数理最適化入門 −線形計画問題−

担当講師:伊藤 勝

数理最適化は,「最も良い手段を求める」ための数学の理論です。より具体的には,与えられた条件のもとで,ある関数の最大値や最小値を求める問題を最適化問題といい,この問題を解くことが数理最適化の目的です。
高校の数学では,最大値や最小値を求める問題が様々ありますが,それらは最適化問題の一種と言えるでしょう。より身近な例としては,路線検索サービスを使って,行き先までの交通費や移動時間が最小のルートを探すことは,最適化問題を解いていると見なすことができます。
このように数理最適化は様々な場面で登場することがわかります。

その中でも線形計画問題は,高校の数学にも登場する基本的な最適化問題のひとつであり,より一般的な視点から眺めると美しい数学の性質が見えてきます。

この講座では,数理最適化の入門や線形計画問題に関わる数学の理論について紹介していきます。

不変量

担当講師:笠川 良司

輪ゴムのようにゴムでできた物体を考えます。
ゴムで作られていますから,少し力を加えれば形は少し変わります。切れない程度に力を加えていくと,かなり形は変わります。しかし,形は変わっても同じ物と普通は考えます。
位相幾何学では,図形や物体の形が少しぐらい変わっても,更にはその積み重ねで見た目がだいぶ変わったとしても同じ図形,物体と考える幾何学です。少し言い方をかえると2つの図形が同じであるとは片方を少しずつ変化させてもう一方の図形になる場合をいいます。

さて,2つの図形があるとします。これらの図形は同じかを考えます。
同じであれば少しずつ変形して同じ形にすれば良いのですが,(といっても簡単ではありませんが)異なる場合どうすれば異なることを示せるのでしょうか。
いくら変形しても同じ形にならないからといって,違うとは言えません。もしかしたら別のやり方で同じ形になるかもしれません。すべての変形を試せば良いのですが,変形のやり方は無限に多くあるので,いくらやっても終わりません。
ここで登場するのが不変量です。例えば,いま考えている図形1つ1つには数が対応しているとします。この数が図形の少しずつの変形では変わらないとします。すると少しずつの変形で移りあう図形は同じ数が対応します。ということは,この数が異なる図形は同じ図形ではないということになります。

身近なところでは,ボールと浮き輪は上の意味で違うものです(見た目にも明らかに違います)が,これらも不変量で区別できます。それは何でしょうか。

複素数でつながる代数と幾何

担当講師:月岡 透

みなさんが複素数と初めて出会うのは,2次方程式の解の公式においてだと思います。
「解なし」としてしまえば,話はそこで終わってしまいますが,想像力を豊かにして,2乗してマイナス1になる数も数の仲間にしますと,2次方程式は「いつでも解を持つ」と言うことができます。
 
数学の勉強を進めていくと,「複素平面」というものを習うことになります。
これはひとつひとつの複素数をそれぞれ平面上の点だと思うことにして,平面幾何の問題をそのまま考えるのではなく,複素数の計算を通していろいろと調べてみようというものです。たとえば複素数のたしざんやかけ算は,平面上の点の平行移動や回転に対応することになります。
 
もう少し先に進むと,今度は逆に,普通の平面上の座標を表すふたつの実数を複素数にしてしまうことを考えます。
すると,平面上に描かれた放物線,楕円,双曲線は複素数の空間に広がり,互いに写り合い,結局は同じものになってしまいます。このような奥行きのある世界では,2次式がお団子(リーマン球面)になったり3次式がドーナツ(楕円曲線)になったりします。
 
複素数は,想像上の数ではありますが,慣れ親しんでいくと感覚に訴える現象が見つかります。このような話題から,代数や幾何に関する興味深いものを選んでお話ししたいと思います。

連立方程式で解く数学パズル

担当講師:石原 侑樹

連立方程式とは,複数の方程式からなる組のことです。例えば,2x+3y=1,5x+3y=7という2つの方程式からなる連立方程式はx=2,y=-1という解を持ちます。

1次の方程式のみならず,2次や3次の方程式の連立方程式も考えることができます。連立方程式は中学で習う基礎的なものですが,現代の情報社会を支える重要なものとなっています。

この講義ではその応用の広さを実感するために連立方程式を使って色々な「数学パズル」を解いてみたいと思います。例えば,証言から誰が嘘をついているか見抜く「嘘つきパズル」や,赤・青・黄の3色だけを使って隣り合う国に違う色を塗る「彩色パズル」などは連立方程式を使っても解くことができます。

また連立方程式を解く際にコンピュータを使って「グレブナー基底」と呼ばれるものを計算すると,人間の手よりもはるかに素早く解くことができます。

講義ではそういった代数的な計算とコンピュータの関係,そして「量子コンピュータでも解けない暗号(耐量子計算機暗号)の安全性解析」などの現代社会への応用についても話します。

等差数列を遊んで学ぼう!

担当講師:齋藤 耕太

3, 5, 7, 9, 11
この5つの数を観察すると,左から右へそれぞれ2つずつ数が増えていることがわかります。このように同じ数ずつ増えていくような数の列のことを等差数列(とうさすうれつ)と呼びます。

この数列は単純そうに見えて,実は極めて奥が深い対象です。この授業では等差数列を活用したボードゲームで遊び,その後,関連する研究結果について体験的に学習していきます。

等差数列を活用したボードゲーム
等差数列を活用したボードゲーム

素因数分解と暗号理論

担当講師:長峰 孝典

「数学って何の役に立つの」と考えたことはありませんか?
教科書の問題を解くために公式を覚えて,計算して,たまに間違って…の繰り返しだと確かに数学の良さを見つけにくいかもしれません。しかしながら,数学は皆さんの生活の様々な場面で活躍しています。例えば,インターネット上で買い物をするとき,クレジットカードなどの個人情報が第三者に盗み見られてしまったら大変ですよね。
それを防いでいるのが「暗号理論」です。特にRSA暗号と呼ばれる暗号技術には「素因数分解」にまつわる数学が使われています。

この講義では,素数や素因数分解に慣れ親しんでもらい,それらがどのようにして暗号技術に応用されるのかを解説します。
さらに,背景にある「代数学」と呼ばれる数学の一つの分野についても説明し,素因数分解が最先端の数学の研究でも活躍する様子を見てもらいたいと思っています。

代数学と幾何学の融合による多角形の諸性質について

担当講師:鷲尾 夕紀子

代数学と幾何学を融合した範疇の数学を用いた多角形の諸性質の解析および紹介を行う.

モーレイの定理,ナポレオンの定理などに関して,数学ソフトウェアを用いて説明する.

歴史から考える教科書に書かれた物理学の構築

担当講師:雨宮 高久

アイザック・ニュートンという物理学者が,1687年に『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』を著し,現在の教科書で勉強する力学の基礎体系を築いたことは皆さんもご存じかもしれません。
しかし,ニュートンという天才ひとりによって力学の体系化が完成したわけではありません。例えば,ma=Fという(ニュートンの)運動方程式は,運動の第2法則の帰結として導出されるものですが,この方程式はニュートンが導出した訳ではありません。実は,運動方程式はニュートンが亡くなった後,力学が微分積分学と組み合わさることで,漸く導出されました。そして,その象徴とも言えるものが,1788年にフランスの数学者・物理学者ジョゼフ・ルイ・ラグランジュによって書かれた著書『解析力学』でした。

このように,多くの科学者たちがさまざまな研究結果を発表し,さらにそれらが密接に関わり合うことによって,現在の教科書に書かれている自然科学は構築されていったわけです。
本講義では,教科書に書かれている科学(物理学)がどのように構築されていったのかを考えるきっかけとして,物理学者による研究活動を踏まえた物理学の歴史に関して御話致します。

なお,物理学の歴史は多岐にわたっているため,具体的な講義内容に関しては事前に要相談とさせて頂きます。

相対性理論を応用した未来を照らす特殊な光の創成

担当講師:住友 洋介

近年,ブラックホール連星の衝突合体から放出される重力波や,光を用いたブラックホールの観測が行えるようになってきています。
ブラックホールや重力波の放出は相対性理論によりその存在が示唆されており,間接的には様々な方法で検証が行われてきましたが,科学技術の発展により,ついに直接的な観測が行える時代になりました。相対性理論は,身近なものである携帯電話やカーナビで使われているGPSにおいても欠かせないものです。

この講演では,相対性理論のうち特殊相対性理論と呼ばれる,高いエネルギー状態にある物体の持つ速度やエネルギーに関する理論を簡単に説明します。次に,物体に高いエネルギーを印加させる加速器装置を用いると強度の高い光が生成できることを紹介します。
実は,X線を含む多くの領域で強い光を生み出すためには相対性理論が重要となり,また,こうして作られた強い光は材料開発を含む産業の促進にも貢献しています。講演では数式をできるだけ使わないで簡潔に説明を行います。

量子ビーム科学研究室の研究で使用している1億電子ボルト加速器の概略図です。
量子ビーム科学研究室の研究で使用している1億電子ボルト加速器の概略図です。
(図版・画像等の出典や引用元:右下の研究室ロゴはGemini (AI)を用いて作っています。他のCGで作成した加速器概略図のコピーライトは©Rey.Horiになります。)

”温度をはかる”仕組みを学ぼう~熱電対の作製を例に~

担当講師:出村 郷志

温度計は,身近な様々な場所で活躍している。体温を測る,お風呂の温度を測る,オーブンの温度を測る等である。その一方で,温度をどうやって測定しているのか,という部分は表立っていないことが多い。

そこでこの授業では,温度を測る様々な手法を紹介し,その方法を物理的な観点,特に熱力学や物性物理学の観点から学ぶ。その際,二つの異なる金属を用いて温度を測る,熱電対を用いた実演を交えながら,温度を測る仕組みを共に理解する。