化粧品の無機材料化学

担当講師:遠山 岳史

化粧品とは有機材料であるのか,無機材料であるのかと聞かれたら,化学を少しでも勉強したことのある皆さんのほとんどは有機材料であると答えるでしょう。
確かに,化粧品は私たちの肌に直接塗るものであるので有機材料であると考えるのではないでしょうか。しかし,実際には有機物は含まれていますが,きれいに見せるための主成分は無機材料です。
では,どうして化粧品には無機材料が必要なのでしょうか。化粧品には,近年,単純に色をつけてきれいに見せるだけでなく,紫外線防止,透明感をだす,きらめく,長時間持続させる,小顔にみせる,などの機能を化粧品に付与することが求められています。
たとえば,唇や爪などをきらめかせるパール顔料は真珠(パール)の輝きを模倣した材料です(写真1)。このパール顔料を切断した走査型電子顕微鏡写真が写真2ですが,肌に塗布しやすいように粒子は板状の形をしています。また,粒子内部を見てみると雲母の周りに酸化チタンがコーティングされた積層構造をしています。屈折率の違う無機材料を光が通過することで回折現象が起こり,見る角度によってさまざまな色となります。
このように,化粧品の機能化は粉体の大きさ,形状,さらにはその分布などの形態制御を行うことで様々な用途へと変身させています。

そこで,本講義では化粧品の機能化に及ぼす無機材料の役割を化学的にわかりやすく解説いたします。

写真1
写真2

実験室で宇宙を観(み)よう -実験室天文学入門-

担当講師:浅井 朋彦

宇宙にある物質のうち観測可能なものの大部分は「プラズマ」状態です。原子が電子とイオンに電離したプラズマ中では様々な現象がおこりますが,実際に宇宙空間で観測することは困難です。
そこで,天体現象を実験室で発生させそれを観測する「実験室天文学」が注目されています。

この講座では,宇宙空間で生じるプラズマ現象を再現する実験を中心に,「実験室天文学」の視点から自然科学の研究手法について理解を深めます。
自然科学は,自然現象に対して仮説を立て,観測や実験により実証していく学問です。また,独自性・新規性の高い実験研究では,実験・観測,データ解析などに関連して,理工学の幅広い分野と関わりを持ちます。
このような異なる研究分野が協働することの重要性,自然科学の進展における実験・観測の役割やその面白さについて,プラズマ物理学と宇宙物理学を例に体験的に学びます。

秒速600km以上でプラズマを衝突できる実験装置(日本大学理工学部船橋校舎)
秒速600km以上でプラズマを衝突できる実験装置(日本大学理工学部船橋校舎)

核融合からがん治療まで? プラズマとはなんだろう?

担当講師:浅井 朋彦

ダイアモンドの生成やガンの治療に利用され,自然界ではオーロラなどの天体現象を演出する「プラズマ」について,さまざまな演示実験を通して解説します。

プラズマは,物質の第4状態とも言われ,一般に高温で発光し高い反応性を持つなど,気体のような物質の他の状態にはないさまざまな特徴をもっています。
この講義では,たくさんの演示実験や参加型の実験を通してプラズマを体験的に学習します。また,それを通して,温度やエネルギーの概念,静電気力や電磁力,太陽風やオーロラなどの天体現象,プラズマの反応性やその応用などについて解説します。

大気中でのアーク放電実験
大気中でのアーク放電実験
白熱電球でつくったプラズマボール
白熱電球でつくったプラズマボール
電場で引き延ばされる炎
電場で引き延ばされる炎
手で触れる“1万度”のプラズマ
手で触れる“1万度”のプラズマ
実験室で再現されたオーロラ
実験室で再現されたオーロラ

分光器をつくって光の性質を探ろう

担当講師:浅井 朋彦

最も身近な物理現象の一つであり,理解の難しい「光」の回折や干渉といった光の性質について,ペーパークラフトで分光器を製作し,実際に観察を行うことで理解を深めます。

講座では,おもに波動性を中心とした解説を行い,つぎに実際に分光器を製作し,白熱電球や蛍光灯,放電プラズマなど様々な光源を観察します。この観察結果を元に,各光源の発光のメカニズムについて解説し,その違いや共通点について考察します。

また,分光した観測結果について,パソコン上でのデータ解析などに挑戦することもできます。

製作した分光器
製作した分光器
分光された蛍光灯の光
分光された蛍光灯の光
パソコン上での解析結果
パソコン上での解析結果

超新星で探る宇宙の膨張速度

担当講師:岩本 弘一

宇宙は約137億年前に起きたビッグバン(大爆発)以来今日まで膨張を続けてきたと考えられています。
その膨張速度を表すハッブル定数Hoを正確に決定することは,宇宙の年齢を知ることに対応し,現代天文学の最重要課題の一つです。宇宙の膨張速度を求めるには,遠い天体までの距離とその天体が遠ざかる速度を知ることが必要です。太陽のような恒星が進化の末に到達する白色矮星(はくしょくわいせい)という星が大爆発をおこす現象をIa型超新星といいます。

この超新星はどれも同じ明るさで輝くので,みかけの明るさから超新星までの距離を測定することができます。
これを利用して,最近では,非常に遠方の超新星の距離が測定され,宇宙膨張の速度や速度の変化率(加速度)が正確に求められるようになりました。
その結果,現在の宇宙では,膨張を加速させる「真空のエネルギー」の効果が,減速させる重力の効果を上回っていて,加速膨張していることが明らかになりました。

宇宙の大きさの時間変化
宇宙の大きさの時間変化

環境とコミュニケーション―「エコロジー」って何だろう?

担当講師:勢力 尚雅

「環境」って何でしょうか。多くの人は,わたしたちの外にある自然環境を考えるかもしれません。

しかし,環境とは,自然環境のことだけではありません。
その証拠に,自然環境だけでなく,衣食住環境,経済環境,情報環境,医療環境などが,わたしたち(の身体,思考,ライフスタイル,価値観など)をつくっており,これらの環境はわたしたちと切り離すことはできないのです。わたしたちは,政治,法,経済,宗教,教育,芸術,科学技術,マスメディアなどのさまざまな制度や機能システムにとり囲まれています。これらの機能システムは,日々,生成変化し続けています。
ひとりひとりの何気ないコミュニケーショの連鎖が,機能システムという環境に変化をもたらし,それらがわたしたちをつくり,変化させているのです。

それでは,これらの環境=機能システムは,知性によって操作・制御可能な対象でしょうか。

残念ながら,現代社会は,その反対を示すニュースやできごとであふれています。

わたしたちをとりまく機能システムが複雑で影響力が大きくなればなるほど,各機能システムの暴走や破綻がわたしたちに及ぼしうるリスクの全体を俯瞰して計測・調停・制御する上位の統合的な視点や知が存在しないことへの不安が増幅しています。

その結果,環境改変に伴うリスクへの不安を全否定するナルシスチックな知性による安全神話を生み出したり,参加型民主主義への過剰な楽観を生み出したり,反対に,リスクの源泉を探して相互に監視,糾弾,排除を繰り広げるヒステリックな「不安・不信のコミュニケーション」や「道徳のインフレーション」にまき込まれがちです。

そこで,本講義では,ルーマンやベイトソンらのコミュニケーション論を紹介しながら,自らの学習プロセス自体を問いなおし続ける学習が継続して生成し,互いの差異から学習しあい,新たな冗長性を探りあい続ける「ポリフォニー的な対話(対位法的なコミュニケーション)」によってつながるネットワークやコミュニティを育むには,どのようなコミュニケーションが必要となるのかを考察します。

また,アートやデザインを媒介として「豊かさ」や「調和」を探りあい続けるコミュニケーションの実践などを体験しながら,部分の最適化にばかり偏した文明から,動的平衡を探り続ける生命文明へと展開していくために必要な知恵とマナー,そして科学技術とのつきあいかたについて考察します。

ペーストの記憶と破壊の制御

担当講師:中原 明生

粉と水を混ぜただけのペーストはなんと揺れや流れなどの自分自身の動きの体験を記憶します。
ペーストが何を記憶したかペーストを眺めているだけではわかりませんが,そのペーストを乾燥させると,乾燥によってひび割れた際の亀裂パターンの模様を見ることによりペーストが何を記憶していたのか一目瞭然でわかるようになりました。

具体的に説明してみましょう。
ペーストが地震のような揺れを体験した場合は,乾燥させた時に生じる亀裂の進行方向は過去に体験した揺れの方向に垂直となります。しかし,もしもペースト内の水分含有量が少し多めでペーストが流れを体験した場合は,乾燥させた時に生じる亀裂の進行方向は流れた方向に平行になるのです。その結果,亀裂の模様を見ると,ペーストが揺れたのか,流れたのか,またその方向はどうだったか,すべてわかるのです。

例えば,下の亀裂パターンの写真は,直径50cmの円形容器に入ったペーストがなんらかの動きを体験した時の記憶が乾燥亀裂パターンとして視覚化されたものです。
それぞれのペーストがどういう動きを体験したのか,想像してみてください。

この面白い現象は注目を浴び,2014年には日本物理学会主催の一般向けの科学セミナーでの講演を依頼されるとともに,日本物理学会誌2015年3月号では解説記事として紹介されることとなりました。

http://www.jps.or.jp/public/seminar/scisemi2014.html

http://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/2015/03/703.html

この現象からは,サイエンスとしては無機質であるペーストがなぜ自分の体験を記憶するのかという面白さを感じるとともに,工学的には材料の割れやすい方向を調整して自由自在に亀裂の形状をコントロールしようという破壊の制御に対する幅広い応用が期待されます。

ペーストの記憶を視覚化する亀裂パターンの数々
ペーストの記憶を視覚化する亀裂パターンの数々

楽しみながら学ぶ!-化学分野の教育・学習ゲームの実践-

担当講師:伊藤 賢一

教育ゲームや学習ゲームとは,ゲームの要素や仕組みを教育や学習に取り入れることで,学習者のモチベーションや能力を高めることを目的としたゲームのことです。
一般的にゲームは,プレイヤーにルールやゴールを与えてそれに向かう行動を促し,フィードバックや評価を提供することで興味や関心を引き出し,自発的参加につなげるものです。これより,教育・学習ゲームの実践(プレイ)はアクティブ・ラーニングにつながるとされています。
最近私は,化学・情報科学・教育学の分野の研究者を集め,化学分野の教育・学習ゲームを開発する研究グループを立上げ,理工学部の学生さん達と共にゲームの制作等を行っています。

この授業では,教育・学習ゲームの歴史的経緯や意義等を解説した後,私達が開発した化学分野の学習ゲームを実践(プレイ)してもらい,その経験を通して教育・学習ゲームがもつ面白さや学習効果等について実感してもらいます。

開発した化学分野の学習ゲーム
開発した化学分野の学習ゲーム

才能を伸ばす学び方,教え方

担当講師:北村 勝朗

人が何かを学び上達していく上で,指導者の影響はとても大きいと考えられています。
実際,様々な領域で人を育て大きな成果に結びつけてきた人々は名コーチと呼ばれ,その指導力・指導実践が高く評価されています。それは単に知識や技術の教え方が上手ということだけではなく,学ぶ人々がやる気を高め,集中し,チームとして協力し合いながら,質の高い学びに自ら取り組めるような「学びのしかけづくり」が上手だからです。
ではこうした「学びのしかけづくり」とはどのようなものでしょうか。そして,そうしたしかけによって学びはどう変わるのでしょうか。

本講義では,こうした問いに答えるために,いくつかのテーマに沿ったワークショップを実施します。
キーワードは,「上達のコツ」「チームワーク」「集中力を高める」「やる気スイッチ」「仲間関係づくり」そして「自信を高める」です。
人を育てることですばらしい成果をあげてきた優れた指導者たちの指導実践を素材とし,名コーチの教え方のコツを習得すると同時に,そうした名コーチの指導のもとで学んだ人々の学び方も学ぶことで,人が学び育つヒントを探っていきます。
学校(幼稚園・小・中・高・大),スポーツ,音楽,芸術,科学,わざ,ビジネスといった様々な領域が対象となります。

様々な領域のエキスパートを招いて小学生がインタビューをし才能開花法を学びました。
チームビルディングのワークショップ
チームビルディングのワークショップを通して,仲間と力を合わせて目標を達成する方法を学び実践しました。

脳の中を物理学で見る

担当講師:小松﨑 良将

記憶や学習をはじめとした脳の働きが,科学の言葉で語られるようになってきました。人は外からの情報を受け取ったり,学んだりするのに,その脳を利用しています。こうした脳の活動に関係した物質や現象が明らかにされつつあります。

脳は神経細胞(ニューロン)により構成され,神経細胞同士が神経線維を伸ばして情報のやり取りを行っています。
その神経回路は非常に複雑で,例えばヒトでは約一千億個の神経細胞が数千個以上の細胞と情報をやり取りしています。神経細胞は生体特有の物質(生体高分子やイオンなど)で構成されていて,やり取りしている情報はパルス上の電気信号(活動電位)です。
だから,脳の働きを調べその法則を見つけるには,脳の中でそれらの物質がどのような物理法則で制御され,働いているのか調べる必要があります。ヒトに限らず,マウス,昆虫,軟体動物でも同じ仕組みで脳が働いています。そのため,比較的単純な脳を持つ生き物から研究がされてきました。

授業では,脳の記憶に焦点を絞り,物理学が脳の神経回路網やその制御の仕組みにどのように迫ってきたのか見ていきます。

ナメクジの脳中枢神経系
ナメクジの脳中枢神経系
その活動パターン
その活動パターン