河川環境の改善ができる地球の医者を目指して

担当講師:安田 陽一

日本に限らず世界各国で河川に生息する水生生物の生息環境は,人の生活環境を守るための利水・治水の観点から整備された河川横断構造物によって大きく影響されています。
その結果,水生生物の移動・遡上・降河が困難な箇所が多くあります。これからの時代は,生態系保全につながる環境改善の技術を具体的に見出し,実践的に実施していくことが土木工学の役割の一つとして認識しています。

私の専門分野は環境水理学であり,大津教授と共に局所的に複雑な流れ(局所流)の特性を解明し,その研究成果が国際的に認められています。
2000年以降では,河川横断構造物による水生生物の遡上・降河・移動の妨げを解消するための魚道の研究に着手しました。局所流の研究成果を魚道の研究に反映させ,研究成果に基づき160箇所以上の提案魚道が整備され,構造物本来の機能を損なうことなく,多様な水生生物の遡上・降河・移動が可能な環境にすることに成功しました。

写真右上:遊泳魚ばかりでなく底生魚・甲殻類・貝類の遡上・降河を可能にし,景観に配慮した河川横断構造物の改良を提案しました

写真右下:都市河川の洪水調節機能を損なうことなく,多様な水生生物に配慮した魚道設備を提案しました

景観に配慮した河川横断構造物の改良
遊泳魚ばかりでなく底生魚・甲殻類・貝類の遡上・降河を可能にし,景観に配慮した河川横断構造物の改良を提案しました
多様な水生生物に配慮した魚道設備
都市河川の洪水調節機能を損なうことなく,多様な水生生物に配慮した魚道設備を提案しました

雪って楽しい?怖いもの?

担当講師:小田 憲一

雪が降るとなぜだかワクワクした気持ちになります。雪だるま,雪合戦,ウィンタースポーツ,きれいな雪景色,私たちの生活に癒しを与えてくれるイメージが強い雪ですが,楽しいことばかりを我々に与えてくれるわけではありません。

都心部に雪が降ると,電車が停まったり,車が動けなくなったり,歩行者が転倒してけがをしたり,大混乱を引き起こします。
毎年雪が降る地域も例外ではありません。積雪が1mとなる地域や,3m,4mとより沢山の雪が積もる地域では,除雪作業が必ず必要であり,とても大変な労働力が必要になります。
一方で,降り積もった雪が融けるとき,山間部では雪崩が発生する危険性が高まり,都心部では道路環境が悪くなることで車や人の交通障害を引き起こすことがあります。

これらの障害が発生しないように,人々の生活を安全・快適にするために,ドボクの力が沢山利用されています。

本講義では,雪が降ると実際にどのような障害が発生するのか,ドボクはどのような力を発揮してその障害から私たちの生活を守っているかを紹介します。
加えて,私の研究グループが現在行っている雪に関する最新の研究を紹介します。

フェンスと着雪に関する野外観測の状況
フェンスと着雪に関する野外観測の状況
調査している風景
雪崩の発生に樹木がどれだけ影響しているかを調査している風景

ピサの斜塔の秘密 ~構造物を支える地盤~

担当講師:鎌尾 彰司

皆さん!ピサの斜塔をご存じですか?

1173年に建設が開始され,途中2度にわたる建設中断がありましたが,1370年に完成いたしました。
建設から既に800年以上も経過しておりますが,いまだに塔の沈下が進み,その傾斜角度も年々大きくなっております。
構造物下の地盤の不等沈下が原因であると言われており,このままでは倒壊してしまう恐れもあります。

本講義では,ピサの斜塔が倒壊するのを防ぎ,傾きを維持するために施されている様々な工夫(技術)について,地盤工学分野の観点からわかりやすくお話しいたします。
また,構造物を支える地盤に焦点を当て,国内外で発生しているいろいろな地盤沈下現象の紹介,地震時に発生する液状化被害とその対策などを紹介いたします。

ピサの斜塔
ピサの斜塔
ピサの斜塔
ピサの斜塔

あなたの足元の地盤は大丈夫?!~液状化の恐怖~

担当講師:鎌尾 彰司

地震によって地盤に液状化現象が発生します。
東日本大震災では関東地区でも液状化による構造物の傾斜やマンホール等の隆起などが数多くの地盤災害が発生しました。また,その後に各地で発生した地震において,やはり液状化現象が多発しております。
なぜ構造物が建っている地盤が地震が来ると液体状になってしまうのか?どうしたら液状化の被害を防止できるのか?などを液状化のメカニズムを科学的に解き明かします。
この講義を聴けば皆さんも「液状化博士!」間違いなし。

また,最近の地盤災害は自然災害だけではありません。
ある日突然,自宅の前の道路が陥没してしまうような被害事例もトンネル工事などの建設工事が原因で発生しております。あなたの家の下の地盤を守るのはあなたです!

SDGs:目標11(持続可能なまちづくり)

液状化による被害(浦安)
液状化による被害(浦安)
液状化による被害(横浜)
液状化による被害(横浜)
道路の陥没(調布・NEXCO東日本 報告書より)
道路の陥没(調布・NEXCO東日本 報告書より)

GISによる社会課題や被災概要の可視化

担当講師:園部 雅史

自動車や建築構造物など私たちの暮らしに必要な物を製造する材料として重要なものに鉄鋼があります。
鉄鋼を作る段階で出る産業廃棄物は「鉄鋼スラグ」と呼ばれ,その多くが,まだ有効利用されずに放置されています。
鉄鋼スラグには「高炉スラグ」と「転炉スラグ」の二種類があります。高炉スラグは国内で約2300 万t発生しセメント材料等として有効利用されています。
しかし,転炉スラグは約1000 万t発生しますが,含有する遊離石灰の水和により膨張崩壊するため埋立用材に使用される以外,有効利用の方法が確立されていません。

一方,コンクリートの材料であるセメントは石灰石を原料として作られるもので,製造時に原料を約1450℃で焼く必要があり,その際,多量の二酸化炭素を排出することから地球温暖化対策が必要となっています。
そのためセメントを減らしてセメントの代替となる材料の活用が求められています。

転炉スラグが高炉スラグと同様にセメントの代替材料として使えるようになれば,リサイクル面で有効利用が可能となるだけでなく,セメントの生産量を減らすことに役立つことになります。
以上のことから,この授業を通じてリサイクルと環境問題は別々のものではなく,つながっているものだということを理解して下さい。

図1:GISのイメージ図
図1:GISのイメージ図
図2:衛星解析による建物被害の推計
図2:衛星解析による建物被害の推計

風による揺れをエネルギーに変えよう

担当講師:長谷部 寛

風が吹くと構造物は傾いたり変形したりするだけでなく,しばしば振動(揺れ)が生じます。
特に長い橋や高いビル・タワーなどは揺れやすく,過去には風によって生じた揺れが原因で壊れてしまった長い橋もあります。
構造物をつくる上で,風による揺れは避けるべきポイントの一つです。

一方で,構造物をつくる上で避けるべき揺れも,見方を変えると貴重なエネルギー源です。
風によるエネルギー(風力エネルギー)と聞くと,真っ先に大型のプロペラ式の風車による風力発電をイメージされると思います。
もちろん,大型風車による風力発電は多量なエネルギーを生み出すことから,持続可能な社会を形成するための重要な構成要素の一つです。
ただ,風力発電は風車以外にも様々なタイプの発電方式があります。先ほどの風による揺れを利用する方法もその一つです。

風に吹かれた送電線が上下に激しく揺れる揺れをギャロッピングと言います。
風に吹かれた旗がバタバタはためく揺れをフラッターと言います。
これらは激しい揺れを伴いますが,この激しい揺れを逆手にとって,揺れから風のエネルギーを回収する研究が進められています。

本講義では,風が吹くとなぜ物体は揺れるのか,プロペラ式の風力発電以外の風力発電にどのようなタイプがあるのかを紹介します。
そして,現在私の研究グループが取り組んでいる風による揺れからエネルギーを回収する試みも紹介します。
2030年には,本講義で学ぶ様々なタイプの風力発電が皆さんの周りで見られるかもしれません。

図1 風力エネルギー回収を目的とした複数円柱のギャロッピング振動実験
図1 風力エネルギー回収を目的とした複数円柱のギャロッピング振動実験
図2 複数円柱まわりの風のコンピューターシミュレーション
図2 複数円柱まわりの風のコンピューターシミュレーション

水をきれいにしながら温暖化防止も考える

担当講師:吉田 征史

生物は水がなくては生きていけません。
しかし,私たち人間の生活が便利になったことで排出量が増加した生活廃水・工場廃水などにより,水域では有機物・窒素・リンといった物質が増え,その結果,植物プランクトンが大量増殖し,まるで緑色のペンキを流したような汚い水域になってしまいます。
さらに近年,地球温暖化を起因とした海面上昇や異常気象などが続き社会問題となっています。
温暖化の原因としては化石燃料の燃焼(例えばガソリンの使用)による二酸化炭素(CO2)の増加が思い浮かぶと思いますが,日本のような火力発電をメインとしている国では電力需要の増加も大気へのCO2排出量を増加させます。

「水」と「大気」,別の環境問題を話しているようですが,水が蒸発すれば水蒸気が大気中へ放出されるように,実はとても密接に関わっています。

上に書いたような汚れた水域をきれいにするには,汚れている現場での対策と,水域への汚染物質の供給量を削減する対策(例えば下水処理)があります。

本講義では,水および汚濁物質の水中と大気中での循環,微生物による廃水処理の仕組み,それに伴う温暖化ガス排出抑制への関わり,そして水をきれいにしながら発電も行なう試みについてお話しします。

藍藻(植物プランクトン)
(顕微鏡写真)
藍藻(植物プランクトン)
(顕微鏡写真)
図2
気液平衡を利用して温暖化ガスを採取
図2
気液平衡を利用して温暖化ガスを採取
図3
微生物による排水処理と発電
(微生物燃料電池)
図3
微生物による排水処理と発電
(微生物燃料電池)

高速水流とその制御

担当講師:佐藤 柳言

日本には,2500基以上の数のダム(写真1)が整備されています。
ダムは,洪水調整・水資源の確保・水力発電・河川環境保全などを目的に造られるもので,我々の生活に欠かせない土木構造物の一つです。

ダムの堰上げによって貯められた水は位置エネルギーの大きい状態になるため,ダムからの放流水は大きな運動エネルギーをもつ流れ(高速水流)となります。
このような高速水流をダム下流側の河川・水路にそのまま流下させてしまった場合,河道・橋梁・道路などの施設や人家に被害を及ぼすことが想定されます。
このような事態を未然に防ぐため,ダム下流側には流水の運動エネルギーを小さくするための構造物(減勢工)を設けることがあります。

本講義では,代表的な減勢工を例に挙げ,ダム下流側で高速水流がどのように制御されているかを説明します。
また,私の研究グループが実施してきた高速水流制御の研究の一端を紹介します。
この講義を通じて,土木工学に水の流れに関する力学(水理学)の分野があることを知り,流水現象の不思議さと面白さを実感できることでしょう。

見えないモノを診る技術

担当講師:中村 勝哉

私たちの豊かな暮らしは道路,鉄道,ダムまたは電力施設等の多様な社会基盤施設と共にあります。
また,社会基盤施設は地盤に支えられており,施設の設計,維持管理においては施設を支える地盤の状態を把握する必要があります。
しかし,地盤内部の状態については目視で確認することが困難です。

確認することが困難な地盤内部を把握する手法の一つとして物理探査が挙げられます。
物理探査とは,対象とする材料の物理的な特徴を利用し,材料の状態を可視化する技術です。
そのため,地盤に力を加えることで反力等を得る方法とは異なり,地盤内部の状況を遠隔から把握することが期待できます。
しかし,適用する物理探査手法の限界,物理現象の計測方法について理解が不十分であると正しい結果が得られない場合があります。

本講義では,物理探査を用いて地盤内部を可視化する手法について紹介します。
また,地盤を伝わる弾性波を使った物理探査手法を例に手法の限界及び計測方法を深く理解することの重要性についてお伝えします。

計測した弾性波
計測した弾性波

まちの魅力-見つけ方と楽しみ方

担当講師:三友 奈々

本講義では,日本の中での地域差,海外との差を知ることで,客観的に自分の住むまちの魅力に気づいて誇りを持てるようになったり,自分の家や自分の部屋のようにまちに関心を持てるようになったりすることを目指しています。
また,海外を含めた他の地域やそこに住む人々に対して興味を持つきっかけになればと思います。

講義は,大きく二部に分かれます。

前半は,主に日本の事例を用いて,まちの魅力の見つけ方について講義します。
有名な都市でなくてもどんなまちにも魅力はあります。負の地域資源だと思っていたものも,見方を変えたり,少し手を加えたりすることで,地域の価値になる可能性を秘めています。

後半は,まちの楽しみ方です。主に欧米の事例を紹介して,公園や街路,広場といった公共空間で楽しんでいる人たちの様子を解説します。

廃線跡を再生した公園は
まちの資源に(米国)
廃線跡を再生した公園は
まちの資源に(米国)
公園でみんなで映画を楽しむ
(米国)
公園でみんなで映画を楽しむ
(米国)