美しい橋はどのように生まれるか

担当講師:関 文夫

見知らぬ土地に行きたいという人類の望みを叶えるために「橋」が造られる。
より遠くへ,より長く,人類の欲望は,果てしなく,「橋」は,その時代の技術力を風刺した傑作品ともいえます。
「橋」は,架橋されるとその地域に根差し,地域の風景として存在感までも現れてくるので不思議な構造物です。

その魅力のひとつに,計算されつくした構造から生まれるカタチがあり,空間という機能の洗練から生まれるものがあります。
ここでは,世界の名橋を基に,その美しさの根幹となる構造,カタチ,空間という観点から説明し,風景の中の橋がもつ魅力を解説します。

講演者も橋の設計を行い,国内外にデザインした橋があります。橋のデザインの裏側や橋のデザインを通じて出会う人間関係,橋のデザインから生まれる地域愛など,内面に秘められた様々な話を聞くと,橋が身近に感じられてきます。

そして,どんな橋にも,架橋されると,人々の思い出,記憶が残ります。
映画のシーンのように,橋を取巻く環境には,様々なドラマが展開され,地域の一員になっていることが多いです。どんな不恰好な橋でも,地域の一員になれるそんな存在の構造物が橋です。

これを機会に,身近な橋について考えてみませんか。

雷電廿六木橋
雷電廿六木橋(埼玉県)
[講演者設計]
1998年グッドデザイン賞,2011年土木学会デザイン賞,最優秀賞他多数の賞受賞。
ばんどうドイツ橋
ばんどうドイツ橋(徳島県)
[講演者設計]
2002年グッドデザイン賞金賞,2003年土木学会デザイン賞,優秀賞他多数の賞受賞。
MUSEゲートブリッジ
MUSEゲートブリッジ(大阪府高槻市)
その他参考写真
酒田みらい橋(山形県酒田市)
酒田みらい橋(山形県酒田市)
その他参考写真

生活の舞台を支える土木の力

担当講師:関 文夫

日常生活の中で,蛇口をひねると水が出て,汚水が排水孔へ飲み込まれていく,ガス,電気が何も支障なく使え,予定通りに電車もやってくる。
実は,これら皆さんの生活する舞台を,優しく支えているのは,「土木の力」なのです。諸外国で,こんなに安定している国は,他にありません。

土木という分野は,実に広いのです。上下水道,電気,ガス,通信といったインフラ系,原子力,火力,水力,風力,太陽光といったエネルギー系,国土の軸を担う高速道路,鉄道,新交通,空港,港湾,漁港といった交通系,地震,津波,台風,竜巻,ゲリラ豪雨,液状化,土石流といった自然災害から人命と財産を守る防災系,森林,河川,河口,海洋といった生物多様性を保全する環境生態系,新しいまちづくり,都市の再開発,まちの活性化といった都市開発系,遊園地,スポーツ施設,リゾート施設といったレジャー系とその土木のフィールドはとても広く,内容も高度なのです。

人を支える,日本を支える,地球を支える,そんなダイナミックな土木の仕事を理解してみませんか。
計画,設計,施工,維持管理,マネジメントと働いている人も公務員から民間,働いている場所も国内から海外まで幅広く取組んでいます。

土木の仕事は,市民の生活と自然環境を守り,豊かな国づくりを行うことです。

朝、歯磨きする水はどこからきて、口を漱いだ水はどこへ行くのだろうか。
朝,歯磨きする水はどこからきて,口を漱いだ水はどこへ行くのだろうか。
都市という生活の舞台を支えているのは、土木の力
都市という生活の舞台を支えているのは,土木の力

水の流れをデザインする

担当講師:高橋 正行

旧来から自然と人工物との調和を考えた景観(landscape)が様々な所で見られる。
例えば,自然に形成された滝と植樹との調和などが挙げられる。人が好む景観には静止したものばかりでなく動きのあるものと調和のとれた景観も数多くある。「ながれ」を意識して表現しなおすと,「ながれ」の有する「動」が周囲の「静」なる対照物と調和して美しい景観を創り出すものと考えられる。

河川に設置された工作物としての連続した階段状水路を流れる様相は自然の樹木と調和し,景観美と評価されている(写真1)。
アメニティ空間の創造のために,人工施設に造られた噴水の流れや階段を利用した小さな滝などでも景観美をつくりだし,それらの流れは歴史的にも古くから利用されている。
上述の落差を伴う「ながれ」は局所的に流れが急変する流れ,いわゆる局所流である。局所流は人が認識しやすい流れである。特に気泡が混入した流れは人の目を引き付ける興味深い流れである。すなわち,局所流は流れの景観として利用しやすい流れである。

従来,景観に生かされた気泡混入流れの創作は職人技に限りなく近く,経験的なセンスで設計されている。
再現性のある気泡混入した流れの景観設計を可能にするためには,流れの水理学的特性の解明をすることが重要である。
ここでは,局所流における「流水の美」を景観に利用するという観点から流れの水理学的特性を紹介する。

牛伏川フランス式流路工
長野県松本市にある牛伏川フランス式流路工

宇宙から見た環境と災害

担当講師:羽柴 秀樹

人工衛星を用いて地球を観測する試みは今から約40 年前から始まりました。
現在では多くの国がさまざまな特徴をもったセンサーを開発し多数の衛星を打ち上げ,観測や調査活動を行っています。このような衛星観測によって得られた画像情報は自然環境の評価・保全などに役立てられたり,また社会基盤の計画や整備のための情報として利用されています。

人工衛星から地球の表面を観測すると,普段の生活での人間の視点からでは把握することができない,非常に大きなスケールの様子を観察することができます。
ここでは,人工衛星から観測された自然環境や大規模自然災害の様子や,都市環境の様子を紹介します。
自然環境では,自然の森林の状態や自然に対する人間の開発行為がどのように影響を及ぼしているかなどを画像から観察します。
また,都市環境では,過去から現在まで都市がどのように広がってきているかを衛星画像から追跡調査し,その変化の特徴を読み取ります。
加えて,地震や津波といった大規模な自然災害を衛星観測画像から調査し,被害の状況を評価します。

衛星観測によるさまざまな調査と評価
写真左上:地表の調査と評価
写真右中:年の地表面
温度分布の調査と評価
写真左下:都市域の環境調査
衛星観測によるさまざまな調査と評価

河川環境の改善ができる地球の医者を目指して

担当講師:安田 陽一

日本に限らず世界各国で河川に生息する水生生物の生息環境は,人の生活環境を守るための利水・治水の観点から整備された河川横断構造物によって大きく影響されています。
その結果,水生生物の移動・遡上・降河が困難な箇所が多くあります。これからの時代は,生態系保全につながる環境改善の技術を具体的に見出し,実践的に実施していくことが土木工学の役割の一つとして認識しています。

私の専門分野は環境水理学であり,大津教授と共に局所的に複雑な流れ(局所流)の特性を解明し,その研究成果が国際的に認められています。
2000年以降では,河川横断構造物による水生生物の遡上・降河・移動の妨げを解消するための魚道の研究に着手しました。局所流の研究成果を魚道の研究に反映させ,研究成果に基づき160箇所以上の提案魚道が整備され,構造物本来の機能を損なうことなく,多様な水生生物の遡上・降河・移動が可能な環境にすることに成功しました。

写真右上:遊泳魚ばかりでなく底生魚・甲殻類・貝類の遡上・降河を可能にし,景観に配慮した河川横断構造物の改良を提案しました

写真右下:都市河川の洪水調節機能を損なうことなく,多様な水生生物に配慮した魚道設備を提案しました

景観に配慮した河川横断構造物の改良
遊泳魚ばかりでなく底生魚・甲殻類・貝類の遡上・降河を可能にし,景観に配慮した河川横断構造物の改良を提案しました
多様な水生生物に配慮した魚道設備
都市河川の洪水調節機能を損なうことなく,多様な水生生物に配慮した魚道設備を提案しました

雪って楽しい?怖いもの?

担当講師:小田 憲一

雪が降るとなぜだかワクワクした気持ちになります。雪だるま,雪合戦,ウィンタースポーツ,きれいな雪景色,私たちの生活に癒しを与えてくれるイメージが強い雪ですが,楽しいことばかりを我々に与えてくれるわけではありません。

都心部に雪が降ると,電車が停まったり,車が動けなくなったり,歩行者が転倒してけがをしたり,大混乱を引き起こします。
毎年雪が降る地域も例外ではありません。積雪が1mとなる地域や,3m,4mとより沢山の雪が積もる地域では,除雪作業が必ず必要であり,とても大変な労働力が必要になります。
一方で,降り積もった雪が融けるとき,山間部では雪崩が発生する危険性が高まり,都心部では道路環境が悪くなることで車や人の交通障害を引き起こすことがあります。

これらの障害が発生しないように,人々の生活を安全・快適にするために,ドボクの力が沢山利用されています。

本講義では,雪が降ると実際にどのような障害が発生するのか,ドボクはどのような力を発揮してその障害から私たちの生活を守っているかを紹介します。
加えて,私の研究グループが現在行っている雪に関する最新の研究を紹介します。

フェンスと着雪に関する野外観測の状況
フェンスと着雪に関する野外観測の状況
調査している風景
雪崩の発生に樹木がどれだけ影響しているかを調査している風景

ピサの斜塔の秘密 ~構造物を支える地盤~

担当講師:鎌尾 彰司

皆さん!ピサの斜塔をご存じですか?

1173年に建設が開始され,途中2度にわたる建設中断がありましたが,1370年に完成いたしました。
建設から既に800年以上も経過しておりますが,いまだに塔の沈下が進み,その傾斜角度も年々大きくなっております。
構造物下の地盤の不等沈下が原因であると言われており,このままでは倒壊してしまう恐れもあります。

本講義では,ピサの斜塔が倒壊するのを防ぎ,傾きを維持するために施されている様々な工夫(技術)について,地盤工学分野の観点からわかりやすくお話しいたします。
また,構造物を支える地盤に焦点を当て,国内外で発生しているいろいろな地盤沈下現象の紹介,地震時に発生する液状化被害とその対策などを紹介いたします。

ピサの斜塔
ピサの斜塔
ピサの斜塔
ピサの斜塔

あなたの足元の地盤は大丈夫?!~液状化の恐怖~

担当講師:鎌尾 彰司

地震によって地盤に液状化現象が発生します。
東日本大震災では関東地区でも液状化による構造物の傾斜やマンホール等の隆起などが数多くの地盤災害が発生しました。また,その後に各地で発生した地震において,やはり液状化現象が多発しております。
なぜ構造物が建っている地盤が地震が来ると液体状になってしまうのか?どうしたら液状化の被害を防止できるのか?などを液状化のメカニズムを科学的に解き明かします。
この講義を聴けば皆さんも「液状化博士!」間違いなし。

また,最近の地盤災害は自然災害だけではありません。
ある日突然,自宅の前の道路が陥没してしまうような被害事例もトンネル工事などの建設工事が原因で発生しております。あなたの家の下の地盤を守るのはあなたです!

SDGs:目標11(持続可能なまちづくり)

液状化による被害(浦安)
液状化による被害(浦安)
液状化による被害(横浜)
液状化による被害(横浜)
道路の陥没(調布・NEXCO東日本 報告書より)
道路の陥没(調布・NEXCO東日本 報告書より)

GISによる社会課題や被災概要の可視化

担当講師:園部 雅史

自動車や建築構造物など私たちの暮らしに必要な物を製造する材料として重要なものに鉄鋼があります。
鉄鋼を作る段階で出る産業廃棄物は「鉄鋼スラグ」と呼ばれ,その多くが,まだ有効利用されずに放置されています。
鉄鋼スラグには「高炉スラグ」と「転炉スラグ」の二種類があります。高炉スラグは国内で約2300 万t発生しセメント材料等として有効利用されています。
しかし,転炉スラグは約1000 万t発生しますが,含有する遊離石灰の水和により膨張崩壊するため埋立用材に使用される以外,有効利用の方法が確立されていません。

一方,コンクリートの材料であるセメントは石灰石を原料として作られるもので,製造時に原料を約1450℃で焼く必要があり,その際,多量の二酸化炭素を排出することから地球温暖化対策が必要となっています。
そのためセメントを減らしてセメントの代替となる材料の活用が求められています。

転炉スラグが高炉スラグと同様にセメントの代替材料として使えるようになれば,リサイクル面で有効利用が可能となるだけでなく,セメントの生産量を減らすことに役立つことになります。
以上のことから,この授業を通じてリサイクルと環境問題は別々のものではなく,つながっているものだということを理解して下さい。

図1:GISのイメージ図
図1:GISのイメージ図
図2:衛星解析による建物被害の推計
図2:衛星解析による建物被害の推計

風による揺れをエネルギーに変えよう

担当講師:長谷部 寛

風が吹くと構造物は傾いたり変形したりするだけでなく,しばしば振動(揺れ)が生じます。
特に長い橋や高いビル・タワーなどは揺れやすく,過去には風によって生じた揺れが原因で壊れてしまった長い橋もあります。
構造物をつくる上で,風による揺れは避けるべきポイントの一つです。

一方で,構造物をつくる上で避けるべき揺れも,見方を変えると貴重なエネルギー源です。
風によるエネルギー(風力エネルギー)と聞くと,真っ先に大型のプロペラ式の風車による風力発電をイメージされると思います。
もちろん,大型風車による風力発電は多量なエネルギーを生み出すことから,持続可能な社会を形成するための重要な構成要素の一つです。
ただ,風力発電は風車以外にも様々なタイプの発電方式があります。先ほどの風による揺れを利用する方法もその一つです。

風に吹かれた送電線が上下に激しく揺れる揺れをギャロッピングと言います。
風に吹かれた旗がバタバタはためく揺れをフラッターと言います。
これらは激しい揺れを伴いますが,この激しい揺れを逆手にとって,揺れから風のエネルギーを回収する研究が進められています。

本講義では,風が吹くとなぜ物体は揺れるのか,プロペラ式の風力発電以外の風力発電にどのようなタイプがあるのかを紹介します。
そして,現在私の研究グループが取り組んでいる風による揺れからエネルギーを回収する試みも紹介します。
2030年には,本講義で学ぶ様々なタイプの風力発電が皆さんの周りで見られるかもしれません。

図1 風力エネルギー回収を目的とした複数円柱のギャロッピング振動実験
図1 風力エネルギー回収を目的とした複数円柱のギャロッピング振動実験
図2 複数円柱まわりの風のコンピューターシミュレーション
図2 複数円柱まわりの風のコンピューターシミュレーション