持続可能な都市のあり方を考える

担当講師:菊池 浩紀

日本の多くの都市では,戦後の人口増加に伴い,住宅地や商業地が広がり,都市全体が拡大してきました。
しかし近年では,少子高齢化による人口減少や自治体の財政負担の増大などにより,これまでのように都市を広げながら維持していくことが難しくなっています。
このような課題に対して,国や自治体もさまざまな取り組みを進めています。例えば,都市機能を一定のエリアに集約するコンパクトシティ政策や,公共交通を中心とした鉄道沿線のまちづくりなど,持続可能な都市構造を目指した政策が各地で進められています。

CSTサイエンスアカデミーでは,こうした国内外の事例を紹介しながら,都市と交通の関係に着目し,これからの社会に求められる持続可能な都市のあり方について考えます。

公共交通を軸としたまちづくり
公共交通を軸としたまちづくり
密集した高層ビル群と公共交通
密集した高層ビル群と公共交通
自動車交通を軸とした近代都市
自動車交通を軸とした近代都市

「生き物」の視点から交通を考える

担当講師:末次 優花

道路や鉄道などの交通インフラは,人や物の移動を支え,私たちの移動をより便利にしています。
また,都市開発によって住みやすく便利なまちが形成され,私たちの生活を豊かにしています。
一方で,人間以外の「生き物」の視点で見ると,開発によって生息地が失われたり,道路が「壁」となって移動が妨げられるなど,多くの生き物にさまざまな影響を及ぼします。

本講義では,交通や都市を「生き物」の視点から捉え,開発による環境への影響を評価する「環境アセスメント」のしくみや,自然環境に配慮した道づくり「エコロード」の取り組みなどについて紹介し,生き物や自然環境と人間社会の関わり方について一緒に考えます。

エコロードのイメージ
エコロードのイメージ
(図版・画像等の出典や引用元:高速道路総合技術研究所ホームページ:エコロード(https://www.ri-nexco.co.jp/tabid/231/Default.aspx))
道路開発で造成された代替池の例(横浜横須賀道路 釜利谷JCT)
道路開発で造成された代替池の例(横浜横須賀道路 釜利谷JCT)

地域課題を解決する“再生可能エネルギー”を活かした 環境・防災まちづくり

担当講師:田島 洋輔

米国主催の気候変動サミットにおいて2050年までに脱炭素社会の実現する方針の公表を受けて,再生可能エネルギーが普及しておりますが,ここにきてその動きはますます活発化する方向にあります。
その背景には,これまでの気候変動問題への対応という従来型の動機のみならず,再生可能エネルギーを活用した地域課題の解決という“まちづくり(地域活性化)の視点”が存在するためです。

まちづくりで重要なのは,地域に潜在する個別具体の課題を整理・抽出し,それらを如何に解決して,持続的で住みやすいまちを創出するか,を考えることです。

こうした中で再生可能エネルギーを単なる“化石エネルギー源の代替”として捉えるのではなく,再生可能エネルギーを活用して,多様な地域課題を解決することはもちろんのこと,行政や企業,住民等のさまざまな立場から新たな価値を見出すことが重要となります。

そこで本講義では,以上の視点から単なる再生可能エネルギー施設の導入ではなく,地域課題の解決に加え,“地域の魅力向上”や“既存産業の活性化”,さらには,“災害時の電源供給”などに寄与する地域に寄り添った再生可能エネルギーの役割や地域との関係性についてご紹介します。

身近な「まち」の魅力を観光の視点で考えてみよう

担当講師:西山 孝樹

決して観光地ではない「まち」においても,その地域と多様に関わる人々を指す,いわゆる関係人口等に焦点を当てたまちづくりも盛んに行われるようになってきました.
このような著名な観光資源がなくとも,地域住民の日常生活や歴史文化が魅力となり,人々が集う賑わいある「まち」を創造することが期待されています.

本講義では,それらを実践する最新動向を参照しながら,実際の観光まちづくりに関する課題等を理解します.
そして,観光まちづくりを実践するために必要な基本的な知識を再整理し,地域の歴史・文化・環境から観光資源,地域資源を発見する様々な手法についてもご紹介します.

歴史的な観点を踏まえ「まち」を読み解くことは観光で必要不可欠です
歴史的な観点を踏まえ「まち」を読み解くことは観光で必要不可欠です

まちづくりと福祉って?-子どもたちに残したい未来のために-

担当講師:牟田 聡子

まちにはたくさんの「人」が日常生活を送っています。
さらに,その「人」たちは子ども,若者,働く人,高齢者,車いすを使用している人,白杖を使用している人,ベビーカーを押す人などなど,多様な特性をもっています。

「福祉」とは「ふだんの くらしを しあわせに」するための学問です。

まちに住んでいる多様な「人」たちの「ふだんの くらし」を「福祉」の力で「しあわせに」するまちづくりについて,SDGsの視点とあわせてお話していきます。

こころと体が健康に暮らせるためのまちづくりと工学的支援

担当講師:植田 瑞昌

世界保健機関(WHO)では,Well-beingを「個人や社会の良い状態」と定義しており,「健康と同じように,それは日常生活における一つの要素であり,社会的・経済的・環境的な条件によって決定される」としています。
まちには多様な人々が暮らしており,ひとそれぞれに異なるWell-beingがあります。
そして,人々が健康的に暮らすためには,食事や運動のほかに,心地よい空間や住まいによって,心と体のバランスを保っています。
特に,社会的なつながりは何よりも大切になります。
そのための住まいづくりやまちづくりは,Well-beingを支える基盤となります。

本講座では,特にすべての子どもが,健康的にともに遊び•ともに学び•ともに育つためのまちづくり工学について学びます。

子育て当事者と一緒にまち歩きをおこない、子育てバリアフリーマップを作製した時の様子。
子育て当事者と一緒にまち歩きをおこない,子育てバリアフリーマップを作製した時の様子。
完成品
完成品

都市の「見える化」であなたのまちを再発見しよう

担当講師:栗本 賢一

みなさんは,自分が住んでいるまちについて,どれくらい知っていますか?
毎日見慣れた風景の中にも,実は気づいていない魅力や課題が隠れているかもしれません。

この講義では,地域計画や都市デザインを専門とする教員が,データ分析や情報解析の手法を用いて,まちの姿を「見える化」する方法をわかりやすく解説します。
人口の変化,土地の使われ方,経済活動,交通ネットワークなど,さまざまな角度からまちを数字や地図で捉えることで,普段は見えにくい地域の特徴や隠れた可能性を浮かび上がらせます。
こうした「見える化」の知見は,まちづくりの計画や地域産業の活性化に直結します。
たとえば,自分たちのまちの強みを数字で確認したり,課題の優先順位を客観的に判断したりすることで,具体的なアクションにつなげることができます。

この講義を通じて,みなさんにはデータの力を借りて自分たちのまちを再発見してほしいと思います。
「まちの今」を知ることは,より良い未来を描くための大きな第一歩です。ぜひ,都市の「見える化」の世界を体験してみてください。
あなたのまちの新たな一面に気づくきっかけになるはずです。

都市構造可視化計画ウェブサイト
都市構造可視化計画ウェブサイト
(図版・画像等の出典や引用元:https://mieruka.city/)
地理情報システム jSTAT MAP
地理情報システム jSTAT MAP
(図版・画像等の出典や引用元:https://www.e-stat.go.jp/gis/gislp/)
RESAS 地域経済分析システム
RESAS 地域経済分析システム
(図版・画像等の出典や引用元:https://resas.go.jp/)

持続可能なまちづくりを海からの視点で考えてみよう

担当講師:寺口 敬秀

近年,気候変動に伴って,日本各地で集中豪雨による被害が増えています。
また,世界に目を向けても,海面上昇に伴う土地の消失や,高潮による被害範囲の拡大など,沿岸部の都市では様々な問題が起こり始めています。
一方で,広大な海洋空間は,まだ開発されておらず,様々な取り組みをする可能性を秘めています。
特に,建築・まちづくりの面では,海の上に浮かぶ建築物や都市の役割に注目が集まっています。
国際連合は,2019年に「Oceanix City」と称した計画を発表し,将来的な人々の居住領域としての海上の重要性を示し,約300万人の居住者を受け入れる新たな海上都市モデルを提唱しました。
また,欧米諸国では浮体式の集合住宅やオフィス,農業施設等が次々と実現しています。
日本でも同様に,東京や大阪で浮体式のレストランやホテルが建設され,身近な水辺空間の日常利用に向けた試行的な取り組みが実施されています。

本講義では,人類の将来に向けた持続的な都市計画を行う上での海の役割や可能性に注目し,国内外における海上建築物の歴史を解説するとともに,最近の海上に建設された建築物の事例などを紹介し,海洋建築の重要性を皆さんに感じていただきたいと思います。

身近に使われている高性能コンクリート

担当講師:佐藤 正己

これまでの歴史の中で,地震国である日本では非常に短いスパンで構造物が造り変えられてきました。
それは,近代国家として歩み始めた明治時代から使用され始めたセメントコンクリート構造物でも例外ではなく使用され始めてから長い間30~40年程度の長さを想定して設計されてきました。

近年,コンクリートは,薬剤や新材料の開発によってコンクリートの強度,耐久性が飛躍的に増加し,耐久年数100年といった構造物が造られ始めています。このような超高強度コンクリートは,耐久性を求められる公共施設や超高層マンションに用いられています。
また,公共工事には,用途に応じてさまざまな性能を付与した特殊コンクリートが用いられ,社会基盤を支えています。

本講義においては,長寿命化を実現した超高強度コンクリートをはじめとする特殊コンクリートを身近な事例を挙げながら紹介します。

セメントが固まるのは乾くと勘違いされている方もいらっしゃると思いますが,化学反応で硬化します。少人数でご要望があれば,簡単な実験をすることも可能です。

羽田空港4番目の滑走路
(1)普通コンクリートの5倍の強度のコンクリートを使用し2010年に竣工した羽田空港4番目の滑走路
43階建の分譲マンション
(2)普通コンクリートの5倍の強度のコンクリートを使用した43階建の分譲マンション

脱炭素社会を目指すセメント・コンクリート分野の取り組み

担当講師:佐藤 正己

近年,脱炭素社会が社会問題になっている。セメント・コンクリートは,社会インフラを構成するために最も多く利用されている材料である。

しかし,コンクリートを製造するために使用されるセメントは,製造時に多くの二酸化炭素を排出するために,セメント産業・建設業では社会的な課題となっている。

本講義では,セメント産業,建設業,研究機関での取り組みについて行います。