シミュレーションでコンピューターを使い倒す

担当講師:岸本 誠也

コンピューターシミュレーション技術は,情報処理・情報工学などに分類される技術です。
具体的には数式表される物理現象を,コンピューターでどのように計算するかという分野です。モノを作らずに様々な条件下で実験や検討が可能になり,目で見えない現象を可視化することなどができるため,モノづくりの現場ではもちろん,学術的にも物理現象の理解を助けるツールとして使われます。
ただ,コンピューターの計算速度が高速になっても,コンピューターを動かし続ける時間は数時間から数日程度必要になる場合があります。この時間を削るためには,コンピューターの持てる力のすべてを使う必要があります。

この講義では,コンピューターで物理現象をシミュレーションするとはどういったことなのかという導入から,シミュレーションを使った応用例やシミュレーション技術の高速化について説明します。

ゴールドの科学(局在表面プラズモン共鳴)

担当講師:胡桃 聡

皆さんがゴールド(Au)と聞いてイメージするものは『金閣寺』や『金塊(お宝)』といった『黄金色』のものだと思います。
それに対して私たちの研究グループで注目しているのが『赤・緑・青色』のAuです。これは『局在表面プラズモン共鳴』によるもので,Auが数十ナノメートル(1ナノメートル:10億分の一)程度のナノ微粒子になると特徴的な光吸収を発現します。
一般的にAuナノ微粒子は局在表面プラズモン共鳴によって波長550ナノメートルの緑色の光を吸収し,赤色に見えます。この現象のオモシロいことは,複数のAuナノ微粒子がナノスケールで近接したり,形状が変化したりすると,光の吸収波長が550ナノメートルよりも大きくなることです。これによってAuが緑色や青・紫色に見えるようになります。

私の出張講義では,局在表面プラズモン共鳴によって様々な色を持つAuを紹介するとともに,原子間力顕微鏡によって実際に撮影したAuナノ微粒子の画像と色の相関関係について講義します。
またAuナノ微粒子の生成方法として,私たちの研究室で採用している『パルスレーザー堆積法』について説明します。そして局在表面プラズモンによって期待される最新の科学技術と,これが切り開く未来について紹介します。

パルスレーザー堆積装置の写真。これによってAuナノパーティクルを基板上に堆積させる。
パルスレーザー堆積装置の写真。これによってAuナノパーティクルを基板上に堆積させる。
私たちの研究グループで作製した試料。Auナノパーティクルが基板上に堆積されていて,実験条件によって試料の色が異なる。1枚の基板のサイズは縦10mm,横10mm,厚さ1mmである。
私たちの研究グループで作製した試料。Auナノパーティクルが基板上に堆積されていて,実験条件によって試料の色が異なる。1枚の基板のサイズは縦10mm,横10mm,厚さ1mmである。

スマートデバイスで開く新たな理科実験の可能性

担当講師:星野 貴弘

近年,スマートフォンをはじめとするスマートデバイスは私達の生活に欠かすことのできないものとなっています。
教育の分野においてもスマートデバイスなどのICTを効果的に利用することが推進されてきていますが,多くの学校で効果的に利用されているとは言い難い状況にあります。理科教育では,実験ツールとしてのスマートデバイスのセンサ技術の利用が注目されてきています。

スマートデバイスには加速度センサが内蔵されており,このセンサ情報と周辺機能を利用した実験支援ソフトウェアを開発することでこれまでにない物理実験が可能になります。

本講義では,スマートデバイスに使われているセンサ技術を簡単に紹介した後,当研究室で開発した物理教育用の実験ソフトウェアの機能とその効果的な利用方法についてご紹介します。

車窓から眺める計測技術

担当講師:松村 太陽

世界の鉄道と比較し秒単位の正確さで運転している日本の鉄道は,今や毎日の通学や休みの旅行の際,私たちにとって大切な足となっています。これは同時に,時間どおりに走ること,一度に多人数が移動できること,安全であることが当然であることを意味しています。

そんな鉄道を工学者の観点から見てみると,電気,機械,土木,建築などの複数の分野が協力し支え合う,巨大なシステムとなっています。一つ一つの分野を見てみると,いずれも大量輸送,高速性,定時性を確保する為に,安全と信頼というキーワードが必須事項となっています。

これらのキーワードを実現するためには,先ずは現状を知ることから始まります。列車はどこにいるのか。信号は何色か。装置は安全に作動しているのか。ここで各分野と協力しあい活躍するのが,計測技術です。

本講義では,鉄道における計測技術に注目し,安全に対する立場や視点,設計思想,人と装置の主従関係,システムとしての安全確保,自動化,情報利用について,実例を交え具体的にご紹介致します。

コンピューターに物を見させる

担当講師:門馬 英一郎

今,デジタルカメラやスマートフォンには「ヒトの顔」を見付ける機能が搭載されています。
では,どのように探しているのでしょうか?実は,これらの機器に搭載されているコンピューターは「ヒト」も「顔」も探していません。それどころか「顔」を構成する「目」も「鼻」も「口」も探していません。

一方で,私達が「ヒトの顔」を見付けるのはとても簡単です。遠くからでも「ヒト」を見付け,頭の位置にある「顔」を見付けられます。また,「^-^」のような記号や,汚れた壁のシミや木目などの模様からも「目」や「口」などのパーツから「顔」を見付けてしまいます。

「ヒトの顔」を例にしましたがコンピューターに「物」を見させるには私達とは全く違った考え方が必要になります。
このような話を含めた画像処理の話を皆さんにお話ししたいと考えています。

電気と未来のエネルギー

担当講師:直井 和久

日本国内における電力供給は,東日本大震災以降,原子力発電の停止により海外からの化石燃料に大きく頼ることになり,その依存度は過去最高の水準にあります。

これにより,一次エネルギー(石炭,原油,天然ガス,再生可能エネルギー,原子力,水力)の自給率は大きく低下し,先進国の中で最も低い水準となっています。

また,化石燃料への依存度が高まることにより電気料金は大きく上昇し,諸外国と比較して日本の電気料金は高く,特に産業部門での国際競争力の悪影響が懸念されています。さらに,原子力発電所が停止し,化石燃料による発電に依存していることから,二酸化炭素の排出量は増加しています。

これらの我が国が直面する「経済成長(Economy)」,「資源・エネルギーの安定確保(Energy)」,「環境保(Environment)」の3Eによる制約(トリレンマ問題)が,私たちの生活にどのような変化をもたらすか考えてみましょう。

再生可能エネルギーから効率的に電気を作り出す技術

担当講師:辻 健太郎

現在日本では,エネルギーミックスの確実な実現へ向けた取り組みの更なる強化を行うとともに,エネルギー転換・脱炭素社会の実現に向けての作業が進んでいます。そのような状況下において,日本に限らず現在世界中で再生可能エネルギーを用いた発電システムの研究が進んでいます。

本講義では再生可能エネルギーの一種である海洋エネルギーの内,潮流,波力エネルギーを用いた発電システムおいて,効率的に電気を作り出す方法について講義いたします。
潮流エネルギーは周期的に流れの速さと向きが変化し,波力エネルギーも不規則に変化します。したがって,どちらも発電機への入力エネルギーが時間に対して変化します。このため,入力エネルギーが変化しても発電機が常に最大効率で運転出来るように制御を行う必要があり,この制御システムについてわかりやすく講義いたします。

四方を海に囲まれた日本にとっては貴重な再生可能エネルギーの一種である海洋エネルギーによる発電システムについて理解を深めてみませんか。

制御システム