ニューロン間の情報処理を解き明かす

担当講師:佐伯 勝敏

近年,生体の情報処理機構を解明し,工学的に応用しようとする研究が行われています。それらの研究は脳の機能を実現するだけでなく,脳の中で情報処理がどのように行われているのかを解き明かすための手段として有効であると考えられています。

脳はニューロンにより構成されており,ニューロンの集合であるニューラルネットワークにより人は情報処理を行っています。

そこで我々は,ニューラルネットワークを集積回路で構築し,生体の情報処理がどのように行われているのかを調べるために,脳の中の基本構成要素であるニューロンモデルの構築を行っています。

電波とアンテナ入門

担当講師:三枝 健二

携帯電話,無線LAN,電子レンジ,地上デジタルテレビ,GPS,ETCなど,電波はいろいろな目的で利用されており,我々の生活を便利にしている。
電波はこのように,我々の身の回りのいたるところに存在している。しかし,電波は目に見えないため,普段の生活ではその性質を捉えにくい。

本授業の目的の一つは,電波の理解である。電波はどのように発生し,どのよう伝わっていくかなど基本的な性質について理解する。
次に授業の第二の目的として,電波を放射し,または電波を受信するのに必要なアンテナについて理解する。アンテナはどのように電波を放射し,受信しているのだろうか。また,八木・宇田アンテナ,パラボラアンテナなど,身の回りを見てみるといろいろなアンテナが使用されていることに気が付く。

アンテナは使用目的によっていろいろな種類がある。アンテナとして必要とされる性能とは何だろうか。これらの点から,アンテナの基本性質を理解する。

電波のイメージ図

宇宙放射線からコンピューターを守る

担当講師:高橋 芳浩

コンピューターにおける計算および情報記憶は,そのほとんどが半導体集積回路デバイス(LSI)により行われています。この半導体デバイスは非常に高い信頼性を有しており,今やコンピューターの計算結果を疑う人はいないと思います。

コンピューターは地上だけでなく,人工衛星などに搭載され宇宙でも活躍しています。ただし,宇宙は過酷な放射線環境であり,半導体デバイスに宇宙放射線が当たると,一時的に誤動作を起こしたり,永久に機能を失ってしまうことがあります(1 + 1 = 3 になる!?)。

我々は,放射線が半導体中で引き起こす影響を解明するとともに,宇宙空間でも地上同様,正確に動作する高信頼性半導体エレクトロニクスの実現を目指して研究を進めています。

宇宙放射線環境
宇宙放射線環境

1兆分の1秒のモノサシで電子の世界を観察する

担当講師:塚本 新

今日,高度情報化社会の中枢をなす高速情報蓄積/処理基盤技術において,物性を良く理解しその技術的利用を達成している時間領域はナノ秒(10-9秒)オーダーです。
フェムト秒(10-15秒)という遥かに短い未踏領域の理解・制御を図ることは,近年要請が高まる超高速情報処理,新規光機能材料や超微細低エネルギー消費デバイス創生の指導原理の一つとして,また不可欠な知見として国内外で研究が活発になりつつあります。

本講義で紹介する研究では,超短パルスレーザを用いる事で,超高速磁化応答(極短時間での磁石の振る舞い)の分析を可能とし,物理的に興味深い現象を明らかにしてきております。
例えば原子・分子振動よりも短い時間で,光照射により磁石の性質を変えることが可能である事も明らかになってまいりました。これは,従来の物理ではまだ十分に説明できない現象ですが,現在の情報処理技術よりも数千倍速い新たな超高速情報処理装置を作れる可能性を示しております。

「1兆分の1秒のモノサシで電子の世界を観察する」事が未知の世界を切り拓きます。

▲フェムト秒パルス光利用 超短時間現象計測装置
▲フェムト秒パルス光利用 超短時間現象計測装置
フェムト秒って?
フェムト秒って?

超高速情報記録デバイスをつくる

担当講師:塚本 新

現在,世界の多くの情報は,ハードディスク・ドライブと呼ばれる情報蓄積装置に保存されております。
これは,堅い円盤(ハードディスク)上に無数に作られたナノサイズの高性能磁石の向きが盤面に対し上向き(1状態)か下向き(0状態)かによりデジタル情報として記憶されております。この磁石の向きを変えることが情報を“記録”する事に相当しますが,現行技術の方法では,これ以上の高速化が原理的に困難な状況まで来ております。

本講義で紹介する研究では,全く異なる“光”を用いた従来にない新原理により記録速度を数万倍に高める方法を研究しております。
その中心となる原理は,超短単一パルス光照射のみによる「光誘起完全磁化反転現象」で,2006年に国際共同研究により発見しました。従来電磁石による磁場で磁石の向きを変えていたのに対し,極短時間光を照射するのみで“磁気記録”が可能となります。このような超短時間領域(フェムト秒:10-15秒)での光-物質間作用に関する実験的知見,原理,ともに未踏領域であり,理学・工学の融合研究が求められ,様々な国内外研究者・機関との連携研究も推進しています。
全く新しい原理に基づく「超高速ハードディスクをつくる」アイデアを紹介いたします。

HDD(ハードディスクドライブ)
HDD(ハードディスクドライブ)
超短パルスレーザー利用超高速光誘起磁化反転装置
超短パルスレーザー利用超高速光誘起磁化反転装置

省エネ・省電力の決め手:究極のナノ構造電子デバイスをつくるC

担当講師:塚本 新

ナノ・テクノロジーの飛躍的進歩による,エレクトロニクスの発展により,今日の高度情報化社会を支えるITC技術がもたらされました。
これら技術革新は主に電子素子/回路の「微小化」「高集積化」という考え方により,超高速・小型・高機能・低消費電力な電子装置を作り出してまいりました。一方,ナノスケールでのモノづくりが追及された今,これ以上「微小化」し「高集積」する事で高機能化する事は困難となっています。

本講義で紹介する研究は,電気,電流を利用するエレクトロニクスと,磁石の性質を利用するマグネティクス(磁気工学)が融合した,スピントロニクスと呼ばれる「新分野」に含まれる研究です。
ナノ・スケールに置いて顕在化する,電気,電流と磁石がお互いに関係し合う新たな現象を探求,利用しようというものです。半導体メモリであるDRAMと磁気記録メモリであるHDDの良い特徴を合わせた,磁気ランダムアクセスメモリMRAMと呼ばれるデバイスや,電流により磁石を制御し記録するためのスピン・トランスファー・トルクSTTと呼ばれる現象/応用方法,自己集積化現象と呼ばれる自然が自ら進んで形作る性質を利用したナノ構造の形成等,最先端の研究や技術を紹介いたします。

▲自己集積化現象を利用したナノ粒子の配列化
▲自己集積化現象を利用したナノ粒子の配列化
▲微小スピントロニクス素子磁気・電気的評価用多環境プローバーシステム
▲微小スピントロニクス素子磁気・電気的評価用多環境プローバーシステム

電波ってなに? 電波を見る・測る

担当講師:布施 匡章

私たちの便利な生活を支えている電波.携帯電話(スマホ)や電化製品など様々なものに使われ,今や生活に欠かすことのできない大切な電波.電子レンジも電波.当然携帯電話(スマホ)も.とりわけ携帯電話は格別で,様々な種類・方式の違う電波が使用されています.
なぜそんなにたくさんの種類・方式の違うものが使われているのでしょう?

本講座では,「電波ってなに?」,「電波って見える?」など簡単な疑問から,電波のしくみ,特徴などについてお話しします.

電波のイメージ図

低ノイズ電子回路をつくる

担当講師:今池 健

近年,省エネルギー化の要求やスマートフォンのバッテリー持ち時間の増加など,いかに少ない電力で電子回路を動作させるかということが重要な課題となっています。

回路が消費する電力を下げる最も簡単な方法は,電子回路を動作させる電圧・電流を下げることですが,回路内の信号が小さくなるため,外部からのノイズによって誤動作の原因となるほか,その回路自身から出てくるノイズの影響も無視できなくなってきました。特に各種センサーなど微弱なアナログ信号の変化を取り扱う場合や,コンピュータ内部の超高速なディジタルデータ伝送において問題になります。

我々はノイズキャンセリング技術を用いて耐ノイズ性に優れた電子回路,ノイズを外部に出さない電子回路の開発をおこなっているほか,アナログ-ディジタル変換器(AD-converter)と計算機を用いた信号処理を行うことで,完全にノイズに埋もれた信号の中からノイズを除去し,必要な信号のみを抽出可能にする研究しています。
本講義では低雑音回路の設計について水晶発振器を中心に,ノイズキャンセリング手法, それを応用したセンサについて紹介します。

耐ノイズ性・耐ノイズ放射性を持った高速ディジタルデータ伝送の信号線
耐ノイズ性・耐ノイズ放射性を持った高速ディジタルデータ伝送の信号線
超低雑音水晶発振器
超低雑音水晶発振器
ノイズキャンセリング機能を持ったガスセンサ
ノイズキャンセリング機能を持ったガスセンサ

高感度MEMS水晶センサの加工シミュレーション

担当講師:今池 健

普段の生活の中で,身体の状態をみてくれたり,防災や防犯等々,我々の生活の安全性を高める道具は重要です。

検出したい内容により,必要とするセンサは,それこそ,千差万別です。

我々の生活をサポートする,正確で高機能なデバイスの一つとして水晶振動子が挙げられます。我々が研究を行っている水晶振動子を用いたQCMセンサー(QCM:Quartz Crystal Microbalance)は,数ナノグラム以下の微小質量を検出できることから生体の抗原抗体反応計測やにおいセンサーなどに使用されています。

本講義では身の回りにある水晶デバイスの紹介から水晶の歴史,最先端の水晶加工シミュレーションおよび,センサーとしての応用について紹介します。

Dual QCM センサー
Dual QCM センサー
振動子の解析モデル
振動子の解析モデル
インピーダンスおよびアイソレーション特性
インピーダンスおよびアイソレーション特性
シミュレーション結果に基づいて作製したQCMセンサ
シミュレーション結果に基づいて作製したQCMセンサ

もっと高速で途切れないスマートフォンをつくる

担当講師:今池 健

東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されている2020年に向けて第5世代携帯電話を世界に先駆けて実現するための研究が日本国内で急速に進められています。

現在の1000倍以上の高層化・大容量化を実現するために重要となる技術の一つが,電波の信号を発生させる基準となる水晶発振器の高安定化です。スマートフォンだけでは無く,電子回路には必ずと言って良いほど搭載されている水晶発振器ですが,この発振周波数が不安定だと,他の無線通信の電波と干渉を起こしたり,通信が正常におこなわれず途切れる原因となります。

我々は超高安定で正確な水晶発振器の開発をおこなっているほか,開発した発振器が本当に高精度で高安定なのかを評価するための測定器の開発もおこなっています。

本講義では高速で高安定な通信を支える水晶デバイスの紹介から水晶の歴史,最先端の発振器および,その応用例について紹介します。

水晶発振器の安定度測定評価
水晶発振器の安定度測定評価
高周波水晶発振器(465MHz)
高周波水晶発振器(465MHz)
水晶発振器の周波数安定度の測定
水晶発振器の周波数安定度の測定