アルゴリズムと計算の難しさ

担当講師:平石 秀史

この数十年でコンピュータの性能が飛躍的に向上したおかげで,多種多様な問題をコンピュータ上で扱えるようになりました。みなさんが普段使っているウェブサービスでも,後ろで様々な計算が行われています。

例えば,地図アプリで目的地までの道順を調べるとすぐに最適な経路を教えてくれます。

他にも,検索サービスで調べたいことを入力すると,上から順に関連がありそうなウェブサイトを表示してくれます。こういったサービスでは,地図のデータやウェブページのデータといった巨大なデータの中から,私たちが知りたい情報を一瞬で導き出して教えてくれます。

このようにコンピュータで答えを高速に計算できる問題がある一方で,どのような計算方法(アルゴリズム)を考えても,正しい答えを求めるのに膨大な時間がかかってしまう(と信じられている)問題があります。
例えば,素因数分解といった,数学でおなじみの問題は,今のコンピュータでは簡単に答えを求めることができない代表的な問題の一つです。こういった計算が難しい問題は,その計算の難しさを利用して,解読が困難な暗号の設計などに応用されています。

この講義では,アルゴリズム理論や計算量理論とった分野で,様々な問題の計算の難しさがどのように解明されてきたかについて話します。

持続可能な次世代のロケットエンジン

担当講師:髙橋 賢一

宇宙へ人や物を送るときにはロケットを使用し,大きな力を出せる化学ロケットエンジンが利用されています。
宇宙へ行くには非常に大きな力(推力)が必要で,そのためには多くの燃料と酸素を必要とします。
燃料となる物質と酸素となる物質(これらを推進剤という)をロケットは自ら運び,そのため空気が薄いまたは無いところでも飛ぶことができます。
しかし,これらの推進剤は本質的に爆発性があり,何か事故が起きて推進剤が混合したり,エンジンに異常が発生したりすると一瞬にして爆発してしまいます。
事故を起こさないことが大事なのですが,このような本質的に爆発性を持つ化学ロケットエンジンでは宇宙旅行のように一般の人を乗せるロケットのエンジンには不向きです。

そこで,ハイブリッドロケットエンジンという化学ロケットエンジンがあります。
ハイブリッドロケットエンジンは本質的に非爆発性という安全に優れたエンジンです。しかし,ハイブリッドロケットエンジンは大きな推力を出すことが難しく,人を宇宙に送るにはまだ力不足です。
我々の研究室では,ハイブリッドロケットエンジンの性能を向上させるために,主に燃料の研究を行っています。

この講義では,ロケットの燃料のルーツとも言える黒色火薬から,ロケットエンジンの基礎,最近の研究課題について解説します。

シミュレーションでみる量子カオスの世界

担当講師:佐甲 徳栄

「ブラジルの蝶のはばたきが,テキサスで竜巻を引き起こすか」――。
そんな比喩で語られる「初期値鋭敏性」は,カオスと呼ばれる現象の大きな特徴です。この予測不可能な複雑さは,化学反応や二重振り子,気象など,私たちの身近な物理現象の中に広く存在しています。 
では,原子や分子が躍動する「ミクロの世界」にも,カオスは存在するのでしょうか。数学的には,カオスが生じるには方程式が「非線形」である必要があります。しかし,ミクロの世界を記述する量子力学の基礎方程式は「線形」であり,理論上はカオスが起こらないはずなのです。

本講義では,二重振り子の量子版である分子振動のシミュレーションを通じて,量子世界に潜む複雑な振動の不思議を解説します。

二酸化炭素分子の対称伸縮・変角振動モードの波動関数
二酸化炭素分子の対称伸縮・変角振動モードの波動関数

機械学習技術と航空機設計

担当講師:丸山 大悟

1903年にライト兄弟が初飛行を成し遂げた後,人類は数十年で音より速い航空機の開発や,宇宙へ進出するロケットを開発しました。
グローバル化と呼ばれる現代では,今や航空機は,我々にとってなくてはならない存在です。

人類は数学や物理学といった,「世の中の仕組み」というものを解明し,それを活用することで様々な科学技術を生み出してきました。
航空機も例外でなく,浮く力を得るために,翼の周りの空気の流れの原理を解明しようとすることで,より速く,燃費の良い航空機を生み出してきました。
一方で,ライト兄弟のように,「たくさんの飛行実験」を繰り返すことで,実際に飛行機を飛ばすこともできています。
両者の設計は一見真逆の設計過程のようにも見えます。

この講義では,航空機設計の歴史を辿りながら,因果律の逆を辿ると言われる,昨今の機械学習手法と呼ばれるものと,それによる航空機の設計法のお話をしたいと思います。
最終的には,機械学習手法も数学や物理学といった,「世の中の仕組み」の一端であることも見えてくるかと思います。

分子デバイスをめざす化学

担当講師:大月 穣

化学は,物質がどのような構造をし,それがどのように変化するかを,原子・分子のレベルから明らかしようという科学です.

化学者は,そのような研究の蓄積を学び,さらに新しい反応を発見したりしながら,世界中どこを探しても存在しない新しい分子を設計して,作り出すことができます.最近の研究では,さらに分子を望み通りに組み立てて,新しい物質を作り出すことができるようになってきました.分子を一つずつ作って組み立ててというのは,実は自然界では生物がいとも簡単そうに行なっていることではあります.

植物が,光エネルギーを化学エネルギーに高効率で変換する光合成を行えるのも,分子が精密に並べられた天然分子デバイスを持っているためです.

人間が分子をよりコントロールして組み立てることができれるようになれば,原子・分子レベルで働く究極のデバイスを作ることができるようになります.より優れた光合成を行う人工分子デバイスを組み立てることも可能になるかもしれません.

新しい分子,物質,分子デバイスを作ることを夢みて,日々行なっている研究を紹介します,

電波ってなに? 電波を見る・測る

担当講師:布施 匡章

私たちの便利な生活を支えている電波.携帯電話(スマホ)や電化製品など様々なものに使われ,今や生活に欠かすことのできない大切な電波.電子レンジも電波.当然携帯電話(スマホ)も.とりわけ携帯電話は格別で,様々な種類・方式の違う電波が使用されています.
なぜそんなにたくさんの種類・方式の違うものが使われているのでしょう?

本講座では,「電波ってなに?」,「電波って見える?」など簡単な疑問から,電波のしくみ,特徴などについてお話しします.

電波のイメージ図

ナノテクノロジーを化学する:エネルギー社会・医療技術への貢献に向けて

担当講師:須川 晃資

“ナノテクノロジー”とは,分子ほどの小さなサイズの物質を扱う技術の総称であり,このような非常に小さなサイズの物質をナノ材料と呼びます。通常,我々が目にするありふれた素材でも,ナノサイズまで小さくすることで,これまでにない新しい機能を発現することがあります。
そういった点で,ナノ材料に関する研究は私たち研究者にとって魅力的であり,また,我々人類の社会においても新しい技術革新の可能性を秘めているのです。

例えば,私たちが通常目にする“金”は名前の通り“金色”を呈しますが,金をナノメートルサイズの粒子にすると,鮮やかな“赤色”を呈するようになります。更に,それだけではなく,吸収した光エネルギーを補足するという,分子では成し得ないような不思議な特徴を持つようになるのです。
金属ナノ材料を化学の力でうまく合成し,思い通りに組み立てることができれば,きっと光エネルギーを自在に操る技術が確立されるでしょう。そうすれば,この技術を基にして,これまでにない高性能な太陽電池や,副作用のない癌治療等技術が発展するかもしれません。
このように,ナノ材料の研究は未知の可能性を秘めた研究分野であり,私たち人類にとって必要不可欠な技術をもたらす原動力になりうるのです。

細胞の運命を決定づける複合糖質 ~難病の診断や治療に向けて~

担当講師:鈴木 佑典

私たちの体は機能や性質の異なる多種多様な細胞で構成されています。
これら全ての細胞の表面は,糖タンパク質や糖脂質として存在する“複合糖質”の糖鎖で覆われており,細胞の運命を決定づけています。実際にヒトの一生を見てみると,受精から個体発生にかけて,そして,発生後も環境や年齢とともに細胞膜上の糖鎖構造は大きく変化し,特定の時期の組織・臓器に局在する各細胞の機能や性質に大きく関与しています。
例えば,細胞膜は脂質二重膜からできていますが,糖脂質の糖鎖構造の変化によって,細胞膜の流動性や各種受容体の局在が大きく変わります。また,ほとんどのタンパク質は何らかの糖鎖修飾されており,タンパク質の局在や機能において糖鎖修飾が重要であることが報告されています。
そして,近年では,様々な難治性疾患においても複合糖質の糖鎖構造が重要であることが明らかになりつつあることから,本講義では,診断や治療の標的としてどのように糖鎖科学が応用されているのかを紹介していきます。

大型アンテナの世界へようこそ!

担当講師:瀧川 道生

宇宙と地球をつなぐ架け橋,「大型アンテナ」の世界に足を踏み入れてみませんか?私たちの日常生活に欠かせない通信技術や,壮大な宇宙研究を支える影の立役者。それの一つが大型アンテナです。
通信技術では,宇宙探査機や人工衛星との通信を可能にします。
たとえば,深宇宙探査では地球から何十億キロメートルも離れた場所にある探査機との通信に使われます。その正確なデータ受信能力が,ミッション成功の鍵となります。
また,天文学者たちは大型アンテナを使い,遠くの銀河や恒星から放射される微弱な電波を観測します。これにより,宇宙の起源や進化についての新しい発見がもたらされています。
アンテナの仕組みや科学の世界での役割について楽しく学びましょう。

64mアンテナと私
64mアンテナと私

パソコンの仕組み 解き明かします(実演・体験)

担当講師:電子工学科教員

パソコンはどうやって動いているのでしょう?どんなパーツがどんな役割をしているのでしょう? 全くわからない人,詳しく知っている人,自分でパソコンを組み上げたことがある人,いろんな人がいるでしょう。
でも,各パーツをさらに素子まで分解したことがある人はいるでしょうか?

この出張講義では,ハードディスクなら針やディスクがバラバラになるまで,ディスプレイなら液晶やフィルタがバラバラになるまで分解します。
タブレットやスマートフォンならバラバラにしてもまだ動作することもあります。自分が普段当たり前に使っているパソコンがどうやって動いているのか,目で見て触って体験できる講義です。

(***対応可能人数・最大約20人***)