防災・減災のための津波シミュレーション

担当講師:相田 康洋

南海トラフ地震の発生が懸念される現在,沿岸の人々を守るための施設整備が日本各地で進められています.
津波は,その規模の大きさから,水槽を用いた実験ですべてを把握することが困難な現象の一つです.
また,現在の観測技術では,今後発生する津波の規模を,事前に正確に推定することができないのが現状であり,あらかじめ想定される数多くの津波のパターンを網羅するためには,数多くの実験をする必要があります.

そこで力を発揮するのが,数値シミュレーションです.
太平洋全体を再現した津波実験をすることは不可能ですが,津波シミュレーションだったら可能です.
また,遡上した津波によって逃げ遅れる可能性がある地域を見つけることも,津波漂流物が漂流していく様子も,船舶が津波によって陸にのりあがる様子も,数値シミュレーションならば再現が可能です.
再現が可能だからこそ,対策を検討し,講じることができるのです.

この講義では,防災・減災のための津波シミュレーションについて動画を交えながら紹介します.

利用者のニーズに合わせた水回りのデザインを考えよう

担当講師:江川 香奈

生活に欠かせない「水回り」等のデザインをテーマに,建築計画学的観点と近年までのデザイン傾向について分かりやすく解説します。
ここでは,考案されてきた具体的なデザイン上の配慮点,利用者の使いやすさを考慮した設計手法や対策についても紹介します。
講義の後半では,使う人のニーズを取り入れた水回り空間等についてみなさんにもデザインする,または提案していただきたいと思います。
講義・演習は受講対象者の構成や希望テーマに合わせて,柔軟に変更・対応します。

キッチン(水回り)イメージ画像

建物は風で揺れるのか。

担当講師:扇谷 匠己

風が建物にどれほどの影響を与えるか考えたことはありますか。
建物は風ではびくともしない頑丈なものだと思っている方も多いと思います。しかし, 実は風は建物にとって非常に大きな脅威となり得ます。

風の脅威として「タコマ橋の崩壊」という歴史的な出来事が有名です。
1940年、米国ワシントン州のタコマに建設されたタコマナローズ橋が, 完成後わずか4か月で, 毎秒19m/sという比較的弱い風により激しく振動し, 最終的に崩壊してしまいました。
この衝撃的な事例は, 風と構造物の共振現象の恐ろしさを世界に知らしめ, その後の橋梁設計や建築設計に大きな教訓を与えています。

日本は、地震大国であるため地震に対する設計が主として行われてきました。しかし近年では, 60mを超える超高層建物, さらには100m, 200mを超える超々高層建物の建設も進んできています。

こうした超々高層建物は, はたして風で揺れてしまうのか。風と建物の関係について解説します。.

大空間建築のデザイン-建築家のイメージ・言葉

担当講師:長谷川 洋平

2007年に世界文化遺産に登録されたオーストラリアの「シドニー・オペラハウス」は,その姿からヨットの帆や,白い貝殻が連想されるといわれています。
岬の先端に位置するという環境から建築家はこのような大胆なかたちを提案したのではないでしょうか。

この授業ではシドニー・オペラハウスのような大きな屋根をもつ建物を大空間建築として着目し,その成り立ちについて説明します。
また大空間建築の特徴の一つである「巨大さ」が環境や社会へ及ぼす影響について,建築家たちがどのように捉え設計するのか。
環境に関わる建築家のイメージや言葉についてお話したいと思います。

シドニー・オペラハウス
シドニー・オペラハウス

これからの少子高齢社会と海浜空間

担当講師:山本 和清

日本では21世紀に入り,超高齢社会といわれる本格的な高齢者の時代を迎えようとしています。
その対策として,2006年12月のバリアフリー新法制定など,建物内部及び公共交通空間における移動の利便性や安全性の向上が推進されつつあります。
それらの対策により,高齢者・障害者の外出が容易となり,海洋性レクリエーションへの参加意欲が向上していくものと考えられます。
そのためにはバリアフリーとしての対応では限界があり,今後は個々の施設が円滑につながり,安全かつ自由に行動でき,全ての人々にとって優しい配慮のされたユニバーサルデザイン整備が必要であると考えられます。

また,海浜空間の利用計画では,サイン計画が重要な視点であると言えます。
広大な海浜空間では自分の位置の把握が困難であり,特に高齢者の場合,トイレや休憩場所の位置など,文字ではなく一目で分かるサインが必要不可欠なものであると言えます。

以上のような社会状況から,この講義では日本がこれから迎える超高齢社会において,健常者だけでなく,高齢者・障害者を含めた全ての人々が,海浜空間のもつ魅力を満喫できるようなシステムを構築するための手法についてお話します。

海外における海浜空間のサイン事例

環境に配慮した海洋利用を考えよう

担当講師:吉田 毅郎

海に囲まれた日本において,海との共存共栄は今後日本が目指すべき姿だと考えられます。
近年では海洋再生可能エネルギーや水産資源の安定供給としての養殖業など様々な海洋利用が注目を集めています。
しかし,海洋空間における構造物の設置は環境に影響を及ぼします。
適切に計画・管理されなければ,生態系の変化や底質の悪化など様々な負の影響をもたらす可能性があります。
そこで「環境に配慮した海洋利用」を考える必要があります。

本講座では,こうした観点を踏まえ,海洋再生可能エネルギーの導入に伴う環境影響と,養殖場における海底環境保全の取り組みを主なテーマとして,環境に配慮した海洋利用の在り方を総合的に考察します。
具体的には,洋上風力発電などの再生可能エネルギー設備が魚類および周辺環境に与える影響や,養殖場における自家汚染と呼ばれる環境問題とその改善策について解説します。最新の研究成果や事例を交えながら,技術的な対策についても説明します。

本講座は受講対象者の興味関心にあわせて,扱うトピックや事例の選定を調整する可能性があります。
本講座を通じて,環境と調和した海洋構造物の意義を理解し,持続可能な海洋利用に興味を持っていただければ幸いです。

構造物周辺の魚類
構造物周辺の魚類
画像処理されたナマコ
画像処理されたナマコ
養殖場の堆積物
養殖場の堆積物
網の付着物
網の付着物

持続可能なまちづくりを海からの視点で考えてみよう

担当講師:寺口 敬秀

近年,気候変動に伴って,日本各地で集中豪雨による被害が増えています。
また,世界に目を向けても,海面上昇に伴う土地の消失や,高潮による被害範囲の拡大など,沿岸部の都市では様々な問題が起こり始めています。
一方で,広大な海洋空間は,まだ開発されておらず,様々な取り組みをする可能性を秘めています。
特に,建築・まちづくりの面では,海の上に浮かぶ建築物や都市の役割に注目が集まっています。
国際連合は,2019年に「Oceanix City」と称した計画を発表し,将来的な人々の居住領域としての海上の重要性を示し,約300万人の居住者を受け入れる新たな海上都市モデルを提唱しました。
また,欧米諸国では浮体式の集合住宅やオフィス,農業施設等が次々と実現しています。
日本でも同様に,東京や大阪で浮体式のレストランやホテルが建設され,身近な水辺空間の日常利用に向けた試行的な取り組みが実施されています。

本講義では,人類の将来に向けた持続的な都市計画を行う上での海の役割や可能性に注目し,国内外における海上建築物の歴史を解説するとともに,最近の海上に建設された建築物の事例などを紹介し,海洋建築の重要性を皆さんに感じていただきたいと思います。