光の本質を探る

担当講師:井上 修一郎

私たちの日常生活に欠くことのできない光は,太陽や蛍などの自然界に存在する発光体をはじめとして,電球や蛍光灯のような照明器具,半導体レーザーや発行ダイオードのような家庭電化製品の構成部品など,様々なものから発せられます。
通常,光は干渉や回折といった波動的性質を示すものとして認知されていますが,光の構成単位は「光子」とよばれ,光源に特有のエネルギーを持つ粒子です。光の粒子と波動の二重性を実験的に示すために,十分減衰させたレーザー光やヤングの干渉計に入射し,その出力をCCDカメラで撮影します。
下図に示すように,ダブルスリットを通過した光はCCDカメラ上のどこかの点で吸収され,白く映し出されます。これは光の粒子性を示しています。一方,時間が経過するにつれて,光子が検出された点の集合は縞模様になります。これは通常の光による干渉実験で得られる干渉縞に対応しています。
このことから,個々の光子は単なる粒子ではなく,自分自身と干渉してCCDカメラ上の到達位置を決めていると考えることができます。光子のこのような性質は現代物理学の基礎である量子力学によって説明することができます。

量子で実現する究極的な情報技術

担当講師:行方 直人

身の回りの物質,光(電磁波)などをミクロな領域まで分解していくと,それらの振る舞いは量子力学によって記述されます。量子力学が誕生してから100年ほど経ち,今や量子力学のコンセプトは情報社会へ実装されようとしています。
その例として,盗聴を完全に無意味化する「量子暗号」や一部の困難な問題が高速に計算できる「量子コンピューター」が挙げられます。どちらも量子力学の原理を用いなければ絶対に成し遂げられない性能を持っています。

これからの社会を担う皆さんは,量子力学が常識となる世代,「量子ネイティブ」にならなくてはなりません! 
そこで,本講義では,皆さんが「量子ネイティブ」になるための一助となるよう,量子力学の基本原理である,「波動性と粒子性の二重性」,「干渉」,「不確定性関係」を分かりやすく解説し,「なぜ量子暗号で安全な通信ができるようになるのか?」や「なぜ量子コンピューターは高速な計算ができるのか?」などを直観的に理解できるように説明します。そして,今後どんな「量子」情報社会となっていくのかという展望も紹介します。

開発した量子暗号(量子鍵配送)用単一光子検出器
開発した量子暗号(量子鍵配送)用単一光子検出器。
(実用的な半導体を用いたものでは世界最高性能)
光量子ウォークシミュレータ実験系
光量子ウォークシミュレータ実験系

「光源」としての電子加速器

担当講師:早川 恭史

荷電粒子を電磁場を用いて人工的に加速する装置を「(粒子)加速器」と呼び,「電子」は加速される荷電粒子の代表的なものの一つである。
「電子」は最も軽い荷電粒子であり,加速を受けて容易に光速に近い速さを持つようになる。相対性理論に従い,光速を超えることはできないが,99.9%といった非常に近いところまで到達することができる。

このような光とほぼ同じ速さの電子の軌道が磁石の磁場によって曲げられる際に,「電磁波」つまり「光」が発生する。この光を「シンクロトロン放射光」または単に「放射光」という。
電子を加速する加速器の種類や,電子の軌道を曲げる磁石装置の種類に応じて,赤外線~X線にわたる様々な波長の「光」を発生させることが可能である。現代の最先端科学研究において,様々な分野で放射光を利用した実験研究が行われている。
この「放射光」を含め,電子加速器を新しい「光源」として開発する研究も盛んにおこなわれており,その例をいくつか紹介したい。

※土日可能,平日は船橋校舎近郊(片道15分程度)以外は対応できない可能性あり

電子線形加速器@日本大学理工学部船橋校舎

直線型の加速器であり、現在、最大で100MeV(1億電子ボルト)のエネルギーの電子ビームを発生することが可能。
この時の電子のスピードは、光速の99.9987%に達する。
電子線形加速器@日本大学理工学部船橋校舎

直線型の加速器であり,現在,最大で100MeV(1億電子ボルト)のエネルギーの電子ビームを発生することが可能。
この時の電子のスピードは,光速の99.9987%に達する。

量子論と識別不可能な同種粒子

担当講師:大谷 聡

身の回りの物質を分割していくと,究極的には分子や原子,そしてそれらを構成している素粒子のようなミクロな粒子に辿り着きます.そのようなミクロな粒子たちの運動を記述するのが量子論(量子力学)と呼ばれる物理学の理論です.
この量子論によると,同じ種類の粒子は全くの無個性で,原理的に区別をすることができません.この「同種粒子の識別不可能性」は非常に深い意味を持ち,例えば元素の周期表はこの識別不可能性(と角運動量の量子化と呼ばれるもの)の帰結として導き出すことができます.

この講義ではまず量子論の初歩について概観した後,同種粒子の識別不可能性に基づく粒子の分類およびその応用を紹介します.
この分類は粒子の統計性による分類と呼ばれ,同種粒子を交換した時の振る舞い方で大別されます.代表的な粒子統計としてボーズ・アインシュタイン統計とフェルミ・ディラク統計というものがあるのですが,他にも沢山あって,実は粒子たちが住んでいる空間の幾何学(特に空間の次元)に応じて様々な粒子統計が存在します.逆に言うと,空間の幾何学をコントロールすることで様々な粒子統計を創出することができ,近年ではこの事を積極的に利用した量子コンピュータへの応用などが盛んに研究されています(下図参照).
本講義では同種粒子の識別不可能性をテーマに,量子論の基礎から最先端の研究までをできるだけ平易に紹介したいと思います.

学習理論と解析関数論

担当講師:青柳 美輝

情報科学の分野では,計測して得られた多量のデータから,そのデータを発している情報源の確率分布(真の分布)を推測することを学習といい,この学習は手書き文字認識,画像認識,音声認識,遺伝子解析などに利用されます。

例えば,手書き文字認識の場合,手書き文字は,ノイズの含まれたデータなので,確率的に考える必要があります。いろいろなデータ(手書き文字の画像)を与えて,機械に学習させます。
機械による学習の仕組みとしては,色々なものが考えられてきました。現在,効率的なものとして動物の生体神経回路網をヒントにして作られた「ニューラルネットワーク」などが利用されています。
「学習理論」とは,このような仕組みを利用した場合の学習の挙動を定めている共通または固有の法則を解明,体系化することです。その上で情報科学的なシステム設計法を与えることを目的としています。

近年,この学習理論研究のためには,解析関数論の手法が必要であることが分かってきました。学習理論は,解析関数論と結びついて理論研究が盛んになってきた新しい分野です。

流れの数値シミュレーション

担当講師:小紫 誠子

流体というのは,ごく簡単に言えば,水や空気のように流れるもののことです。

そしてその流体の種々のふるまいを,流体現象と呼んでいます。空気などのように,流体は私たちの身近に存在し,普段の生活のあちこちで流体現象が起こっています。飛行機が空を飛べるのも,風車が風を受けて回るのも,流体現象を上手に利用した例であり,鳴門の渦潮や台風などの気象現象も,流体現象の一つです。
また一方で,自動車などにとっては,流体から受ける抵抗や揚力が大きな問題となります。このような多種多様の流体現象も,その多くは,基本的に同じ方程式で記述することができます。

ここでは,その方程式をコンピュータを利用して解き,結果をコンピュータグラフィックスで表現した例をいくつかお見せします。
数理科学のすばらしさと,「流れ」の美しさを,どうぞ体験して下さい。

深海の熱水噴出流
深海の熱水噴出流

微分方程式-方程式の形と解の形-

担当講師:利根川 聡

数学の世界には,いろいろな方程式があります。
一次方程式,二次方程式を学校で習ったでしょう。これらの方程式は特に代数方程式と呼ばれています。
それに対し,私が研究している方程式は微分方程式と呼ばれるものです。微分方程式は,物理などいわゆる理系の分野にたくさん顔を出しますが,現代の社会では経済などでも重要な役割を果たしています。大雑把に言えば,時間の経過とともに変化するもの―運動する物体の位置や速度,株価,など―を数量的に扱う場面で微分方程式が活躍します。

ところで,一次方程式はいつでも解が求まるのに対して,二次方程式は実数の範囲だけで考えると解が存在しないことがあります。

微分方程式の世界でも,方程式によって解があったりなかったりというようなことがあります。ある複数の方程式について,見かけは似ているのに解の性質は全く異なる,というようなこともあります。非線形性という性質を持った方程式の世界では,そういったことが特によく起こります。
似ているのに全く違う,その辺りに面白さと難しさがあります。

確率過程の例と応用

担当講師:西川 貴雄

高校までに,ランダムな現象を取り扱うための「確率」というものを学習したかと思います。「確率」が考察された起源は17世紀のフェルマーとパスカルの書簡であると言われており,そこから確率に対する研究が始まり,数多くの研究者が研究に携わってきました。
20世紀になって,試行のもたらす結果(根源事象)の空間とその確率を公理として与えてその上で考える枠組みが作られました。さらに,当時できたばかりの「測度」という概念が非常に威力を発揮し,飛躍的な発展を遂げることになりました。また,数学の一分野としてだけにとどまらず,自然科学・社会科学において非常に重要な位置を占めるまでに成長しています。
この確率論において特に研究されたものの1つが,時間に伴いランダムに動くものを定式化した「確率過程」です。
この講義では,「ランダムウォーク」等の確率過程の例をお見せするのと同時に,その応用についてお話ししたいと思います。

太陽系小天体探査−流星・彗星・小惑星–

担当講師:阿部 新助

私たちが住む太陽系には,8つの惑星と準惑星や衛星,これらの天体になれなかった小天体が多数存在します。
これら「太陽系小天体」には,150万個以上発見されている「小惑星」や約5,000個発見されている「彗星」のほかに,彗星や小惑星を起源とする「メテオロイド(流星体)」と呼ばれる直径がミリメートル程度の「ダスト(塵)」があります。
彗星から放出された塵の帯(ダスト・トレイル)が地球と交差する際に発生する現象が,「流星群」です。
一方,小惑星の破片は「隕石」として地上に落下することもあります。地球には,毎日数100トンもの塵が宇宙から降り注いでいるのです。

この講義では,太陽系と小天体についての基本的な知識から,小惑星,彗星,流星の科学について,天体観測や小惑星探査「はやぶさ」などの最前線の太陽系探査も交えながら紹介します。

小惑星探査「はやぶさ」
小惑星探査「はやぶさ」
しし座流星嵐
しし座流星嵐

図形を分類してみよう

担当講師:橋口 徳一

数学の研究の目指すものは永遠の「真理」であると言うことができます。
「真理」の探求のし方にはいろいろなパターンがあります。対象(例えば数や図形)のもつ性質を明らかにする,さらに進んで対象を分類する,方程式等の解法を見出す,あるいは,現象を記述するモデルを構成する,など様々です。
私の専門である幾何学では,目標は「図形を分類することである」と言うことができます。分類するというのは,2つの図形が同じであるための基準を定めて,その基準にしたがって図形を仲間分けすることです。

皆さんが良く知っている例をあげると,合同である(または,相似である)ことを基準として三角形を分類することができます。現代の幾何学は,対象としている図形に応じて基準を取り替えながら,多様な図形を分類しようとしています。

この授業では,次元や連結性など位相幾何学で用いられる言葉を用意して,いくつかの簡単な図形を分類します。