製鋼過程で発生する産業廃棄物のリサイクルと環境対策

担当講師:梅村 靖弘

自動車や建築構造物など私たちの暮らしに必要な物を製造する材料として重要なものに鉄鋼があります。
鉄鋼を作る段階で出る産業廃棄物は「鉄鋼スラグ」と呼ばれその多くが, まだ有効利用されずに放置されています。鉄鋼スラグには「高炉スラグ」と「転炉スラグ」の二種類があります。高炉スラグは国内で約2300万t発生しセメント材料等として有効利用されています。
しかし, 転炉スラグは約1000万t発生しますが, 含有する遊離石灰の水和により膨張崩壊するため埋立用材に使用される以外, 有効利用の方法が確立されていません。

一方, コンクリートの材料であるセメントは石灰石を原料として作られるもので, 製造時に原料を約1450℃で焼く必要があり, その際, 多量の二酸化炭素を排出することから地球温暖化対策が必要となっています。
そのためセメントを減らしてセメントの代替となる材料の活用が求められています。転炉スラグが高炉スラグと同様にセメントの代替材料として使えるようになれば, リサイクル面で有効利用が可能となるだけでなく, セメントの生産量を減らすことに役立つことになります。

以上のことから, この授業を通じてリサイクルと環境問題は別々のものではなく, つながっているものだということを理解して下さい。

製鋼過程と鉄鋼スラグ

「都市」を眺め,そして創る

担当講師:大沢 昌玄

私たちは,「住む」「働く」「学ぶ」「遊ぶ」ことの多くを都市で行っています。そして,私たちは生活する上で「安心」して「快適」にそして「楽しく」暮らせることを望んでいます。
つまり,都市を考えることは自分の生活環境を考えることでもあるのです。そこで私は,皆さんに,快適で楽しく安心して暮らせるまちづくりについて,現在の都市を眺めながら,都市の成り立ちを踏まえ未来の都市について解説します。また,東日本大震災の復興都市計画の進捗状況などをお伝えします。

  1. 身近な都市を眺めてみる:都市とは何か?そして都市の見方,感じ方についてお話します。
  2. まちづくりの考え方について:まちづくりについて,その構想から計画,設計の概念について実例を用いて解説します。
  3. 現在進められている都市再開発プロジェクトや大規模インフラの紹介
  4. 都市の履歴書:我が国の都市の多くは,戦争や災害からの復興事業により整備されています。現在の都市に至るまでのまちづくりの過程,どのような技術者が活躍したのかをお話します。
  5. 東日本大震災の復興都市計画:復興計画の苦悩と実際をお話します。
横浜みなとみらい21(皆が集う、観光地、デートスポット)
原宿・表参道
(緑豊かな街路空間)
横浜みなとみらい21(皆が集う、観光地、デートスポット)
横浜みなとみらい21
(皆が集う,観光地,デートスポット)
陸前高田市内及び 高田松原公園(津波でなぎ倒され、唯一残った松)
陸前高田市内及び 高田松原公園
(津波でなぎ倒され,唯一残った松)

プロジェクトを評価する

担当講師:金子 雄一郎

私たちの身の周りにある道路や鉄道,上下水道,エネルギー施設など-これらは社会基盤施設(インフラストラクチャー)と呼ばれています-は,毎日の暮らしの中で欠かせない施設です。そのため,施設を整備する際には多くの場合,貴重な税金が使われます。
税金は有効に使われなければなりませんので,整備に要する「費用」に見合うだけの「効果」が得られるのか,事前に十分チェックしておく必要があります。

社会基盤施設を整備するプロジェクトの評価は,
(1)プロジェクトを実施した場合(With-Case)と実施しなかった場合(Without-Case)にどのようなことが起こるかを想定し,
(2)両者の差からプロジェクトによる「効果」を算定し,「費用」と比較することで行われます。

ここでいくつかの問題があります。「効果」と「費用」を同じ単位で比較できるのでしょうか?
例えば,バイパス道路が整備された場合,自動車の利用者には走行時間の短縮,ガソリン代の節約などの「効果」が発生しますが,これらの「効果」を「費用」と比較するためには「円」の単位で表される必要があります。
どのように「時間」を「円」に換算するのでしょうか?

また,社会基盤施設は非常に長い期間利用されます。そのような「将来の価値」について,現時点でどのように評価すればよいのでしょうか?

講義ではプロジェクトの評価方法について,最近の整備事例を紹介しながら,以上のような疑問に答える形で,分かりやすく説明します。

橋
バイパス
トンネル

微生物を利用した下水からの資源回収

担当講師:齋藤 利晃

私たちは,新しい細胞を合成したり生体器官を維持するため,食べ物や飲み物から栄養とエネルギーを吸収しています。
私たちが廃棄する食べ残しや厨房排水,排泄物には,吸収しきれなかった栄養とエネルギーが豊富に含まれているため,そのまま川や湖に放流すると,有機物汚濁や富栄養化などの深刻な水質汚染を引き起こします。

水環境を保全し,かつ,持続可能な社会を構築するためには,排水を適切に処理して取り除くことに加え,排水中の栄養やエネルギーを積極的に回収し再利用することが求められています。
その役割を担っているのは,わずか数マイクロメートルのとても小さな生き物であるバクテリアです。バクテリアは,その多彩な能力と処世術で厳しい環境を巧みに生き抜き,排水処理はもちろん,私たちが利用し損ねた栄養やエネルギーを回収する技術へも役立とうとしています。

本講義では,バクテリアの多様性とその生命力,生き抜くための知恵を紹介しながら,バクテリアを用いた排水処理と資源・エネルギー回収の動向について概説します。

身近に使われている高性能コンクリート

担当講師:佐藤 正己

これまでの歴史の中で,地震国である日本では非常に短いスパンで構造物が造り変えられてきました。
それは,近代国家として歩み始めた明治時代から使用され始めたセメントコンクリート構造物でも例外ではなく使用され始めてから長い間30~40年程度の長さを想定して設計されてきました。

近年,コンクリートは,薬剤や新材料の開発によってコンクリートの強度,耐久性が飛躍的に増加し,耐久年数100年といった構造物が造られ始めています。このような超高強度コンクリートは,耐久性を求められる公共施設や超高層マンションに用いられています。
また,公共工事には,用途に応じてさまざまな性能を付与した特殊コンクリートが用いられ,社会基盤を支えています。

本講義においては,長寿命化を実現した超高強度コンクリートをはじめとする特殊コンクリートを身近な事例を挙げながら紹介します。

セメントが固まるのは乾くと勘違いされている方もいらっしゃると思いますが,化学反応で硬化します。少人数でご要望があれば,簡単な実験をすることも可能です。

羽田空港4番目の滑走路
(1)普通コンクリートの5倍の強度のコンクリートを使用し2010年に竣工した羽田空港4番目の滑走路
43階建の分譲マンション
(2)普通コンクリートの5倍の強度のコンクリートを使用した43階建の分譲マンション

脱炭素社会を目指すセメント・コンクリート分野の取り組み

担当講師:佐藤 正己

近年,脱炭素社会が社会問題になっている。セメント・コンクリートは,社会インフラを構成するために最も多く利用されている材料である。

しかし,コンクリートを製造するために使用されるセメントは,製造時に多くの二酸化炭素を排出するために,セメント産業・建設業では社会的な課題となっている。

本講義では,セメント産業,建設業,研究機関での取り組みについて行います。

美しい橋はどのように生まれるか

担当講師:関 文夫

見知らぬ土地に行きたいという人類の望みを叶えるために「橋」が造られる。
より遠くへ,より長く,人類の欲望は,果てしなく,「橋」は,その時代の技術力を風刺した傑作品ともいえます。
「橋」は,架橋されるとその地域に根差し,地域の風景として存在感までも現れてくるので不思議な構造物です。

その魅力のひとつに,計算されつくした構造から生まれるカタチがあり,空間という機能の洗練から生まれるものがあります。
ここでは,世界の名橋を基に,その美しさの根幹となる構造,カタチ,空間という観点から説明し,風景の中の橋がもつ魅力を解説します。

講演者も橋の設計を行い,国内外にデザインした橋があります。橋のデザインの裏側や橋のデザインを通じて出会う人間関係,橋のデザインから生まれる地域愛など,内面に秘められた様々な話を聞くと,橋が身近に感じられてきます。

そして,どんな橋にも,架橋されると,人々の思い出,記憶が残ります。
映画のシーンのように,橋を取巻く環境には,様々なドラマが展開され,地域の一員になっていることが多いです。どんな不恰好な橋でも,地域の一員になれるそんな存在の構造物が橋です。

これを機会に,身近な橋について考えてみませんか。

雷電廿六木橋
雷電廿六木橋(埼玉県)
[講演者設計]
1998年グッドデザイン賞,2011年土木学会デザイン賞,最優秀賞他多数の賞受賞。
ばんどうドイツ橋
ばんどうドイツ橋(徳島県)
[講演者設計]
2002年グッドデザイン賞金賞,2003年土木学会デザイン賞,優秀賞他多数の賞受賞。
MUSEゲートブリッジ
MUSEゲートブリッジ(大阪府高槻市)
その他参考写真
酒田みらい橋(山形県酒田市)
酒田みらい橋(山形県酒田市)
その他参考写真

生活の舞台を支える土木の力

担当講師:関 文夫

日常生活の中で,蛇口をひねると水が出て,汚水が排水孔へ飲み込まれていく,ガス,電気が何も支障なく使え,予定通りに電車もやってくる。
実は,これら皆さんの生活する舞台を,優しく支えているのは,「土木の力」なのです。諸外国で,こんなに安定している国は,他にありません。

土木という分野は,実に広いのです。上下水道,電気,ガス,通信といったインフラ系,原子力,火力,水力,風力,太陽光といったエネルギー系,国土の軸を担う高速道路,鉄道,新交通,空港,港湾,漁港といった交通系,地震,津波,台風,竜巻,ゲリラ豪雨,液状化,土石流といった自然災害から人命と財産を守る防災系,森林,河川,河口,海洋といった生物多様性を保全する環境生態系,新しいまちづくり,都市の再開発,まちの活性化といった都市開発系,遊園地,スポーツ施設,リゾート施設といったレジャー系とその土木のフィールドはとても広く,内容も高度なのです。

人を支える,日本を支える,地球を支える,そんなダイナミックな土木の仕事を理解してみませんか。
計画,設計,施工,維持管理,マネジメントと働いている人も公務員から民間,働いている場所も国内から海外まで幅広く取組んでいます。

土木の仕事は,市民の生活と自然環境を守り,豊かな国づくりを行うことです。

朝、歯磨きする水はどこからきて、口を漱いだ水はどこへ行くのだろうか。
朝,歯磨きする水はどこからきて,口を漱いだ水はどこへ行くのだろうか。
都市という生活の舞台を支えているのは、土木の力
都市という生活の舞台を支えているのは,土木の力

水の流れをデザインする

担当講師:高橋 正行

旧来から自然と人工物との調和を考えた景観(landscape)が様々な所で見られる。
例えば,自然に形成された滝と植樹との調和などが挙げられる。人が好む景観には静止したものばかりでなく動きのあるものと調和のとれた景観も数多くある。「ながれ」を意識して表現しなおすと,「ながれ」の有する「動」が周囲の「静」なる対照物と調和して美しい景観を創り出すものと考えられる。

河川に設置された工作物としての連続した階段状水路を流れる様相は自然の樹木と調和し,景観美と評価されている(写真1)。
アメニティ空間の創造のために,人工施設に造られた噴水の流れや階段を利用した小さな滝などでも景観美をつくりだし,それらの流れは歴史的にも古くから利用されている。
上述の落差を伴う「ながれ」は局所的に流れが急変する流れ,いわゆる局所流である。局所流は人が認識しやすい流れである。特に気泡が混入した流れは人の目を引き付ける興味深い流れである。すなわち,局所流は流れの景観として利用しやすい流れである。

従来,景観に生かされた気泡混入流れの創作は職人技に限りなく近く,経験的なセンスで設計されている。
再現性のある気泡混入した流れの景観設計を可能にするためには,流れの水理学的特性の解明をすることが重要である。
ここでは,局所流における「流水の美」を景観に利用するという観点から流れの水理学的特性を紹介する。

牛伏川フランス式流路工
長野県松本市にある牛伏川フランス式流路工

宇宙から見た環境と災害

担当講師:羽柴 秀樹

人工衛星を用いて地球を観測する試みは今から約40 年前から始まりました。
現在では多くの国がさまざまな特徴をもったセンサーを開発し多数の衛星を打ち上げ,観測や調査活動を行っています。このような衛星観測によって得られた画像情報は自然環境の評価・保全などに役立てられたり,また社会基盤の計画や整備のための情報として利用されています。

人工衛星から地球の表面を観測すると,普段の生活での人間の視点からでは把握することができない,非常に大きなスケールの様子を観察することができます。
ここでは,人工衛星から観測された自然環境や大規模自然災害の様子や,都市環境の様子を紹介します。
自然環境では,自然の森林の状態や自然に対する人間の開発行為がどのように影響を及ぼしているかなどを画像から観察します。
また,都市環境では,過去から現在まで都市がどのように広がってきているかを衛星画像から追跡調査し,その変化の特徴を読み取ります。
加えて,地震や津波といった大規模な自然災害を衛星観測画像から調査し,被害の状況を評価します。

衛星観測によるさまざまな調査と評価
写真左上:地表の調査と評価
写真右中:年の地表面
温度分布の調査と評価
写真左下:都市域の環境調査
衛星観測によるさまざまな調査と評価