電波を見る

担当講師:大貫 進一郎

人間の目では直接見ることの出来ない電波を,我々は日常生活のいたるところで使っています。
携帯電話やゲーム機などはデータ転送に,地中探査レーダや電波望遠鏡などは対象物の認識に電波を利用している例です。
これら電波を使った技術の開発では『見えない電波を見ること』,すなわち,シミュレーションによる可視化が重要な役割を担っています。

シミュレーションは,様々な条件に対する解析をコンピュータ上で行うことができるため,実社会のいろいろな場面で活用されています。
波動信号処理の分野においても,アンテナ解析,光デバイスの設計,回路のパッケージングなどにシミュレーションを利用しています。

この講義では,見えない電波の振る舞いを,シミュレーションにより解き明かします。

光・波動情報技術が拓く未来

担当講師:尾崎 亮介

近年,地球温暖化現象の悪化により異常気象によるゲリラ豪雨や集中豪雨等から発生する水害など地球環境問題は,私達の日々の生活を脅かす深刻な課題となっている事が指摘されています.

これに加え,高度経済成長期に建築された道路やトンネルなど50年もの歳月が経過した構造物は,相次いで発生した路面陥没事故などインフラの老朽化が社会的な問題となり異常箇所の早期発見や検出が火急の課題となっています.

一般的な地下構造は,私達の生活インフラを支える水道管,ガス管,通信ケーブルなど様々な埋設物が埋められています.
一見,土木工学のように感じるかもしれませんが,電気工学(特に光技術や波動情報処理技術)を利用することによって一般的な地下構造物の内部を可視化してみることができます.

本講義では,このような地下構造物に関する光や波動情報技術について紹介し,そのコンピュータシミュレーション技術によって解析した一例を説明します.

またこれからの光・波動情報技術が拓く将来についてもお話ししたいと思います.

シミュレーションでみる量子カオスの世界

担当講師:佐甲 徳栄

「ブラジルの蝶のはばたきが,テキサスで竜巻を引き起こすか」――。
そんな比喩で語られる「初期値鋭敏性」は,カオスと呼ばれる現象の大きな特徴です。この予測不可能な複雑さは,化学反応や二重振り子,気象など,私たちの身近な物理現象の中に広く存在しています。 
では,原子や分子が躍動する「ミクロの世界」にも,カオスは存在するのでしょうか。数学的には,カオスが生じるには方程式が「非線形」である必要があります。しかし,ミクロの世界を記述する量子力学の基礎方程式は「線形」であり,理論上はカオスが起こらないはずなのです。

本講義では,二重振り子の量子版である分子振動のシミュレーションを通じて,量子世界に潜む複雑な振動の不思議を解説します。

二酸化炭素分子の対称伸縮・変角振動モードの波動関数
二酸化炭素分子の対称伸縮・変角振動モードの波動関数

海のエネルギーから電気をつくる

担当講師:塩野 光弘

私たちが普段当たり前に使っている電気が止まったとしたら・・・あなたはどうしますか?

電気は水や空気と違い発電して使うものなのです。
現在,発電するためには,火力・原子力・水力発電がありますが,火力発電は化石燃料が必要です。また,燃料を燃やすと地球温暖化が進みます。
そのため近年,風力発電や太陽光発電など自然エネルギー(再生可能エネルギーともいう)を利用した発電が導入されてきています。
自然エネルギーは,ほかにもあります。日本を取り巻く広い海にはいろいろなエネルギーが存在します。波力,海流,潮流,潮汐,海洋温度差,海洋濃度差などなどです。昔からこういった海洋エネルギーを利用しようと考えられてきました。
しかし,技術開発は進んでもなかなか導入されません。なぜでしょうか。それは,発電するための燃料はタダでも発電システムにお金がかかるからです。
しかし,このままでは化石燃料は枯渇してしまいます。あなたも化石燃料に頼らない環境に優しい新しい発電方法を考えてみませんか。

この講義では,海洋エネルギーの利用技術と開発の現状について分かりやすくお話しします。

写真:潮流発電装置(○印内)
写真:潮流発電装置(○印内)

光技術を用いた測定

担当講師:篠田 之孝

光を用いた測定の最大の利点は非接触で行えることです。光を用いて何が測れるか?

我々は光を眼で見ることで物の有無,識別など多機能な測定を行っています。
人間の感覚は非常に優れていますが,正確な物理量の測定を行うには残念ながら適しているとは言えません。物理量を測定するときには基準が重要になります。

例えば,ナノメートル(10-9m)の領域の移動量(長さ)の測定はレーザの波長を基準として行っています。また,長距離の測定は光の速度を基準として行っています。
道路の測量のときに見かける距離測定も最近では光を用いていますが,何を基準としているのでしょうか。
また,近年,光ファイバを用いた測定も各種開発されています。光ファイバを人の身体の神経のように構造物に張り巡らし,構造物の健全度を測定するヘルスモニタリング技術も盛んに研究開発されています。

ここでは,光の特徴を利用した測定技術を紹介したいと思います。

「電波」で物を見る–「ミリ波レーダ」による物体検知を体験しよう–

担当講師:戸田 健

「ミリ波」という言葉はご存知でしょうか.高校物理の教科書に出てきますが,電波(電磁波)の一種類で波長がミリ単位(1~10 mm)というだけで,高校生の皆さんはそれ以上はあまりご存知ないかもしれません.

では「ミリ波レーダ」はどうでしょうか.自動車に興味がある学生であれば知っているかもしれません.
自動車の衝突回避やクルーズコントロール(車両追従)の支援技術として近年実用化されています.また2019年10月スマートフォンでは初めてGoogleの「Pixel4」に実装されました.スマホに触れることなく手の動き(ジェスチャ)で操作をするためです.

またミリ波は光や赤外線に比べ物質の透過率が高く,建材や衣類等の他に,ちり,霧,雲,雨を透過する性質を利用して,悪環境での安全交通支援に利用されています.また波長が短いことから細かい反射を捉えることができるため,近年空港やイベント会場の保安検査場にて武器や爆発物の危険物検知用ボディスキャナとして開発が進められています.
さらにまた心拍や呼吸といった健康状態を非接触で見守る技術や,心拍波形に個人の特徴があることから個人認証技術への応用など身近なところに応用される研究が進んでいます.
ミリ波は波長が短いためアンテナなど電気回路がミリサイズで小型化できることからセンサとして今後様々な用途での利活用が期待されます.

本講義では,これらのミリ波の特徴やミリ波レーダの仕組み,様々な応用技術を解説した後,私達の大学で研究開発を行なっているミリ波レーダによる「自転車安全走行支援」や「心拍測定」について紹介します.
また実際にミリ波レーダを用いて物体の測位や動きの検知を体験していただきます.

常識を超えている!電子デバイスの世界を覗いてみよう

担当講師:松田 健一

皆さんが普段使用している電気・電子機器の大半は,電子が持つ電荷を利用しています。
これはエレクトロニクスと呼ばれ,現代社会では必要不可欠な技術になっています。一方で,エレクトロニクス製品は,消費電力が肥大化しているなどの問題点も指摘されるようになり,新しいデバイス技術の誕生が待ち望まれています。

電子には電荷のほかに,電子自身の自転に対応する自由度「スピン」というものが備わっています。
「スピン」はそれ自体,小さな磁石とみなすことができ,最近では,このスピンの性質を積極的に活用したエレクトロニクス,すなわちスピントロニクスが,注目されるようになってきています。
本講義では,このスピンを利用したデバイスとしてどのようなものが研究されているのか,またそれに関連して新しく発見されつつある様々な興味深い現象をお話ししたいと思います。

既にスピントロニクス技術が活用されているものの例として,パソコンなどに搭載されているハードディスクがあります。
ハードディスクには,様々な情報が磁気的に書き込まれていますが,この情報を読み書きするのには,図に示すような強磁性トンネル接合デバイスというものが使われています。「スピン」は小さな磁石のようなもので,そのスピンの向きが,ディスク上の磁気情報と関連して変化することを敏感に察知するデバイスです。このデバイスの出現のおかげで,ハードディスクの容量は,この20年余りの間に約100万倍になり,また著しく高速になったのです。

講義では,他にも様々な応用についてお話しする予定です。

南極・昭和基地における再生可能エネルギーの活用

担当講師:西川 省吾

大量のエネルギーが消費された20世紀に対し,21世紀は「環境の世紀」とも言われています。
また,世界的に二酸化炭素の削減率を取り決めた「京都議定書」が正式にスタートし,明るい将来を作るためには世界中の人々が環境に対する強い意識を持ち,地球温暖化防止のために努力する必要があります。地球温暖化防止の一つとして,太陽エネルギーを利用して電気を作る「太陽光発電」は,有望な対策技術の一つといえます。太陽電池は少し前まではたいへん高価なため,一般の人はほとんど見ることができませんでしたが,最近はテレビCMにも登場し,屋根に太陽電池を載せている住宅が少しずつ見られるようになっており,ずいぶん身近な存在になってきています。

しかしながら,これだけ普及してきたにも係らず,意外と太陽光発電の実態が知られていないようです。
また,太陽光発電は今後もまだまだ進歩し続けていく可能性を充分に秘めており,夢のある技術といえます。

ここでは,太陽光発電の基本的な内容から,一般にはあまり知られていない太陽光発電独自の技術,未来の太陽光発電について分かりやすくお話しします。

(独)NEDO技術開発機構委託研究「集中連系太陽光発電システム実証研究」

超音波で金属と金属を接合する

担当講師:淺見 拓哉

超音波といえば,モスキート音に代表されるような人の耳に聞こえない音のことです。
この音は,人の耳に聞こえないので高出力で用いても騒音が発生しません。その超音波を高出力で用いた技術の1つとして金属と金属を接合するものがあります。この技術は,空気を伝搬する超音波を利用するのではなく,金属を伝搬する超音波を利用したものです。現在,超音波による金属の接合は,大きなものでは自動車,小さなものではCPUの製造に利用される技術です。

この講義では,まず超音波の特徴,発生方法から超音波を用いた金属の接合について簡単に説明します。

音が目の前に現れる–情報技術と融合したオーディオシステム–

担当講師:大隅 歩

音楽を聴くときに用いるスピーカですが,このスピーカには実に多くの種類があります。
このスピーカの中には超指向性スピーカと呼ばれるものがあり,近年の情報技術と融合して様々な場面でオーディオシステムとして使用されるようになりました。超指向性スピーカとは,非常に狭い範囲のみに音が聞こえるように開発されたスピーカで,超音波を使用しています。このスピーカを用いると,騒音問題となっている夜遅くの駅構内アナウンスを乗車する人のみに聞かせることが出来たり,美術館のような静けさが求められる場所でも隣の人に聞こえないように展示品のアナウンスを聞くことが出来たりします。
実は,すでに皆さんも体験したことがあるのではないでしょうか。
また,聴くことを目的としない面白い利用方法もあります。(それは講義を楽しみにしてください)

この講義では,そのような超指向性スピーカの原理や構造,応用技術などを紹介していきます。

●一般的なスピーカの聞こえ方
●一般的なスピーカの聞こえ方
●超指向性スピーカの聞こえ方
●超指向性スピーカの聞こえ方
●超指向性スピーカの外観
●超指向性スピーカの外観