2020年 大学院理工学研究科 シラバス - 機械工学専攻
設置情報
科目名 | 熱機関特論Ⅰ | ||
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設置学科 | 機械工学専攻 | 学年 | 1年 |
担当者 | 飯島 晃良 | 履修期 | 前期 |
単位 | 2 | 曜日時限 | 火曜4 |
校舎 | 駿河台 | 時間割CD | F24A |
クラス | |||
その他 | 実務経験のある教員による授業科目 |
概要
学修到達目標 | 熱機関は自動車、二輪車、建設機械、船舶、発電機、農業・工業用機械として交通機関、物流、市民生活に重要な役割を果たしている。しかし、地球温暖化、大気汚染、エネルギーセキュリティ等の問題から、熱機関の更なる高熱効率化技術、排気のクリーン化技術の向上が求められている。熱機関特論では、熱機関の原理と理論を知った上で、最新の熱機関技術との対応を図ることで、熱機関の継続的な性能向上の理論と実際を考える。本講義は、将来熱機関の分野に進む人だけではなく、工学の広い分野に進む人のためにも、社会・経済等とも大きなかかわりを持っている熱機関の最新技術、燃焼、排気対策技術、エネルギー問題を理解するうえで有用になると思われる。 熱機関特論Ⅰ(前期)では、熱機関の基礎理論を理解した上で、応用技術例として主にガソリンエンジンを中心とした最新技術を織り交ぜ、理論と実際、将来展望を考える。なお、ガソリンエンジンの技術には、電動化技術(ハイブリッド車、レンジエクステンダーエンジン、補器類の電動化)も含め、電動化によって熱機関の更なる高性能化が図れることを説明する。 【学習到達目標】 ①内燃機関の基本的な性能試験データをもとに、その性能を解析し、特徴を説明できる。 ②内燃機関の燃焼と排気の基礎理論に基づき、ガソリンエンジンの燃焼機構、それらが熱効率と排出ガス特性に与える影響を説明できる。 ③いくつかの最新のエンジンの特徴やコンセプトを知った上で、それらのコンセプトがなぜ有効なのかを、②の理解に基づいて科学・工学的に説明し、更なる課題などを提案できる。 ③社会・環境問題と熱機関との関係を分析し、将来動力源の在り方、熱機関に対する今後の研究開発課題を提案できる。 |
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授業形態及び 授業方法 |
熱機関理論、環境・社会・経済問題、熱機関応用技術など、幅広い内容を含むため、内容に応じて適宜以下の方法を用いて授業を行う。 ・ 板書 ・ スライド ・ 最新技術に関連する論文等を用いた講義 ・必要に応じてテーマの小課題(あるいは中間課題)を出して、レポート提出をして貰う。 講義にあたって,実務経験を持つ担当教員が,実社会での実例など,この科目で学ぶ内容がどのように応用させるのかを説明する. |
準備学習(予習・ 復習等)の内容・ 受講のための 予備知識 |
シラバス(授業計画)に示す内容について、自分なりに事前に調査し、用語の理解や概要のイメージしておくことが望ましい。講義の後には、その内容を振り返り、今後の課題や展望など、自分の意見を整理しておくことが望ましい。 |
授業計画
第1回 | 熱機関が人間生活にもたらす役割と、社会・環境問題との関わり 【事前学習】熱機関の分類と種類を整理する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、現在の熱機関の課題と展望を考える。(120分) |
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第2回 | 世界のエネルギー事情、地球温暖化とCO2削減、大気環境問題について 【事前学習】熱機関が関連する環境問題を調べ、今後の課題を整理する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、熱機関の環境対応に向けた課題と展望を考える。(120分) |
第3回 | エンジンの熱力学 熱機関を理解するための熱力学を概説する ・熱力学第一法則、理想気体の状態変化、熱力学第二法則、カルノーサイクルと熱効率 【事前学習】工業熱力学の理想気体の状態変化と熱力学諸法則の関係を事前学習する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、熱機関の熱力学的扱いについて理解を深める。(120分) |
第4回 | エンジンサイクル論 熱機関の熱力学的サイクルを概観し、熱機関の熱効率向上原理を学ぶ 【応用技術】 高圧縮比エンジン、アトキンソンサイクル、ミラーサイクルなどを紹介する 【事前学習】工業熱力学の熱サイクルと熱力学諸法則の関係を事前学習する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、熱機関のサイクル論と実際の熱機関との関連を理解する。(120分) |
第5回 | エンジンの性能解析 エンジン性能を測定、解析する手法を学ぶ 【応用技術】各種実エンジンの性能解析 【事前学習】エンジンの性能にはどのようなものがあるのか、それらはどのような性能を意味するものなのかについて、事前学習する。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、実際のエンジンの動力等の性能から各種性能を算出できるようにする。(120分) |
第6回 | エンジンの熱効率向上(1) 熱効率を支配する因子、冷却損失、時間損失、ポンピング損失、ブローダウン損失 【事前学習】熱効率を支配する因子の用語の意味を調べて把握しておく。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、各種損失を減らす方法を考察する。(120分) |
第7回 | エンジンの熱効率向上(2) 希薄燃焼、異常燃焼抑制、スロットルレス化 【事前学習】熱効率を支配する因子の用語の意味を調べて把握しておく。(120分) 【事後学習】事前学習内容と講義の内容から、各種損失を減らす方法を考察する。(120分) |
第8回 | エンジンの燃焼と高効率ガソリンエンジン 点火過程、火炎伝播燃焼、オクタン価と自着火 【応用技術】SKYACTIV-Gエンジン他、高性能ガソリンエンジン技術の実例 【事前学習】第7回までの内容に基づき、ガソリンエンジンの高効率化手法を考察する。(120分) 【事後学習】各種論文や技報などから、高効率ガソリンエンジンの実例を調査して理論との対応理解を行う。(120分) |
第9回 | ガソリンエンジンの異常燃焼と対策技術 自着火、ノッキング、プレイグニッション、低温酸化反応と高温酸化反応 【事前学習】ガソリンエンジンの異常燃焼の種類を調べておく。(120分) 【事後学習】ノッキング、プレイグニッション等の異常燃焼の分類を整理し、異常燃焼の種類に応じた対策法を考察する。(120分) |
第10回 | 排ガス規制と有害排出ガスの生成メカニズム 【事前学習】乗用車、商用車、二輪車、汎用エンジンなどの排ガス規制の概要を調べておく。(120分) 【事後学習】排ガス規制の違いやエンジンの目的に応じて、どのような対応が必要になるのかを説明できるようにする。(120分) |
第11回 | 排気のクリーン化技術 燃焼によるクリーン化、排気後処理技術 【事前学習】排気のクリーン化技術の概要を調べる。(120分) 【事後学習】ガソリンエンジンの排気後処理技術を振り返り、将来に向けた課題を考える。(120分) |
第12回 | 高出力エンジンの原理と技術 スポーツカー、レース用エンジンの技術 【事前学習】エンジンの高出力化手法を事前学習する。(120分) 【事後学習】高出力エンジンの原理と具体的な技術を振り返る。(120分) |
第13回 | エンジンの可変技術 可変動弁技術、可変吸気システム、筒内直噴技術、排ガス再循環、可変圧縮比 【事前学習】エンジンに用いられる種々の可変技術を調べる。(120分) 【事後学習】可変動弁、可変吸気、筒内直噴、EGR、可変圧縮比によってもたらされるメリットを、理論的に説明できるように紐づけする。(120分) |
第14回 | 電動化技術 ハイブリッドシステム、補器類の電動化がもたらす効果 【事前学習】ハイブリッドシステムの種類を調べる。(120分) 【事後学習】ハイブリッドシステムでなぜ燃費がよくなるのか、どのような領域で燃費が良くなるのか、かえって燃費が悪くなる条件について考察する。(120分) |
第15回 | 熱機関技術まとめと将来展望 【事前学習】これまで学んだ内容をもとに、熱機関の将来展望を考える。(120分) 【事後学習】これまで学んだ内容をもとに、熱機関特論での学修内容を振り返る。(120分) |
その他
教科書 |
飯島晃良 『基礎から学ぶ高効率エンジンの理論と実際』 グランプリ出版 2018年
村中重夫 『新訂・自動車用ガソリンエンジン -研究開発技術者の基礎と実際ー』 養賢堂 2011年 第1版
畑村耕一、世良耕太 『自動車エンジンの技術』 ナツメ社 2016年 第1版
新岡 嵩 『燃焼現象の基礎』 オーム社 2002年 第1版
石川義和 『自動車用ガソリンエンンジン設計の要諦』 グランプリ出版 2015年 第1版
自動車技術会 『自動車技術ハンドブック 基礎・理論編』 自動車技術会 2015年 第1版
粟野誠一 『内燃機関工学』 山海堂 1989年 第改定版
古濱庄一 『内燃機関』 森北出版 1997年 第1版
人見光夫、御堀直嗣 『マツダ スカイアクティブエンジンの開発 (増補新訂版)』 三樹書房 2016年 第1版
浅妻金平 『ターボチャージャの性能と設計』 グランプリ出版 2006年 第1版
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参考資料コメント 及び 資料(技術論文等) |
廣安博之、寶諸幸男、大山宜茂 『大学講義シリーズ 23改定・内燃機関』 コロナ社 2002年 第改定版1版
吉田幸司、岸本 健、木村元昭、田中勝之、飯島晃良 『基礎から学ぶ熱力学』 オーム社 2016年 第1版
斎間 厚、江良嘉信、増田哲三、庄司秀夫 『基礎 熱力学』 産業図書 2002年 第1版
金子靖雄 『内燃機関基礎工学』 山海堂 1997年 第1版
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成績評価の方法 及び基準 |
講義中の小課題(あるいは中間課題)、最終レポート課題で総合的に評価する。 |
質問への対応 | 随時受け付けます。 |
研究室又は 連絡先 |
駿河台校舎・タワースコラS1704室 E-mail: iijima@mech.cst.nihon-u.ac.jp, Tel. 03-3259-0739 |
オフィスアワー |
火曜 駿河台 12:10 ~ 13:20 タワースコラS1704室
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学生への メッセージ |
熱機関の基礎理論に基づき、熱機関の社会的役割と地球環境問題への対応技術を学んで貰いたい。 |