常識を超えている!電子デバイスの世界を覗いてみよう

担当講師:松田 健一

皆さんが普段使用している電気・電子機器の大半は,電子が持つ電荷を利用しています。
これはエレクトロニクスと呼ばれ,現代社会では必要不可欠な技術になっています。一方で,エレクトロニクス製品は,消費電力が肥大化しているなどの問題点も指摘されるようになり,新しいデバイス技術の誕生が待ち望まれています。

電子には電荷のほかに,電子自身の自転に対応する自由度「スピン」というものが備わっています。
「スピン」はそれ自体,小さな磁石とみなすことができ,最近では,このスピンの性質を積極的に活用したエレクトロニクス,すなわちスピントロニクスが,注目されるようになってきています。
本講義では,このスピンを利用したデバイスとしてどのようなものが研究されているのか,またそれに関連して新しく発見されつつある様々な興味深い現象をお話ししたいと思います。

既にスピントロニクス技術が活用されているものの例として,パソコンなどに搭載されているハードディスクがあります。
ハードディスクには,様々な情報が磁気的に書き込まれていますが,この情報を読み書きするのには,図に示すような強磁性トンネル接合デバイスというものが使われています。「スピン」は小さな磁石のようなもので,そのスピンの向きが,ディスク上の磁気情報と関連して変化することを敏感に察知するデバイスです。このデバイスの出現のおかげで,ハードディスクの容量は,この20年余りの間に約100万倍になり,また著しく高速になったのです。

講義では,他にも様々な応用についてお話しする予定です。

南極・昭和基地における再生可能エネルギーの活用

担当講師:西川 省吾

大量のエネルギーが消費された20世紀に対し,21世紀は「環境の世紀」とも言われています。
また,世界的に二酸化炭素の削減率を取り決めた「京都議定書」が正式にスタートし,明るい将来を作るためには世界中の人々が環境に対する強い意識を持ち,地球温暖化防止のために努力する必要があります。地球温暖化防止の一つとして,太陽エネルギーを利用して電気を作る「太陽光発電」は,有望な対策技術の一つといえます。太陽電池は少し前まではたいへん高価なため,一般の人はほとんど見ることができませんでしたが,最近はテレビCMにも登場し,屋根に太陽電池を載せている住宅が少しずつ見られるようになっており,ずいぶん身近な存在になってきています。

しかしながら,これだけ普及してきたにも係らず,意外と太陽光発電の実態が知られていないようです。
また,太陽光発電は今後もまだまだ進歩し続けていく可能性を充分に秘めており,夢のある技術といえます。

ここでは,太陽光発電の基本的な内容から,一般にはあまり知られていない太陽光発電独自の技術,未来の太陽光発電について分かりやすくお話しします。

(独)NEDO技術開発機構委託研究「集中連系太陽光発電システム実証研究」

超音波で金属と金属を接合する

担当講師:淺見 拓哉

超音波といえば,モスキート音に代表されるような人の耳に聞こえない音のことです。
この音は,人の耳に聞こえないので高出力で用いても騒音が発生しません。その超音波を高出力で用いた技術の1つとして金属と金属を接合するものがあります。この技術は,空気を伝搬する超音波を利用するのではなく,金属を伝搬する超音波を利用したものです。現在,超音波による金属の接合は,大きなものでは自動車,小さなものではCPUの製造に利用される技術です。

この講義では,まず超音波の特徴,発生方法から超音波を用いた金属の接合について簡単に説明します。

音が目の前に現れる–情報技術と融合したオーディオシステム–

担当講師:大隅 歩

音楽を聴くときに用いるスピーカですが,このスピーカには実に多くの種類があります。
このスピーカの中には超指向性スピーカと呼ばれるものがあり,近年の情報技術と融合して様々な場面でオーディオシステムとして使用されるようになりました。超指向性スピーカとは,非常に狭い範囲のみに音が聞こえるように開発されたスピーカで,超音波を使用しています。このスピーカを用いると,騒音問題となっている夜遅くの駅構内アナウンスを乗車する人のみに聞かせることが出来たり,美術館のような静けさが求められる場所でも隣の人に聞こえないように展示品のアナウンスを聞くことが出来たりします。
実は,すでに皆さんも体験したことがあるのではないでしょうか。
また,聴くことを目的としない面白い利用方法もあります。(それは講義を楽しみにしてください)

この講義では,そのような超指向性スピーカの原理や構造,応用技術などを紹介していきます。

●一般的なスピーカの聞こえ方
●一般的なスピーカの聞こえ方
●超指向性スピーカの聞こえ方
●超指向性スピーカの聞こえ方
●超指向性スピーカの外観
●超指向性スピーカの外観

シミュレーションでコンピューターを使い倒す

担当講師:岸本 誠也

コンピューターシミュレーション技術は,情報処理・情報工学などに分類される技術です。
具体的には数式表される物理現象を,コンピューターでどのように計算するかという分野です。モノを作らずに様々な条件下で実験や検討が可能になり,目で見えない現象を可視化することなどができるため,モノづくりの現場ではもちろん,学術的にも物理現象の理解を助けるツールとして使われます。
ただ,コンピューターの計算速度が高速になっても,コンピューターを動かし続ける時間は数時間から数日程度必要になる場合があります。この時間を削るためには,コンピューターの持てる力のすべてを使う必要があります。

この講義では,コンピューターで物理現象をシミュレーションするとはどういったことなのかという導入から,シミュレーションを使った応用例やシミュレーション技術の高速化について説明します。

ゴールドの科学(局在表面プラズモン共鳴)

担当講師:胡桃 聡

皆さんがゴールド(Au)と聞いてイメージするものは『金閣寺』や『金塊(お宝)』といった『黄金色』のものだと思います。
それに対して私たちの研究グループで注目しているのが『赤・緑・青色』のAuです。これは『局在表面プラズモン共鳴』によるもので,Auが数十ナノメートル(1ナノメートル:10億分の一)程度のナノ微粒子になると特徴的な光吸収を発現します。
一般的にAuナノ微粒子は局在表面プラズモン共鳴によって波長550ナノメートルの緑色の光を吸収し,赤色に見えます。この現象のオモシロいことは,複数のAuナノ微粒子がナノスケールで近接したり,形状が変化したりすると,光の吸収波長が550ナノメートルよりも大きくなることです。これによってAuが緑色や青・紫色に見えるようになります。

私の出張講義では,局在表面プラズモン共鳴によって様々な色を持つAuを紹介するとともに,原子間力顕微鏡によって実際に撮影したAuナノ微粒子の画像と色の相関関係について講義します。
またAuナノ微粒子の生成方法として,私たちの研究室で採用している『パルスレーザー堆積法』について説明します。そして局在表面プラズモンによって期待される最新の科学技術と,これが切り開く未来について紹介します。

パルスレーザー堆積装置の写真。これによってAuナノパーティクルを基板上に堆積させる。
パルスレーザー堆積装置の写真。これによってAuナノパーティクルを基板上に堆積させる。
私たちの研究グループで作製した試料。Auナノパーティクルが基板上に堆積されていて,実験条件によって試料の色が異なる。1枚の基板のサイズは縦10mm,横10mm,厚さ1mmである。
私たちの研究グループで作製した試料。Auナノパーティクルが基板上に堆積されていて,実験条件によって試料の色が異なる。1枚の基板のサイズは縦10mm,横10mm,厚さ1mmである。

超高速情報記録デバイスをつくる

担当講師:塚本 新

現在,世界の多くの情報は,ハードディスク・ドライブと呼ばれる情報蓄積装置に保存されております。
これは,堅い円盤(ハードディスク)上に無数に作られたナノサイズの高性能磁石の向きが盤面に対し上向き(1状態)か下向き(0状態)かによりデジタル情報として記憶されております。この磁石の向きを変えることが情報を“記録”する事に相当しますが,現行技術の方法では,これ以上の高速化が原理的に困難な状況まで来ております。

本講義で紹介する研究では,全く異なる“光”を用いた従来にない新原理により記録速度を数万倍に高める方法を研究しております。
その中心となる原理は,超短単一パルス光照射のみによる「光誘起完全磁化反転現象」で,2006年に国際共同研究により発見しました。従来電磁石による磁場で磁石の向きを変えていたのに対し,極短時間光を照射するのみで“磁気記録”が可能となります。このような超短時間領域(フェムト秒:10-15秒)での光-物質間作用に関する実験的知見,原理,ともに未踏領域であり,理学・工学の融合研究が求められ,様々な国内外研究者・機関との連携研究も推進しています。
全く新しい原理に基づく「超高速ハードディスクをつくる」アイデアを紹介いたします。

HDD(ハードディスクドライブ)
HDD(ハードディスクドライブ)
超短パルスレーザー利用超高速光誘起磁化反転装置
超短パルスレーザー利用超高速光誘起磁化反転装置

スマートデバイスで開く新たな理科実験の可能性

担当講師:星野 貴弘

近年,スマートフォンをはじめとするスマートデバイスは私達の生活に欠かすことのできないものとなっています。
教育の分野においてもスマートデバイスなどのICTを効果的に利用することが推進されてきていますが,多くの学校で効果的に利用されているとは言い難い状況にあります。理科教育では,実験ツールとしてのスマートデバイスのセンサ技術の利用が注目されてきています。

スマートデバイスには加速度センサが内蔵されており,このセンサ情報と周辺機能を利用した実験支援ソフトウェアを開発することでこれまでにない物理実験が可能になります。

本講義では,スマートデバイスに使われているセンサ技術を簡単に紹介した後,当研究室で開発した物理教育用の実験ソフトウェアの機能とその効果的な利用方法についてご紹介します。

省エネ・省電力の決め手:究極のナノ構造電子デバイスをつくるC

担当講師:塚本 新

ナノ・テクノロジーの飛躍的進歩による,エレクトロニクスの発展により,今日の高度情報化社会を支えるITC技術がもたらされました。
これら技術革新は主に電子素子/回路の「微小化」「高集積化」という考え方により,超高速・小型・高機能・低消費電力な電子装置を作り出してまいりました。一方,ナノスケールでのモノづくりが追及された今,これ以上「微小化」し「高集積」する事で高機能化する事は困難となっています。

本講義で紹介する研究は,電気,電流を利用するエレクトロニクスと,磁石の性質を利用するマグネティクス(磁気工学)が融合した,スピントロニクスと呼ばれる「新分野」に含まれる研究です。
ナノ・スケールに置いて顕在化する,電気,電流と磁石がお互いに関係し合う新たな現象を探求,利用しようというものです。半導体メモリであるDRAMと磁気記録メモリであるHDDの良い特徴を合わせた,磁気ランダムアクセスメモリMRAMと呼ばれるデバイスや,電流により磁石を制御し記録するためのスピン・トランスファー・トルクSTTと呼ばれる現象/応用方法,自己集積化現象と呼ばれる自然が自ら進んで形作る性質を利用したナノ構造の形成等,最先端の研究や技術を紹介いたします。

▲自己集積化現象を利用したナノ粒子の配列化
▲自己集積化現象を利用したナノ粒子の配列化
▲微小スピントロニクス素子磁気・電気的評価用多環境プローバーシステム
▲微小スピントロニクス素子磁気・電気的評価用多環境プローバーシステム

車窓から眺める計測技術

担当講師:松村 太陽

世界の鉄道と比較し秒単位の正確さで運転している日本の鉄道は,今や毎日の通学や休みの旅行の際,私たちにとって大切な足となっています。これは同時に,時間どおりに走ること,一度に多人数が移動できること,安全であることが当然であることを意味しています。

そんな鉄道を工学者の観点から見てみると,電気,機械,土木,建築などの複数の分野が協力し支え合う,巨大なシステムとなっています。一つ一つの分野を見てみると,いずれも大量輸送,高速性,定時性を確保する為に,安全と信頼というキーワードが必須事項となっています。

これらのキーワードを実現するためには,先ずは現状を知ることから始まります。列車はどこにいるのか。信号は何色か。装置は安全に作動しているのか。ここで各分野と協力しあい活躍するのが,計測技術です。

本講義では,鉄道における計測技術に注目し,安全に対する立場や視点,設計思想,人と装置の主従関係,システムとしての安全確保,自動化,情報利用について,実例を交え具体的にご紹介致します。