身近な”まちの歴史”の再発見

担当講師:阿部 貴弘

人の生い立ちを知ると,その人によりいっそう親しみがわくように,身近な”まちの歴史”を知ることで,普段何気なく暮らしているまちに,魅力や愛着を感じるようになります。
そうしたまちへの愛着は,クオリティ・オブ・ライフ,すなわち”暮らしの質”を高めるまちづくりの原動力となります。

ところで,日本のまちは,実に多様な成り立ちを誇っています。
全国の主要都市の多くは,近世の「城下町」を起源とします。また,かつての幹線道路,つまり旧街道沿いには,「宿場町」を起源とするまちが連なります。
さらに,河川や運河沿いには,様々な物資の集散地であった「在郷町」を起源とするまちが発達し,一方沿岸部には,海運拠点としての「湊町」を起源とするまちが点在します。

この講義では,まず,こうした日本のまちの成り立ちを概説したうえで,絵図や古地図を使いながら,身近なまちの歴史の見方・調べ方についてお話します。
さらに,まちの歴史が表れた身近な歴史資源について,まちづくりにおいてどのように活用していくか,具体事例を交えつつ,歴史を活かしたまちづくりの手法についてお話します。

城下町江戸の古地図
~城下町江戸の古地図~
日本の城下町は,水路網と街路網が複雑に入り組んだ,日本独自の大変興味深い都市構造を有していた
(1632(寛永9)年刊「武州豊嶋郡江戸庄図」(東京都立中央図書館東京誌料文庫所蔵))

身近な暮らしの中で取り組む景観まちづくり

担当講師:岡田 智秀

みなさんは自分自身が暮らしている地域(まち)の中で“誇れるスポット”,“自慢できるスポット”についてたずねられた際,すぐに答えることができるでしょうか?

これは一見すると簡単な質問と思われがちですが,著名な観光地ではない,いわゆる“普通のまち”といった場合には,なかなか即答が難しいという声をよく聞きます。
その理由は,自分自身が暮らすまちの中で,本当は魅力的な資源があったとしても,それは日常的な光景として“当たり前の存在”になってしまいがちであるからです。
そのため,新たな開発によって,失われてはじめてその魅力的な価値に気づくという問題がしばしば生じてきます。

では,そのような問題を生じさせない“魅力的なまち”を持続的に支えるためにはどうすればよいのでしょうか。

その解決策の一つとして,地元地域の住民や行政とともに専門家が集まり,そのまちの魅力点や問題点を議論し,そのまちのこれからのあり方を導く「景観まちづくりワークショップ」が注目されています。
その中で,実際にまち歩きを行うことで地元地域の魅力点や問題点を再発見したり,参加者が自ら取り組めるまちづくりプログラムを作り上げたり,その実践に取り組んだりします。

そこで,本講義では,私自身がいろいろな地域で実践している「身近な暮らしの中で取り組む景観まちづくり」について,ビジュアルな事例写真などを用いながらその意義や魅力を解説します。

住民と学生が楽しく語らう景観まちづくりワークショップ(荒川区)
住民と学生が楽しく語らう景観まちづくりワークショップ(荒川区)
津波復興まちづくりで地元児童と制作した景観マップ(いわき市)
津波復興まちづくりで地元児童と制作した景観マップ(いわき市)

今,身近な防災を考える

担当講師:後藤 浩

日本は四方を海で囲まれています。
また,我々は水が無くては生きていけませんので,大きな河川の流れる平野にその居所をもっています。
つまり,我々の周りには水が存在します。
このため,我々は地震による津波や異常気象によって発生する洪水,高潮などの危険性にさらされています。

このような災害は,他の災害とは異なり,じわりじわりと被害をもたらすものではなく,短期間(一瞬)のできごとであるため,多くの人は危険性を実感していない可能性があります。
また,このような災害は,大きな被害をもたらす場合が多くあります。

ここでは,津波災害の危険性,洪水の危険性を紹介し,現状の対策(技術・研究)を説明したいと思います。
この話をもとにして,今後の水防災対策についてみなさんにも考えていただきたいと思います。

学校や自宅を事例にして防犯まちづくりを考えてみよう

担当講師:田中 賢

皆さんは新聞やニュースで凶悪犯罪の報道を目にして「この犯人は…なぜ?…どうして?」と考えたことはありませんか。

まちづくりでは,犯人の生い立ちや犯行の動機を考慮せず,環境に注目する「防犯環境設計(Crime Prevention Through Environmental Design:CPTED=犯罪は環境でコントロールできる)」という考えがあります。

ここでは防犯環境設計の基本を学び,自分自身だけでなく友人やまちの人々を守る術を考えましょう。
タウンセキュリティやテロ対策など最新の話題だけでなく,自分自身や友人も守れる工夫も紹介します。

女子学生をチカンから守る男子学生のキーホルダー(他人事ではなく自分事として考える)
女子学生をチカンから守る男子学生のキーホルダー
(他人事ではなく自分事として考える)
お互いの家を見守れる街並み(ロンドン)
お互いの家を見守れる街並み(ロンドン)

地震災害を軽減する

担当講師:仲村 成貴

日本は世界でも有数の自然災害多発国です。
自然災害は生活環境を一変させてしまいます。
人々が安全に安心して暮らすことのできる環境を整備するためには,自然災害にどのように対処したらよいのでしょうか。

自然災害は,地震,津波,火山噴火,雨,風などの自然現象が,構造物や人々の生活に作用することによって発生します。
つまり,自然現象を災害へと変え,被害を大きくするメカニズムは,人間社会に大きく依存しているのです。
このメカニズムを逆の面から捉えれば,人や社会の努力で災害を最小限に抑えること(減災)ができるはずです。

これまでに被った地震災害例とその対策例や,技術者による地震災害を軽減するための様々な取り組みを紹介し,減災について皆さんと一緒に考えたいと思います。

地震発生当日夜の都内の混雑
地震発生当日夜の都内の混雑
津波による被害
津波による被害
構造物の診断(斜張橋の振動実験)
構造物の診断(斜張橋の振動実験)

都市空間を“開かれた”“都市活動の場”にするためのまちづくり手法 -制度設計・仕組み・事例紹介-

担当講師:山﨑 晋

過密している都市部の中で良好な環境を確保するためには,道路や公園等の公有地だけでは十分ではなく,民有地にも地域住民や来訪者が使える空間を確保することも必要です。
しかし,民有地には当然ながら所有者がいます。都市部の地価は高く,開発や建設の事業性を考えると,そのような土地に地域に開かれた空間を作り出すことは難しい側面もあります。

さらに,せっかく空間を確保したとしても,そこが使われなければ意味がありません。
歩いたり,ベンチ等で休むだけではなく,オープンカフェやイベントが開催されると賑わいのある都市になります。しかし,そこにも様々な制約があります。

そこで本講座では,地域に開く空間を生み出す方法や,オープンカフェやイベント等の都市活動ができるような仕組みについて解説し,それらに関する事例を紹介します。
また,高校生のみなさんにも住まいや学校周辺の公開空地等の空間を探してもらい,地域に開くまちづくり手法を考えてもらう演習も可能となっています。

歩道も狭く圧迫感のある都市空間の例
歩道も狭く圧迫感のある都市空間の例
公開空地(民有地)で実施されているイベント例
公開空地(民有地)で実施されているイベント例

日々の生活を支援する工学技術のいろいろ

担当講師:依田 光正

多くの人たちは,食事や入浴など日々の生活でおこなうことに特別な不自由を感じることなく過ごしています。
このような日々の生活も,妊婦になったり,家族に小さな子供がいたり,病気や事故,そして誰もが迎える老化によって困難になることもあります。
このようなときには,いろいろなかたちで支援を受けることになりますが,その支援をできるだけより良いものにする方法が工学技術にもあるのです。

これには3つのアプローチが考えられ,
1.体面を支援する工学技術:例えば,障がいがある動作や機能を補う機器の技術
2.知的な面を支援する工学技術:例えば,認知症の予防や認知症になってしまった人に対して支援をおこなう機器や用具の技術
3.生活の環境を支援する工学技術:例えば,支援を必要とする人に適した生活環境に改善する技術ならびに支援をおこなう人を助ける技術
などに分けられます。

それぞれは,図のようなイメージで互いに関連しながら支援を必要とする人を支えていきます。
ここでは,これら3分野の技術例を紹介しながら,支援のための工学技術の全体的な方向性を示します。

魅力あるまちを創る「ランドスケープ」という手法ーみどりと観光からのまちづくりー

担当講師:押田 佳子

近年,観光立国に向けかじ取りを進めてきたわが国では,国内外からの来訪者が急増する一方で,一部の人気観光地において過剰な観光客の集中による弊害「オーバーツーリズム」が生じる事態となりました。
具体的な事例として,自然観光地においては踏みつけや騒音により自然環境が損なわれ,歴史観光地においては混雑や交通渋滞,地域住民のプライバシーの侵害などが挙げられます。
このように,観光は地域の魅力が資源となり活性化をもたらす一方で,過剰になると地域に負荷をかける恐れも持ち合わせています。
オーバーツーリズムは,ただ混雑するなどの不便が生じるだけでなく,地域の魅力を損なうことに繋がります。
コロナ禍においても,オーバーツーリズム観光地は従来の人気やアクセス性の良さから,比較的観光客の戻りも早く,今後持続可能な観光を進めるためには,地域の許容量に合った観光客数,ツアー数などを設定する必要があります。

以上をふまえ,この講義では,日本有数の自然や歴史を観光資源とする観光地が,持続可能な観光を維持するために取り組んできたまちづくりを中心にご紹介します。

日本有数のオーバーツーリズム観光地に挙げられる鎌倉。問題解決に向け、様々な取り組みがなされている。
日本有数のオーバーツーリズム観光地に挙げられる鎌倉。問題解決に向け,様々な取り組みがなされている。
小笠原諸島にある無人島「南島」。オーバーツーリズムによる生態系破壊を避けるため、1日100人までの入島制限を設けている。
小笠原諸島にある無人島「南島」。オーバーツーリズムによる生態系破壊を避けるため,1日100人までの入島制限を設けている。

デザインの力で“まち”に賑わいを生み出す

担当講師:落合 正行

住み開きによる“まちなか”シェア空間


2000年代に入り,日本社会はシェア(共有)の時代に入ったといわれ,あらゆるものを人々と共有することで,新たな価値を生み出すデザインが重要となっています。

そのひとつに,住まいの一部を“まち”に開き,自らコミュニケショーンの場として公共化する活動として「住み開き」が注目を集めています。

私自身も「住み開き」を実践していますが,こうして生み出された空間は,趣味や憩いの場を超えて,地域交流の場にまで発展するとともに,“まち”に賑わいを生み出すという点で,まちづくりへの応用が期待されています。

みなさんも,“まちなか”シェア空間のデザインについて学んでみませんか?

地域課題を解決する“再生可能エネルギー”を活かした 環境・防災まちづくり

担当講師:田島 洋輔

米国主催の気候変動サミットにおいて2050年までに脱炭素社会の実現する方針の公表を受けて,再生可能エネルギーが普及しておりますが,ここにきてその動きはますます活発化する方向にあります。
その背景には,これまでの気候変動問題への対応という従来型の動機のみならず,再生可能エネルギーを活用した地域課題の解決という“まちづくり(地域活性化)の視点”が存在するためです。

まちづくりで重要なのは,地域に潜在する個別具体の課題を整理・抽出し,それらを如何に解決して,持続的で住みやすいまちを創出するか,を考えることです。

こうした中で再生可能エネルギーを単なる“化石エネルギー源の代替”として捉えるのではなく,再生可能エネルギーを活用して,多様な地域課題を解決することはもちろんのこと,行政や企業,住民等のさまざまな立場から新たな価値を見出すことが重要となります。

そこで本講義では,以上の視点から単なる再生可能エネルギー施設の導入ではなく,地域課題の解決に加え,“地域の魅力向上”や“既存産業の活性化”,さらには,“災害時の電源供給”などに寄与する地域に寄り添った再生可能エネルギーの役割や地域との関係性についてご紹介します。