容所の体験記録』 みすず書房 1985年
岡本裕一朗(著) 『思考実験-世界と哲学をつなぐ75問』 ちくま新書 筑摩書房 2013年
その他、授業中に適宜紹介する。
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成績評価の方法 及び基準 |
パーソナリティ調査レポート(約20%)、授業内課題や小テスト等の平常点(約30%)、定期試験(約50%)による総合評価とする。 調査レポートや授業内課題等は、提出された後に返却しないが、具体的な実施方法や評価基準を、授業内で伝達する。 |
質問への対応 | 授業前後に受け付ける。 |
研究室又は 連絡先 |
火曜日・水曜日の5限に船橋校舎14号館講師室に在室している。 メールや電話等による問い合わせは一切不可とする。 |
オフィスアワー | |
学生への メッセージ |
人間の心や行動に興味を持ち、積極的に授業に臨んでほしい。 授業内容をノートにとったり、与えられた課題を指示通りにこなしたりするだけでは、真の「学び」にもアクティブな学習にもならない。心理学的研究によって明らかにされた諸理論・現象を追試・追体験しながら具体的に把握することを心がけ、自分自身について、そして、人間について理解を深めてほしい。 なお、授業に支障をきたすおそれがあるため、授業内容の写真撮影や録音録画等を禁止する。 |