実験室で宇宙を観(み)よう -実験室天文学入門-

担当講師:浅井 朋彦

宇宙にある物質のうち観測可能なものの大部分は「プラズマ」状態です。原子が電子とイオンに電離したプラズマ中では様々な現象がおこりますが,実際に宇宙空間で観測することは困難です。
そこで,天体現象を実験室で発生させそれを観測する「実験室天文学」が注目されています。

この講座では,宇宙空間で生じるプラズマ現象を再現する実験を中心に,「実験室天文学」の視点から自然科学の研究手法について理解を深めます。
自然科学は,自然現象に対して仮説を立て,観測や実験により実証していく学問です。また,独自性・新規性の高い実験研究では,実験・観測,データ解析などに関連して,理工学の幅広い分野と関わりを持ちます。
このような異なる研究分野が協働することの重要性,自然科学の進展における実験・観測の役割やその面白さについて,プラズマ物理学と宇宙物理学を例に体験的に学びます。

秒速600km以上でプラズマを衝突できる実験装置(日本大学理工学部船橋校舎)
秒速600km以上でプラズマを衝突できる実験装置(日本大学理工学部船橋校舎)

核融合からがん治療まで? プラズマとはなんだろう?

担当講師:浅井 朋彦

ダイアモンドの生成やガンの治療に利用され,自然界ではオーロラなどの天体現象を演出する「プラズマ」について,さまざまな演示実験を通して解説します。

プラズマは,物質の第4状態とも言われ,一般に高温で発光し高い反応性を持つなど,気体のような物質の他の状態にはないさまざまな特徴をもっています。
この講義では,たくさんの演示実験や参加型の実験を通してプラズマを体験的に学習します。また,それを通して,温度やエネルギーの概念,静電気力や電磁力,太陽風やオーロラなどの天体現象,プラズマの反応性やその応用などについて解説します。

大気中でのアーク放電実験
大気中でのアーク放電実験
白熱電球でつくったプラズマボール
白熱電球でつくったプラズマボール
電場で引き延ばされる炎
電場で引き延ばされる炎
手で触れる“1万度”のプラズマ
手で触れる“1万度”のプラズマ
実験室で再現されたオーロラ
実験室で再現されたオーロラ

分光器をつくって光の性質を探ろう

担当講師:浅井 朋彦

最も身近な物理現象の一つであり,理解の難しい「光」の回折や干渉といった光の性質について,ペーパークラフトで分光器を製作し,実際に観察を行うことで理解を深めます。

講座では,おもに波動性を中心とした解説を行い,つぎに実際に分光器を製作し,白熱電球や蛍光灯,放電プラズマなど様々な光源を観察します。この観察結果を元に,各光源の発光のメカニズムについて解説し,その違いや共通点について考察します。

また,分光した観測結果について,パソコン上でのデータ解析などに挑戦することもできます。

製作した分光器
製作した分光器
分光された蛍光灯の光
分光された蛍光灯の光
パソコン上での解析結果
パソコン上での解析結果

超新星で探る宇宙の膨張速度

担当講師:岩本 弘一

宇宙は約137億年前に起きたビッグバン(大爆発)以来今日まで膨張を続けてきたと考えられています。
その膨張速度を表すハッブル定数Hoを正確に決定することは,宇宙の年齢を知ることに対応し,現代天文学の最重要課題の一つです。宇宙の膨張速度を求めるには,遠い天体までの距離とその天体が遠ざかる速度を知ることが必要です。太陽のような恒星が進化の末に到達する白色矮星(はくしょくわいせい)という星が大爆発をおこす現象をIa型超新星といいます。

この超新星はどれも同じ明るさで輝くので,みかけの明るさから超新星までの距離を測定することができます。
これを利用して,最近では,非常に遠方の超新星の距離が測定され,宇宙膨張の速度や速度の変化率(加速度)が正確に求められるようになりました。
その結果,現在の宇宙では,膨張を加速させる「真空のエネルギー」の効果が,減速させる重力の効果を上回っていて,加速膨張していることが明らかになりました。

宇宙の大きさの時間変化
宇宙の大きさの時間変化

脳の中を物理学で見る

担当講師:小松﨑 良将

記憶や学習をはじめとした脳の働きが,科学の言葉で語られるようになってきました。人は外からの情報を受け取ったり,学んだりするのに,その脳を利用しています。こうした脳の活動に関係した物質や現象が明らかにされつつあります。

脳は神経細胞(ニューロン)により構成され,神経細胞同士が神経線維を伸ばして情報のやり取りを行っています。
その神経回路は非常に複雑で,例えばヒトでは約一千億個の神経細胞が数千個以上の細胞と情報をやり取りしています。神経細胞は生体特有の物質(生体高分子やイオンなど)で構成されていて,やり取りしている情報はパルス上の電気信号(活動電位)です。
だから,脳の働きを調べその法則を見つけるには,脳の中でそれらの物質がどのような物理法則で制御され,働いているのか調べる必要があります。ヒトに限らず,マウス,昆虫,軟体動物でも同じ仕組みで脳が働いています。そのため,比較的単純な脳を持つ生き物から研究がされてきました。

授業では,脳の記憶に焦点を絞り,物理学が脳の神経回路網やその制御の仕組みにどのように迫ってきたのか見ていきます。

ナメクジの脳中枢神経系
ナメクジの脳中枢神経系
その活動パターン
その活動パターン

半導体が支える私たちの生活(IT,省エネ,環境)

担当講師:高瀬 浩一

世の中の物質を電気が流れるか流れないかで分類すると,金属,半導体,絶縁体の3種類に大別できます。
この講義では,特に,半導体のすばらしい機能性がどのように私たちの生活を支えているかについてお話します。

さて,その半導体の機能ですが,これには,整流,増幅,発光などがあります。
整流・増幅作用は,主に,電子機器類に組み込まれている半導体メモリやCPU に用いられ,ITを支えています。この作用は,真空管でも実現可能ですが,真空管では,消費電力やサイズが大きく,現代の1000万個以上のトランジスタで構成されるメモリ応用等には,到底,向きません。
発光作用は,半導体ならではの機能で,これにより発光ダイオードやレーザーが作られています。この技術は,電気エネルギーを光エネルギーに変換できる大変優れたものです。また,この逆の作用を行うことで,発電が可能となります。すなわち,半導体に光を当てて,電気を取り出すのです。この例として,太陽電池や光スイチング素子が挙げられます。更に,取り出した電気で,殺菌や有害物質の分解も可能です。
これらは,全て,半導体ならではの機能です。

素粒子 -その色と香り-

担当講師:二瓶 武史

物質を構成している最も基本的な粒子を素粒子と呼びます。現在までに発見されている素粒子は「クォーク」と「レプトン」の2種類に分類されており,それらの物質は,「ゲージ粒子」と呼ばれる粒子を交換することによって互いに力を及ぼし合うことができます。

クォークとレプトンはともに6種類ずつあり,これは6つの「香り」に例えられています。また,クォークには「色」と呼ばれる自由度がありますが,レプトンには「色」はありません。さらにクォークとレプトンは共に3つの「世代」に分類されています。ゲージ粒子にもいくつかの種類があり,それらを交換することによって働く力も種類ごとに異なっています。ゲージ粒子のうちの一つである「光子」を交換することによって生じる力が電磁気力です。

このような素粒子の性質はミクロな現象の解析から解明されてきたものですが,素粒子物理学の応用は幅広く,その適用範囲は広大な宇宙にも及んでいます。
この授業では,解明されつつある素粒子の世界を解説するとともに,今後の課題として残された未解決の問題は何なのかについて考えてみます。

素粒子の標準模型
素粒子の標準模型

相対性理論入門 -時間と空間の不思議な関係-

担当講師:二瓶 武史

アインシュタインの相対性理論によれば,動く時計の進み方は遅くなります。また,重力場が強い所にある時計の進み方は,弱い所に比べて遅くなります。特に重力場による時間の変化は,スカイツリーの展望台に置かれた時計を用いて,2020年に実験的に確かめられました。

この講義では,このような時間の進み方のずれが何故起きるのかについて学習します。
相対性理論で明らかにされたように,実は時間と空間には不思議な関係があるのです。講義では,それに基づいて展望台での時間のずれを計算して,実験結果と一致することを確かめます。

相対性理論は,宇宙や素粒子といった物理学の研究の基礎となるだけではなく,我々の生活に欠かせないスマホやカーナビ(GPS)の動作にも欠かせない知識となっています。

重力は時間の流れを変える
重力は時間の流れを変える

ブラックホールを見つけ出す -天体観測とビッグデータ-

担当講師:根來 均

ブラックホールは,もっともよく耳にする天体の一つですが,ブラックホール自体は光を出さないために観測できず,その存在自体を含め,まだまだ謎が多い天体です。その存在を示した相対性理論からは,ブラックホールのすぐ近くでは空間がゆがみ,時間の進み方も遅くなって観測されると予想されています。

では実際には,ブラックホールはどのようにして見つけ出され,どのように観測されるのでしょうか?
現在,共同研究を行っている,国際宇宙ステーションに搭載される全天X線監視装置(マキシ)での取り組みを例に,授業では,観測されるブラックホール天体の特徴や,ブラックホールを見つけ出すまで用いられている衛星間通信やデータベースなど情報処理技術についてもお話しします。

宇宙ステーションと全天X線監視装置 MAXI
宇宙ステーションと全天X線監視装置 MAXI
(図版・画像等の出典や引用元:NASA, JAXA)
MAXI が発見した 37 の新天体
MAXI が発見した 37 の新天体
研究室のデータ処理システム

恒星の進化と超新星

担当講師:藤井 紫麻見

恒星はずっと変わらないように見えるが,実際は誕生から進化,終末へと大きく変化していく。
その時間スケールは私たちの一生に比べとても長いため,恒星の大きな変化の様子を観測する機会はほとんどない。私たちは非常に数多くの恒星を観測して,その性質を調べ,比較し,進化の順に並べることによって恒星の一生を解明してきた。恒星は原始星として誕生し,主系列星,赤色巨星と進化しその最期を迎え,その最期は多彩であることがわかっている。

また例外として,恒星が大きく変化する様子を観測できるのが,新星や超新星といった恒星の爆発現象である。特に超新星は,一部の恒星がその終末に起こす大規模な爆発であるが,そのエネルギーが銀河や宇宙の進化にも影響を及ぼす。

この出張講義では,これまでに解明された恒星の進化と超新星の性質や影響について解説する。

恒星の進化と超新星
恒星の進化と超新星