コピー機の文字のにじみ防止用の静電気センサーをつくる

担当講師:芦澤 好人

コピー機に代表される電子写真では,文字を形成するために,静電気を利用して数マイクロメートルの大きさのトナーを並べています。静電気で文字を作り,そこにトナーをくっつけるのです。

しかし,静電気で書いたつもりの文字が本当に書かれているか確認する方法はありません。
実は静電気の計測は簡単ではありません。測定物が接触すると静電気が逃げてしまうだけでなく,測定物を近づけただけでもときにはバチッと放電してしまうためです。直接測定することができないため,静電気の文字がかすれていたり,にじんでいたりしても,トナーをつけるまではわからないのです。

そこで,私達は直接静電気の文字を確認できる方法を研究しています。
大気中で,非接触で,放電することなく,かつ,高電圧の静電気を数マイクロメートルの寸法で観察することのできる静電気力顕微鏡を作製しています。より高感度に,そして簡便に計測できる静電気力顕微鏡の実現を目指しています。

大気圧中,非接触,高分解能で高電圧の電位測定が可能な静電気力顕微鏡

ナノ領域の情報を得る超微細センサーをつくる

担当講師:芦澤 好人

コンピューターでは,ハードディスクと呼ばれる磁気ディスクに情報を記録しています。
円板状のディスク上にある,小さな磁石のN極とS極の方向で,“1”,“0”に対応する2値の情報を記録しています。

インターネットが普及し,クラウドサービスを誰もが利用する近年,ハードディスクにおけるさらなる大容量化が求められています。
同じサイズのディスクに対して大容量化するということは,すなわち,一つの情報を記録する面積を小さくすることを意味します。これは,情報を記録,再生する磁気素子や磁気センサを記録領域と同程度まで小さくする必要があることを意味します。また,サイズが小さい分,より高感度なセンサが要求されます。

私達は,電子線を用いる描画装置で数十ナノメートルの素子を形成,電子顕微鏡で観察し,より良いセンサの作製を目指しています。近接場光,表面プラズモンを用いてナノメートル領域の情報を読み取れる磁気センサーの実現を目指しています。

ハードディスク
ハードディスク
表面プラズモンの伝搬
表面プラズモンの伝搬

省エネ・省電力の決め手:究極のナノ構造電子デバイスをつくるA

担当講師:芦澤 好人

現在の私達の生活の中には,モバイル電子デバイスが当たり前に普及しています。
携帯電話やディジタルカメラ,ゲーム機などのバッテリの残量をいつも気にしているのではないでしょうか?バッテリを大きくすると重くなってしまいますね。これまで電子デバイスには,便利に使うために高速処理,高密度記録が要求されてきましたが,モバイルで使用することを考えると,小型,軽量で,低消費電力であることが重要になってきます。今後,ウェアラブル端末や,環境発電でも動作可能な微小消費電力デバイスなどが台頭してくることが予想され,ますます重要度が増しています。

ナノサイエンス・ナノテクノロジーは,ナノメートルという非常に小さなサイズで発現する現象であり,それを活用する技術です。
私達の知るサイズではなしえない高効率化を,ナノテクノロジーを用いて実現することを目指しています。真空装置を使って極薄の人工的な薄膜構造を作製し,電子線リソグラフィを使って微小なパターンを形成することで,新しいナノ構造デバイスを創製することが可能です。

微細パターンの例
微細パターンの例

原子・分子をあやつり新しい応用物理分野を創造する

担当講師:岩田 展幸

1986年に酸化物高温超伝導体が発見されてから,酸化物薄膜の作製技術が飛躍的に向上した。現在では原子1層ごとに堆積制御することも可能である(図1)。この酸化物は,現在の電子デバイス技術をSi系半導体と比較すると,格段に機能が豊富である。

酸化物は機能性の宝庫である。予想もつかない現象も観測される。
例えば,材質の異なる両者とも電気を流さない絶縁体同士を原子レベルで接着させると,金属になり,抵抗ゼロの超伝導の性質さえ示す。我々は磁性原子を用いて原子レベルで様々な酸化物を組み合わせ,自然界には存在しない人工的なナノ結晶薄膜をデザインし作製することで,超低消費電力の不揮発性メモリを開発している。
さらに,特異な現象の物理的起源を観測する装置と作製装置とを融合することで,迅速に「物理」と「応用」を直結し「新しい応用物理分野」を創造することを実践している。
この手法の応用は無限にあり,50年先の先端電子技術を牽引している。

図1:パルスレーザー堆積法を用いた装置の模式図。原子レベルで制御しながら成膜する場合,電子線を用いる。電子線を「薄膜」を堆積する「基板」に照射し,その反射光強度を測定する。薄膜が「1層」「2層」・・・と堆積していくと,その反射強度は振動を繰り返す。さらに特殊な作製法を用いて,自然界に存在しない人工的なナノ結晶構造を作製することができる。

紙のように軽くて薄く曲げられるテレビ,コンピュータをつくる

担当講師:岩田 展幸

有機物・有機分子は,これまでエレクトロニクスを支えてきたSi半導体(無機物)と異なり,有機分子1つで様々な機能を発現します。この機能は,電気を流す金属や半導体・絶縁体,光を吸収するフィルター,発光素子(LED)等,様々です。

さらにサイズはナノスケールであり,曲げられる特徴を持っています。よって,紙やプラスチックに回路を作り込めば,手軽に持ち運べるテレビやパソコンが作製可能となります。未来の情報化社会を牽引する次世代の電子機器となります。

我々は,現在,単層カーボンナノチューブ(SWNT) (図1)を究極に小さい極微細トランジスタや超高精細LEDやTVに応用すべく研究を行っています。

究極に小さい極微細トランジスタ(図2)は超高速・超低消費電力・超高密度の3つの先進的な特徴を持っています。紙やプラスチックに作り込めば(図2),もはやパソコンを持ち運んでいることすら忘れていまうでしょう。また,超高精細TV応用として,例えば,コンタクトレンズ型4k-TVも作製できる可能性を秘めています。

上記の研究は,日本大学理工学部に設置されている電子線利用研究施設の加速器を利用しているため,本学独自の研究です。そのため,世界初の研究成果も達成しています。

図1:単層カーボンナノチューブは、髪の毛1本に100,000(10万)本並べられるほど非常に小さな直径(約1nm)を持っています。この極微細SWNTを様々な応用に適用します
図1:単層カーボンナノチューブは,髪の毛1本に100,000(10万)本並べられるほど非常に小さな直径(約1nm)を持っています。この極微細SWNTを様々な応用に適用します
図2:ナノレベルのパソコン用素子 (究極のトランジスタ)および超高精細TV用素子
図2:ナノレベルのパソコン用素子 (究極のトランジスタ)および超高精細TV用素子

電子回路で脳を創る

担当講師:佐伯 勝敏

人間の脳は,学習,認識が得意で,知能を持ちます。それに対して,現在のコンピューターは,決められた通りに処理することは,得意ですが,自ら学んで処理することは非常に苦手です。

今後,例えば人間をサポートできる機械を作るためには,認識,予測,学習,記憶が可能であり,知能を持つシステムを作る必要があります。

そこで我々は,人間の脳を手本とし,電子回路を使って,脳のモデルを作り,ICチップに搭載し,人工知能を構築することを目的として研究を行っています。

特に,生体で確認された学習を司る現象を再現できる電子回路を提案し,ICチップ化を行い生体と定性的に同様な特性が得られることを確認しています。このモデルをネットワーク化することでパターン認識への応用を検討しています。

パターン認識を行うニューラルネットワーク
パターン認識を行うニューラルネットワーク
学習を行うシナプスモデルのICチップ
学習を行うシナプスモデルのICチップ

高性能VLSIを設計する

担当講師:佐伯 勝敏

身の周りの携帯機器やコンピュータといった機器には集積回路が多く用いられ,いかに小さいサイズで高いパフォーマンスを発揮するかが重要となります。

しかし,回路の集積化が発達した現在,回路面積をさらに小さくすることが難しくなってきています。

そこで,集積回路を縦方向に積み上げることで面積を削減し,パフォーマンスの向上を図ることが可能となります。 左下の図は,上下の集積回路間で無線通信を行うためのアンテナを示しています。

また,超短距離通信アンテナを用いることで,集積回路間だけでなく各種センサと信号処理部分との接続も可能となります。

我々は集積回路の微細加工技術を用い気体センサを作製しており,超短距離無線通信技術を用いることで劣化したセンサの交換も容易となります。

地雷探査用匂いセンサーをつくる

担当講師:佐伯 勝敏

地雷探査を行う場合に,地中に埋まっていても,地雷に含まれる火薬からある特定の気体が発生しています。現在では,犬の嗅覚を用いて気体を判別していますが,より安全に行うために匂いセンサーの開発を行っています。匂いセンサーを用いて地雷に含まれる火薬から発生している気体を判別することで,より安全に地雷探索が行えます。

匂いセンサーは,携帯やテレビに用いられている電子部品であるSAWデバイスに,新幹線や道路標識等に用いられている顔料の1種類である金属フタロシアニンを用いて,作成をしています。この匂いセンサーは,金属フタロシアニンによって,地雷から発生する特定の気体を吸着し,SAWデバイスによって吸着した気体の濃さや種類などの測定が行えます。

また,匂いセンサーは,地雷から発生する気体だけではなく,口臭内から発生する病的な匂いを判別することで,病気の早期発見を行うことや,室内で発生する人体に悪影響を及ぼす気体を判別することで,快適な環境づくりを行うことができます。

ニューラルネットワークで四足歩行ロボットを制御する

担当講師:佐伯 勝敏

人間や動物の歩行,水泳,飛行などのリズム的な運動は,脳からではなく,CPGにより発生,制御をしてます。
CPG (Central Pattern Generator) は,人間や動物の脊柱における神経回路(ニューラルネットワーク)です。このCPG の機能をロボットに応用することで,不整地に対し,自律的に適応するロボットが作成可能であると考えられます。
そこで,我々は人工知能を持つ四足歩行ロボットを開発するため,CPGの電子回路化の研究を行っています。

下の写真は,CPGモデルを用いた四足ロボットの一例です。CPGモデルから生成した信号でロボットの各足を制御します。更に,足裏の感圧センサーの並列処理により,ロボットを不整地に対し自律的に適応させます。

我々は,不整地に対し,自律的に適応する人工知能を持つ四足歩行ロボットの構築を目指して研究を進めています。

歩行制御回路を実装した四足歩行ロボット
想定しているCPGモデルを用いたロボット制御

ヒューマノイドロボットを創る

担当講師:佐伯 勝敏

部屋の明かりをつけたり,ホテルの受付をしたり,話相手になったり・・・。人間社会に寄り添う形で様々なロボットが開発されています。中でも,ヒューマノイドロボットは,より深く人間社会に溶け込めるロボットとして,多くの研究・開発が行われています。

我々の研究室では,脳を創るということを目的に,電子回路による人工知能の構築に関する研究を行っています。その一つのアプリケーションとして,ロボットに搭載することで,ヒューマノイドロボットの歩行制御について検討を行っています(右図はヒューマノイドロボットの歩行制御に用いる集積回路です)。

我々は,手を使った動作の制御,視覚情報の制御,感情を取り込んだ優先順位の制御・・・etc.も可能な脳型情報処理システムの構築に向け,研究を進めています。

電子回路
ヒューマノイドロボットを創る
ヒューマノイドロボットの歩行制御を行う集積回路
ヒューマノイドロボットの歩行制御を行う集積回路