「光源」としての電子加速器

担当講師:早川 恭史

荷電粒子を電磁場を用いて人工的に加速する装置を「(粒子)加速器」と呼び,「電子」は加速される荷電粒子の代表的なものの一つである。
「電子」は最も軽い荷電粒子であり,加速を受けて容易に光速に近い速さを持つようになる。相対性理論に従い,光速を超えることはできないが,99.9%といった非常に近いところまで到達することができる。

このような光とほぼ同じ速さの電子の軌道が磁石の磁場によって曲げられる際に,「電磁波」つまり「光」が発生する。この光を「シンクロトロン放射光」または単に「放射光」という。
電子を加速する加速器の種類や,電子の軌道を曲げる磁石装置の種類に応じて,赤外線~X線にわたる様々な波長の「光」を発生させることが可能である。現代の最先端科学研究において,様々な分野で放射光を利用した実験研究が行われている。
この「放射光」を含め,電子加速器を新しい「光源」として開発する研究も盛んにおこなわれており,その例をいくつか紹介したい。

※土日可能,平日は船橋校舎近郊(片道15分程度)以外は対応できない可能性あり

電子線形加速器@日本大学理工学部船橋校舎

直線型の加速器であり、現在、最大で100MeV(1億電子ボルト)のエネルギーの電子ビームを発生することが可能。
この時の電子のスピードは、光速の99.9987%に達する。
電子線形加速器@日本大学理工学部船橋校舎

直線型の加速器であり,現在,最大で100MeV(1億電子ボルト)のエネルギーの電子ビームを発生することが可能。
この時の電子のスピードは,光速の99.9987%に達する。

身近な加速器とその応用利用

担当講師:境 武志

加速器は,最近では素粒子実験でのヒッグス粒子の発見における素晴らしい成果によって,一般にもよく知られるようになってきています。
またノーベル賞に関してもよくニュース等で注目を浴びていますが,加速器に関連した基礎科学研究に与えられたノーベル賞は20世紀の自然科学の発展に大きな役割を果たし,戦後だけでも20件弱もあります。
ノーベル賞と関わりのある加速器と考えると一見遠い世界での話しのように思われがちですが,実は私たちの身近なところで加速器の技術が色々と応用され,私たちの生活に非常に役に立っています。

この講義では,加速器に関して簡単に解説し,具体的な応用利用,派生技術として,農業,産業,セキュリティー,文化財,学術・分析,環境,医療など様々な身近な分野で加速器技術が活躍していますので,これら各分野での応用例に関して紹介いたします。

植物と医薬品の関係

担当講師:浮谷 基彦

私たちの身の回りには,多くの医薬品が存在します.
それらは,適当に作られたものではなく,様々な研究・開発の過程を経て,生活の中に送り出されてきたものです.

しかし,何のヒントも無く,医薬品開発を行うことは出来ません.
科学者は,良い医薬品を生み出す為のヒントは無いか,と常に考えています.そのような中,植物は,医薬品開発を行う上で,科学者に多くのヒントを与えてくれます.昔から人類は,体の機能を改善する効果がある素材として植物を利用してきました.例えば,生薬,ハーブなどです.植物に含まれる,どの分子が効くのかが分かれば,その分子は医薬品に発展するかも知れません.

本講義では,医薬品と植物の関係について紹介します.

植物の成分を研究する方法
植物の成分を研究する方法
アポトーシス(細胞死)を起こしている”がん細胞”(蛍光画像)
アポトーシス(細胞死)を起こしている”がん細胞”(蛍光画像)

ナノテクノロジーを化学する:エネルギー社会・医療技術への貢献に向けて

担当講師:須川 晃資

“ナノテクノロジー”とは,分子ほどの小さなサイズの物質を扱う技術の総称であり,このような非常に小さなサイズの物質をナノ材料と呼びます。通常,我々が目にするありふれた素材でも,ナノサイズまで小さくすることで,これまでにない新しい機能を発現することがあります。
そういった点で,ナノ材料に関する研究は私たち研究者にとって魅力的であり,また,我々人類の社会においても新しい技術革新の可能性を秘めているのです。

例えば,私たちが通常目にする“金”は名前の通り“金色”を呈しますが,金をナノメートルサイズの粒子にすると,鮮やかな“赤色”を呈するようになります。更に,それだけではなく,吸収した光エネルギーを補足するという,分子では成し得ないような不思議な特徴を持つようになるのです。
金属ナノ材料を化学の力でうまく合成し,思い通りに組み立てることができれば,きっと光エネルギーを自在に操る技術が確立されるでしょう。そうすれば,この技術を基にして,これまでにない高性能な太陽電池や,副作用のない癌治療等技術が発展するかもしれません。
このように,ナノ材料の研究は未知の可能性を秘めた研究分野であり,私たち人類にとって必要不可欠な技術をもたらす原動力になりうるのです。

都市計画の誕生 産業革命に対処した技術

担当講師:宇於﨑 勝也

高等学校の世界史では,英国において農業革命を背景に,ワットによる蒸気機関の改良によって産業革命が起り,「世界の工場」と呼ばれるまでに発展したこと,労働運動・社会主義に結びついていくことが紹介されています。
ここでは産業革命が引き起こした社会状況をさらに詳しく紹介し,それら「公害」を契機に近代の「(問題解決型の)都市計画」という新たな技術が創出され,暮らしやすく住むための方策が生み出されたことをお話しします。
また,それらが今日の都市にどのように結びついているかをお話しします。授業はプレゼンテーションツールを用いて,図表などを提示しながらのわかりやすいものです。

さらに,時間が許せば理念追求型の「理想都市」計画やわが国で大正時代に導入された都市計画の実態をも紹介します。

「ロンドンの上を走る鉄道」ギュスターヴ・ドレ(1872年)
「ロンドンの上を走る鉄道」ギュスターヴ・ドレ(1872年)
(図版・画像等の出典や引用元:ギュスターヴ・ドレ「ロンドン巡礼 ロンドンの上を走る鉄道」1872年)

利用者のニーズに合わせた水回りのデザインを考えよう

担当講師:江川 香奈

生活に欠かせない「水回り」等のデザインをテーマに,建築計画学的観点と近年までのデザイン傾向について分かりやすく解説します。
ここでは,考案されてきた具体的なデザイン上の配慮点,利用者の使いやすさを考慮した設計手法や対策についても紹介します。
講義の後半では,使う人のニーズを取り入れた水回り空間等についてみなさんにもデザインする,または提案していただきたいと思います。
講義・演習は受講対象者の構成や希望テーマに合わせて,柔軟に変更・対応します。

キッチン(水回り)イメージ画像

細胞の運命を決定づける複合糖質 ~難病の診断や治療に向けて~

担当講師:鈴木 佑典

私たちの体は機能や性質の異なる多種多様な細胞で構成されています。
これら全ての細胞の表面は,糖タンパク質や糖脂質として存在する“複合糖質”の糖鎖で覆われており,細胞の運命を決定づけています。実際にヒトの一生を見てみると,受精から個体発生にかけて,そして,発生後も環境や年齢とともに細胞膜上の糖鎖構造は大きく変化し,特定の時期の組織・臓器に局在する各細胞の機能や性質に大きく関与しています。
例えば,細胞膜は脂質二重膜からできていますが,糖脂質の糖鎖構造の変化によって,細胞膜の流動性や各種受容体の局在が大きく変わります。また,ほとんどのタンパク質は何らかの糖鎖修飾されており,タンパク質の局在や機能において糖鎖修飾が重要であることが報告されています。
そして,近年では,様々な難治性疾患においても複合糖質の糖鎖構造が重要であることが明らかになりつつあることから,本講義では,診断や治療の標的としてどのように糖鎖科学が応用されているのかを紹介していきます。

保育施設の音・振動環境

担当講師:冨田 隆太

現在,保育施設については,待機児童の問題などが取り上げられる一方で,周辺住民の反対などで開園までこぎつけられなかったケースなど,多くの問題がニュースなどでも見られ,社会問題となっています。
そもそも,保育施設の音環境を考える上で,乳幼児のことを考えれば,当然,外部環境が静かな場所に建設されることが望ましいと思います。
しかしながら,そういった観点からの議論よりも,むしろ,乳幼児からの発生音が周辺住民に与える影響について耳にすることが多いのが現状です。
また,待機児童の問題の解決のために,様々な場所に保育施設がつくられており,外部の音環境からみると不利になると思われる鉄道高架下空間や複合施設内の一部を利用して建設されるケースも見られます。

ここでは,「保育施設から発生する音」,「保育施設(保育室)へ入ってくる音」の両面から,いくつかの事例を通して保育施設の音・振動環境を考えたいと思います。

保育施設を取り巻く音環境の概念図

超小型ロボットのつくりかた-人工生物の実現にむけて-

担当講師:齊藤 健

蟻の大群の中に紛れて蟻に指示をだしている奇妙な生物がいる。
このようなSFの世界のできごとが将来実現するかもしれない。

この講義では,蟻のように6本脚で歩行する世界最小サイズの超小型ロボットのつくりかたについて説明する。
現在のロボットは,事前にプログラムされた動作を表現するか,オペレータがリモコンで制御するなど,生物の脳とは異なった方法によって歩行などの動作を制御している。
私は,生物の脳の歩行動作制御を模倣した電子回路をつくり,プログラムやオペレータによる制御の必要がない,超小型ロボットの歩行動作制御を実現した。
この研究は機械工学・電子工学・電気工学・情報工学・生理学などの多くの分野が関係しているため,普段学校で習っている知識に少しプラスすることで,分野横断的な幅広い知識が身につくと期待している。
実施人数,回数,時間によって,座学,簡単な回路のはんだ付け,ロボットのデモなどから講義を選択・構成可能である。

指先に乗るサイズの超小型ロボット
指先に乗るサイズの超小型ロボット
従来にない新しいコンセプトの人工脳
従来にない新しいコンセプトの人工脳

医療に役立つロボット

担当講師:齊藤 健

患者の治療や介護をサポートするためにロボットが使用されており,最も有名なロボットは手術支援ロボット「da Vinci」です。
最近「da Vinci」の主要な特許が切れはじめ,世界中の大学や企業が手術支援ロボットの開発に取り組んでいます。
日本大学理工学部精密機械工学科でも,日本大学医学部や他の学部と連携を取りつつ,「da Vinci」より安価に使用できる手術支援ロボットの開発にチャレンジしています。
また,我々のグループでは胃カメラや大腸カメラに代わる,次世代の内視鏡ロボットの開発をしています。

本講義では,医療に役立つロボットについて,国内外の最新のロボットの紹介や,我々が開発しているロボットについて紹介します。