情報0,1,・・・,∞

担当講師:香取 照臣

暮らしの中でもパソコンは当たり前の存在になり,家電製品と大して変わらなくなりました。
それだけに,ただパソコンを使うだけでは情報工学の勉強ではありませんよね。

このミニ講義では情報工学について,身近な例から大学で勉強できること,研究の対象になることまでをわかりやすく紹介していきます。
情報の世界では,「1から」ではなく,「0から」始まるのですが,この講義を聴いていただくことで,∞の可能性がひろがるでしょうか?

情報0,1,・・・,∞のイメージ図

人工知能とは何か?

担当講師:保谷 哲也

みなさんは,「人工知能」という言葉を聞くと,どのようなことをイメージされるでしょうか? 
おそらく,手塚治さん原作の「鉄腕アトム」やスピルバーグ監督の映画「A.I.」などで登場する,人間型のロボットが思い浮かぶことと思いますが,今,現実にこのような人工知能を搭載したロボット・人工生命体の実現に向けて研究が世界中のあちこちで盛んに行われています。

この「人工知能を創る」というテーマに関して言えば,主に情報工学の分野で,コンピューターの進歩とともに発展してきましたが,つい最近になって,ようやく情報工学のみならず,脳科学(認知科学・心理学)や言語学の知見も取り入れる必要があることに研究者達は気づいたのです。
ですが,その一方で,まだ人間の子供並みの知能はおろか,アメーバーのような単体細胞生物の動きすら人工的に模倣するのが困難なくらい研究は進んでいません。

また,今後も発展を続ける人工知能ですが,それが実現され,私たちの身の回りに当たり前に存在する未来の社会ついてあれこれ思案するのもやはり研究者達の仕事ではないか,と私は思います。つまり,「創る」ということと並行して,その人工的に生み出されたものと「共存する」ことも考えてゆかねばなりません。
ここでは,その実際に「創る」ということと,いかに我々人類と「共存する」のが望ましい在り方か,もテーマに含めて考えていきます。

電磁波の不思議 ~光速より速く伝搬することもある群速度~

担当講師:細野 裕行

アインシュタインの相対性理論発表以来「全ての物質・情報は光の速度を超えることはない」ということは常識となっています。
それではこの世の中に光速を超えるものが存在しないのかと言えばそんなこともありません。例えば群速度か光速を超える場合というものがあります。これは相対性理論が発表された当時,それに対する反証として議論されました。この混乱は,ゾンマーフェルトとブリアンが「波頭の伝搬速度が光速を超えることはない」ことを証明し,収斂しました。
しかし,混乱の大本は「群速度=情報伝達速度」という誤解にあります。この誤解は未だに尾を引き2000年代になっても超光速通信の可能性が話題になるぐらいです。

この授業では,電磁波にまつわる速度(位相速度・群速度・波頭速度・エネルギー速度等)について簡単に説明します。
また電磁パルスにおける群速度の定義およびなぜ超光速になり,それが物理的になぜ正しいかを簡単に説明します。

超新星で探る宇宙の膨張速度

担当講師:岩本 弘一

宇宙は約137億年前に起きたビッグバン(大爆発)以来今日まで膨張を続けてきたと考えられています。
その膨張速度を表すハッブル定数Hoを正確に決定することは,宇宙の年齢を知ることに対応し,現代天文学の最重要課題の一つです。宇宙の膨張速度を求めるには,遠い天体までの距離とその天体が遠ざかる速度を知ることが必要です。太陽のような恒星が進化の末に到達する白色矮星(はくしょくわいせい)という星が大爆発をおこす現象をIa型超新星といいます。

この超新星はどれも同じ明るさで輝くので,みかけの明るさから超新星までの距離を測定することができます。
これを利用して,最近では,非常に遠方の超新星の距離が測定され,宇宙膨張の速度や速度の変化率(加速度)が正確に求められるようになりました。
その結果,現在の宇宙では,膨張を加速させる「真空のエネルギー」の効果が,減速させる重力の効果を上回っていて,加速膨張していることが明らかになりました。

宇宙の大きさの時間変化
宇宙の大きさの時間変化

才能を伸ばす学び方,教え方

担当講師:北村 勝朗

人が何かを学び上達していく上で,指導者の影響はとても大きいと考えられています。
実際,様々な領域で人を育て大きな成果に結びつけてきた人々は名コーチと呼ばれ,その指導力・指導実践が高く評価されています。それは単に知識や技術の教え方が上手ということだけではなく,学ぶ人々がやる気を高め,集中し,チームとして協力し合いながら,質の高い学びに自ら取り組めるような「学びのしかけづくり」が上手だからです。
ではこうした「学びのしかけづくり」とはどのようなものでしょうか。そして,そうしたしかけによって学びはどう変わるのでしょうか。

本講義では,こうした問いに答えるために,いくつかのテーマに沿ったワークショップを実施します。
キーワードは,「上達のコツ」「チームワーク」「集中力を高める」「やる気スイッチ」「仲間関係づくり」そして「自信を高める」です。
人を育てることですばらしい成果をあげてきた優れた指導者たちの指導実践を素材とし,名コーチの教え方のコツを習得すると同時に,そうした名コーチの指導のもとで学んだ人々の学び方も学ぶことで,人が学び育つヒントを探っていきます。
学校(幼稚園・小・中・高・大),スポーツ,音楽,芸術,科学,わざ,ビジネスといった様々な領域が対象となります。

様々な領域のエキスパートを招いて小学生がインタビューをし才能開花法を学びました。
チームビルディングのワークショップ
チームビルディングのワークショップを通して,仲間と力を合わせて目標を達成する方法を学び実践しました。

脳の中を物理学で見る

担当講師:小松﨑 良将

記憶や学習をはじめとした脳の働きが,科学の言葉で語られるようになってきました。人は外からの情報を受け取ったり,学んだりするのに,その脳を利用しています。こうした脳の活動に関係した物質や現象が明らかにされつつあります。

脳は神経細胞(ニューロン)により構成され,神経細胞同士が神経線維を伸ばして情報のやり取りを行っています。
その神経回路は非常に複雑で,例えばヒトでは約一千億個の神経細胞が数千個以上の細胞と情報をやり取りしています。神経細胞は生体特有の物質(生体高分子やイオンなど)で構成されていて,やり取りしている情報はパルス上の電気信号(活動電位)です。
だから,脳の働きを調べその法則を見つけるには,脳の中でそれらの物質がどのような物理法則で制御され,働いているのか調べる必要があります。ヒトに限らず,マウス,昆虫,軟体動物でも同じ仕組みで脳が働いています。そのため,比較的単純な脳を持つ生き物から研究がされてきました。

授業では,脳の記憶に焦点を絞り,物理学が脳の神経回路網やその制御の仕組みにどのように迫ってきたのか見ていきます。

ナメクジの脳中枢神経系
ナメクジの脳中枢神経系
その活動パターン
その活動パターン

風のエネルギーの有効利用 ―庭で風力発電できる?―

担当講師:関谷 直樹

日本でも風力発電所が各地で建設されるようになってきました.
その多くは,平原,洋上等の人口の少ない地に建設されており,日本の風力発電の割合は全発電量の1%に過ぎません.

この講義では風の持つエネルギーをどの程度電気へ変換できるか試算し,太陽光発電のように各家庭でも風力による発電を利用できるか検証します.

微分方程式の理論と応用

担当講師:水野 将司

微分方程式とは,導関数を含む未知関数を含む方程式のことです.導関数は,その関数の変化の割合と関係があるので,微分方程式は変化の割合に関する方程式ということができます.
従って,現時点での関数の変化から,未来の関数の状態を決めるルールともいえます.

私の研究室では,微分方程式の性質を調べること(理論)と微分方程式をどのように使うか(応用)の双方を研究しています.
この研究のために,微分積分を使うことはもちろんのこと,ベクトルや複素数,数列を使うこともあります.さらに,コンピュータを使って,理論を構築するための数値計算を行うこともあります.また,方程式をどのように使うかを調べるために物理や化学,工学の知識を勉強することもあります.
私自身は理論寄りの研究を主体に行っていますが,理論と応用はお互いに影響を与えあって,研究が進むものと考えています.

有限・離散な数学― グラフ理論

担当講師:善本 潔

グラフ理論におけるグラフとは,普段使われているグラフと異なり,幾つかの点とその間を結んだ線で出来ている図形のことをさします。例えば鉄道の路線図や道路図などが,その具体的な例です。
グラフ理論は,そういった図形の組合せ的性質を研究する数学の一分野です。


歴史的には,オイラーの一筆書きの問題,いわゆる「ケーニッヒベルクの橋問題」と呼ばれるオイラーの定理が最も古い定理の一つでしょう。
しかし現代のように大きく発展したのは20世紀からで,何千年の歴史を持つ数学の中では,新しい分野の一つといえるでしょう。しかしそれだけに,まだまだ未解決な問題が多く残されていて,活気に満ちたジャンルといえます。よく知られた「四色問題」はグラフ理論の問題で,解決されたのはわずか30年前です。しかもその証明はコンピュータを使った煩雑なもので,現在でもシンプルな証明を与えようという試みが行われています。

MRIの原理:なぜヒトを透視できるのか?

担当講師:山田 和彦

皆さんはMRIという言葉を聞いたことはありますか?町中の病院やクリニックにあり,ヒトの内部を透視できる医療機器の一つです。

MRIの正式名称は磁気共鳴画像化(Magnetic Resonance Imaging)と言い,MRIは英語名の3つの単語における頭文字の略語です。私たちの体の中をのぞく不思議なカメラのようなものです。でも,実際にはレントゲンやCTとは違う「ある物理現象」を利用しています。

この講義では,磁石とヒトの中にある水素原子の性質から「なぜ体の中が見えるのか」をスライドや動画を用いて高校生にもわかりやすく説明します。

また,MRI撮影時になぜ指輪やネックレスを外す必要があるのか,頭上で響く騒音の原因はなんであるのか,多数回の撮影で健康被害は存在するのか,などのトリビアを解説したいと思います。