建物は風で揺れるのか。

担当講師:扇谷 匠己

風が建物にどれほどの影響を与えるか考えたことはありますか。
建物は風ではびくともしない頑丈なものだと思っている方も多いと思います。しかし, 実は風は建物にとって非常に大きな脅威となり得ます。

風の脅威として「タコマ橋の崩壊」という歴史的な出来事が有名です。
1940年、米国ワシントン州のタコマに建設されたタコマナローズ橋が, 完成後わずか4か月で, 毎秒19m/sという比較的弱い風により激しく振動し, 最終的に崩壊してしまいました。
この衝撃的な事例は, 風と構造物の共振現象の恐ろしさを世界に知らしめ, その後の橋梁設計や建築設計に大きな教訓を与えています。

日本は、地震大国であるため地震に対する設計が主として行われてきました。しかし近年では, 60mを超える超高層建物, さらには100m, 200mを超える超々高層建物の建設も進んできています。

こうした超々高層建物は, はたして風で揺れてしまうのか。風と建物の関係について解説します。.

建築の高層化と高強度コンクリート

担当講師:中田 善久

近年,都市部の再開発や集合住宅の高層化に剛性が高くコストが安価である高強度コンクリートが数多く使われています。
従来のコンクリートは,コンクリート強度に上限があるため,柱間が狭い,柱が大きいなど,空間に制限がありました。

ここでは,高強度コンクリートが開発された経緯や特徴を建築材料の観点から紹介します。
また,霞ヶ関ビルなどの高層建築物の変遷にも触れます。

地震エネルギーを受ける建築物の耐震性能を知る

担当講師:秦 一平

講義内容は「地震エネルギーを受ける建築物の耐震性能を知る」というテーマです。
なるべく,専門用語をつかわないで説明したいと思います。
これまでの地震で多くの建物が被害を受けてきましたが,同じ地震でも壊れる建物と壊れない建物があります。
今日はその違いを,“地震エネルギーの視点”からわかりやすく解説していきます。
特に講演ポイントは,「地震のリズムと建物のリズム」です.
なぜ同じ地域で同じ地震を受けても,ある建物は無事で,ある建物は倒壊しています。

「なぜこんな違いが生まれるのか?」――これが講演のキーポイントです。
このような現象を理解してもらうために,地震エネルギーについて説明いたします.

建物が壊れるのは何故か?

担当講師:宮里 直也

建築の構造力学の分野では,建物が壊れないように様々な工夫を行っています。

それらの工夫について,「建物が壊れるメカニズム」について理解することで,いろんなことがわかってきます。
基本的な構造力学の考え方に加え,現在の建物に使われている最先端の工夫等を紹介します。

自然素材と建築

担当講師:廣石 秀造

担当講師:廣石 秀造

建築は,身近で入手しやすい自然由来の材料(自然素材)を用いてつくられてきました。
その結果,国や地域ごとに特色ある建築が生み出されています。近年では,環境への配慮の観点から,このような自然素材の価値が改めて見直されています。
しかし,各素材には固有の特性があり,それぞれの特徴と向き合いながら適切に活用していくことが求められます。

本講義では,自然素材と建築との関係,特に素材の特徴を生かした建築の構成方法について,木材を中心に事例を交えながら紹介します。

木材の素材の特徴を生かした建築

よい建物はつくり方が大事

担当講師:渡邉 悟士

超高層や大規模な建物をつくるためには,設計を工夫するとともに,それを実現するための特別な材料や作り方(工法)が必要になります。
ここでは,コンクリートに関する技術開発と,それを適用した建物について紹介します。

超高強度コンクリートの製造
超高強度コンクリートの製造
(図版・画像等の出典や引用元:渡邉悟士、保利彰宏、鳴瀬浩康、長瀧重義:シリカフュームが高強度コンクリートの物性に及ぼす影響の評価に関する研究、セメント・コンクリート論文集、No.62、pp.419-426、2009.2)
超高強度コンクリートの切断面
超高強度コンクリートの切断面
(図版・画像等の出典や引用元:渡邉悟士、寺内利恵子、小田切智明、阿部剛士:高品質粗骨材選定技術による超高強度コンクリートの品質の安定化、コンクリート工学、Vol.45、No.2、pp.32-40、2007.2)
鋼繊維補強コンクリートの靭性試験
鋼繊維補強コンクリートの靭性試験
(図版・画像等の出典や引用元:渡邉悟士、今井和正、高橋智也、黒岩秀介:構造設計への反映を想定した鋼繊維補強コンクリートの靭性能の評価に関する検討、コンクリート工学、Vol.61、No.8、pp.665-672、2023.8)
コンクリートの非破壊試験
コンクリートの非破壊試験
(図版・画像等の出典や引用元:渡邉悟士、菱川量巳、構健剛、並木哲:超音波法による構造体コンクリート強度の推定に関する研究、日本建築学会構造系論文集、Vol.81、No.720、pp.191-198、2016.2)

つながるクルマが実現する安全・安心-CASE・MaaSが実現する近未来交通社会-

担当講師:関根 太郎

自動車を取り巻く環境は100年に一度の変革期と言われ,CASE(Connected,Autonomous,Shared and Service,Electric)と呼ばれる次世代自動車技術の実用化やMaaS(Mobility as a Service)といったシームレスでユーザー中心のサービスの実現に向けて,車載通信機器を搭載したコネクテッド車両の普及が世界的に始まっています。

この講義では,CASE・MaaSが目指す近未来の交通社会を紹介すると共に,それを実現する上で重要なコネクテッド技術の研究動向について紹介します。
例えば,コネクテッド車両から取得されたデータをビッグデータとして解析することで,高度運転支援システムや完全自動運転の実現,オンタイムでシームレスな移動経路案内の実現,持続可能な社会インフラの維持管理システムの構築,そして大規模災害時発生時の減災・避難・救援へ利用など,皆さんの生活に身近な場面から社会全体に至るまでの多様な研究動向とその実現に必要な科学技術を知ることで,皆さんが学んでいる物理や数学が世の中でどのように役立っているか理解を深めて頂ければ幸いです。

コネクテッド集配車両を利用した路面摩耗状況の計測システム
コネクテッド集配車両を利用した路面摩耗状況の計測システム

これからの少子高齢社会と海浜空間

担当講師:山本 和清

日本では21世紀に入り,超高齢社会といわれる本格的な高齢者の時代を迎えようとしています。
その対策として,2006年12月のバリアフリー新法制定など,建物内部及び公共交通空間における移動の利便性や安全性の向上が推進されつつあります。
それらの対策により,高齢者・障害者の外出が容易となり,海洋性レクリエーションへの参加意欲が向上していくものと考えられます。
そのためにはバリアフリーとしての対応では限界があり,今後は個々の施設が円滑につながり,安全かつ自由に行動でき,全ての人々にとって優しい配慮のされたユニバーサルデザイン整備が必要であると考えられます。

また,海浜空間の利用計画では,サイン計画が重要な視点であると言えます。
広大な海浜空間では自分の位置の把握が困難であり,特に高齢者の場合,トイレや休憩場所の位置など,文字ではなく一目で分かるサインが必要不可欠なものであると言えます。

以上のような社会状況から,この講義では日本がこれから迎える超高齢社会において,健常者だけでなく,高齢者・障害者を含めた全ての人々が,海浜空間のもつ魅力を満喫できるようなシステムを構築するための手法についてお話します。

海外における海浜空間のサイン事例

地域課題を解決する“再生可能エネルギー”を活かした 環境・防災まちづくり

担当講師:田島 洋輔

米国主催の気候変動サミットにおいて2050年までに脱炭素社会の実現する方針の公表を受けて,再生可能エネルギーが普及しておりますが,ここにきてその動きはますます活発化する方向にあります。
その背景には,これまでの気候変動問題への対応という従来型の動機のみならず,再生可能エネルギーを活用した地域課題の解決という“まちづくり(地域活性化)の視点”が存在するためです。

まちづくりで重要なのは,地域に潜在する個別具体の課題を整理・抽出し,それらを如何に解決して,持続的で住みやすいまちを創出するか,を考えることです。

こうした中で再生可能エネルギーを単なる“化石エネルギー源の代替”として捉えるのではなく,再生可能エネルギーを活用して,多様な地域課題を解決することはもちろんのこと,行政や企業,住民等のさまざまな立場から新たな価値を見出すことが重要となります。

そこで本講義では,以上の視点から単なる再生可能エネルギー施設の導入ではなく,地域課題の解決に加え,“地域の魅力向上”や“既存産業の活性化”,さらには,“災害時の電源供給”などに寄与する地域に寄り添った再生可能エネルギーの役割や地域との関係性についてご紹介します。

持続可能なまちづくりを海からの視点で考えてみよう

担当講師:寺口 敬秀

近年,気候変動に伴って,日本各地で集中豪雨による被害が増えています。
また,世界に目を向けても,海面上昇に伴う土地の消失や,高潮による被害範囲の拡大など,沿岸部の都市では様々な問題が起こり始めています。
一方で,広大な海洋空間は,まだ開発されておらず,様々な取り組みをする可能性を秘めています。
特に,建築・まちづくりの面では,海の上に浮かぶ建築物や都市の役割に注目が集まっています。
国際連合は,2019年に「Oceanix City」と称した計画を発表し,将来的な人々の居住領域としての海上の重要性を示し,約300万人の居住者を受け入れる新たな海上都市モデルを提唱しました。
また,欧米諸国では浮体式の集合住宅やオフィス,農業施設等が次々と実現しています。
日本でも同様に,東京や大阪で浮体式のレストランやホテルが建設され,身近な水辺空間の日常利用に向けた試行的な取り組みが実施されています。

本講義では,人類の将来に向けた持続的な都市計画を行う上での海の役割や可能性に注目し,国内外における海上建築物の歴史を解説するとともに,最近の海上に建設された建築物の事例などを紹介し,海洋建築の重要性を皆さんに感じていただきたいと思います。