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2018年12月27日

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物質応用化学科超分子化学研究室 須川 晃資准教授、博士課程1年 神 翔太さんらが携わる共同研究の成果が、アメリカ化学会のハイインパクトファクター雑誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

<アップコンバージョン発光におけるプラズモン共鳴の影響を詳細に解明。 高効率発光への糸口を見つけることに成功>

物質応用化学科超分子化学研究室 須川晃資准教授、博士課程1年 神 翔太さんらが携わる共同研究にて、アップコンバージョン発光におけるプラズモン共鳴の影響を詳細に解明。 高効率発光への糸口を見つけることに成功しました。
この研究は、日本大学(理工学部:須川 晃資 准教授、大月 穣 教授、高瀬 浩一 教授、神 翔太 大学院生ら、工学部:加藤 隆二 教授ら)、長崎大学(田原 弘宣 助教)、滋賀県立大学(秋山 毅 准教授)、中央大学(小澤 寛晃 助教(元:中央大学))、産業技術総合研究所(岡崎 俊也 副研究センター長,渡邉 敬之 研究員)らのグループの共同研究によるもので、その成果が、この度アメリカ化学会のハイインパクトファクター雑誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

<発表雑誌>
雑誌名:ACS Photonics
論文タイトル:Precise Control of Localized Surface Plasmon Wavelengths Is Needed for Effective Enhancement of Triplet–Triplet Annihilation-Based Upconversion Emission
著者:Shota Jin, Kosuke Sugawa, Naoto Takeshima, Hironobu Tahara, Shuto Igari, Satoshi Yoshinari, Yuri Kurihara, Shiryu Watanabe, Masami Enoki, Kenta Sato, Wataru Inoue, Kyo Tokuda, Tsuyoshi Akiyama, Ryuzi Katoh, Kouichi Takase, Hiroaki Ozawa, Toshiya Okazaki, Takayuki Watanabe, and Joe Otsuki
DOI番号:10.1021/acsphotonics.8b01292

<研究のポイント>
◆三重項-三重項対消滅現象に基づくアップコンバージョン発光において、プラズモン共鳴が高効率化(正の効果)と低効率化(負の効果)の両効果を併せ持つことを明らかにしました。
◆プラズモン共鳴によるアップコンバージョン発光の高効率化のためには、プラズモン共鳴波長の厳密な制御が鍵を握ることを実証しました。
◆アップコンバージョン発光は、太陽電池などの太陽光デバイスにおいて、利用できていない光を利用可能な光に変換するために期待されている技術です。すなわち本成果は、太陽光デバイスの抜本的な効率改善に繋がるものです。

<研究概要>
アップコンバージョン発光現象(注1)は、低エネルギー光(長波長光)を高エネルギー光(短波長光)に変換する現象であり、太陽光デバイスが抱える、利用不可能な光の存在による機能の損失という課題を解決する有力な候補の一つです(図1)。例えば、多くの太陽電池では、太陽光に多く含まれる近赤外光(長波長光)を電気エネルギーに変換することが困難ですが、近赤外光を可視光(短波長光)に変換することで電気エネルギーに変換が可能になります。それゆえ、アップコンバージョン発光の効率を向上させる研究は非常に重要になります。日本大学、長崎大学、滋賀県立大学、中央大学、産業技術総合研究所で構成された共同研究グループは、三重項-三重項対消滅現象に基づくアップコンバージョン発光現象(図2)において、金属ナノ粒子の特異な光学現象(プラズモン共鳴(注2))が高効率化(正の効果)と低効率化(負の効果)の両効果を併せ持つことを実証しました。光増感分子の光吸収過程において、プラズモン共鳴の集光アンテナ効果(注3)が光吸収能力を格段に向上させ、アップコンバージョン発光効率が向上しました。また、プラズモン共鳴が発光分子の発光過程に作用することによって、やはりアップコンバージョン発光の効率が向上しました。一方、アップコンバージョン発光に至る過程で生成する、光増感分子の三重項励起状態にプラズモン共鳴が作用することによって、アップコンバージョン発光の効率が著しく減衰することが明らかになりました。
 本成果はアップコンバージョン発光の効率の飛躍的な改善に向けて、重要な指針をもたらすものであり、太陽電池(注4)や光触媒(注5)などの種々の太陽光デバイスの抜本的な機能改善など幅広い応用が期待されます。
 今回の研究成果は、日本大学(理工学部:須川 晃資 准教授、大月 穣 教授、高瀬 浩一 教授、神 翔太 大学院生ら、工学部:加藤 隆二 教授ら)、長崎大学(田原 弘宣 助教)、滋賀県立大学(秋山 毅 准教授)、中央大学(小澤 寛晃 助教(元:中央大学))、産業技術総合研究所(岡崎 俊也 副研究センター長、渡邉 敬之 研究員)らのグループの共同研究によるもので、2018年11月16日にアメリカ化学会が刊行するACS Photonics誌にオンライン掲載されました。

<研究の背景>
アップコンバージョン発光現象は、低エネルギー光(長波長光)を高エネルギー光(短波長光)に変換することが可能な技術です。この現象を高効率に誘起することができれば、多くの太陽光デバイスの高性能化が期待できます。例えば、多くの太陽電池では、太陽光に多く含まれる近赤外光(長波長光)を電気エネルギーに変換することが困難ですが、近赤外光を可視光(短波長光)に変換することで電気エネルギーに変換が可能になります(図1)。
これまでに、低エネルギー光を高エネルギー光に変換するアップコンバージョン発光現象は、様々な機構によって実現されてきましたが、いずれも太陽光を遥かに凌ぐ強い光でしか駆動できず、太陽光デバイスへの応用は困難でした。しかし最近、三重項-三重項対消滅現象に基づくアップコンバージョン発光現象が、太陽光レベルの弱い光によっても発現しうることが実証され、多くの研究が進展しつつあります。その機構には、光増感分子と発光分子間、および2つの発光分子間の効率的なエネルギー移動を含むため、分子の円滑な拡散運動が重要となりますが(図2)、特にその分子拡散運動が著しく抑制される固相媒質中では発光効率は著しく低くなります。それゆえ、太陽光デバイスの機能改善などへの応用が期待されている一方、実応用に至っていないのが現状です。
 一方、数ナノメートルから数十ナノメートルサイズの金や銀のナノ粒子は、プラズモン共鳴という集光アンテナ現象(光の捕捉現象)を発現し、特定の波長域において入射光よりも著しく強められた電磁場を粒子近傍に局在させます。これまで、この特異な光現象によって分子の発光反応の効率を向上させる効果が報告されており、蛍光標識型バイオセンサーの感度の改善などへの応用が図られてきました。これと同様に、三重項-三重項対消滅現象によるアップコンバージョン発光現象においても、プラズモン共鳴の効果による効率の改善が期待されてきましたが、このような複雑かつ多段階にわたる発光過程において、プラズモン共鳴がどのような影響を及ぼすかは詳細に理解されていませんでした。

<研究内容と成果>
 日本大学、長崎大学、滋賀県立大学、中央大学、産業技術総合研究所から成る共同研究グループは、プラズモン共鳴の発現波長の異なる、3種類の三角形プレート型銀ナノ粒子を化学的に合成しました(図3)。それぞれは、光増感分子の光吸収過程、発光分子の発光過程、光増感分子の三重項励起状態に作用するように発現波長が調整されています。これらナノ粒子を固定した基板上を、光増感分子・発光分子が適切な濃度で封入された固相ポリマー薄膜で被覆しました(図3)。
光増感分子の光吸収過程にプラズモン共鳴が作用した際では、プラズモン共鳴に伴う集光アンテナ現象によって分子の光吸収能力が格段に向上し、アップコンバージョン発光が高効率化しました(図4)また、アップコンバージョンの発光効率が最大となる光強度が、著しく減少する効果も得られ、より弱い光の照射によっても高い発光効率が得られることも分かりました。さらに、発光分子の発光過程にプラズモン共鳴が作用した場合においても、プラズモン共鳴による強い電磁場の生成によって、アップコンバージョン発光の増強が得られました(図4)。これら2つの効果を組み合わせることによって、アップコンバージョン発光の飛躍的な高効率化が期待できます。
 一方、光増感分子の励起三重項状態にプラズモン共鳴が作用した場合では、アップコンバージョン発光過程における光増感分子から発光分子へのエネルギー移動反応が阻害されることが分かりました。その結果、著しいアップコンバージョン発光の低効率化が誘起されることが分かり(図4)、プラズモン共鳴はアップコンバージョン発光を増強させる正の影響と、著しい減衰を導く負の影響を併せ持つことを実証しました。すなわち、固相系におけるアップコンバージョン発光の高効率化のためには、強い集光アンテナ現象を発現する金属ナノ構造の開発に加え、プラズモン共鳴の発現波長の厳密な制御を要することが証明されました。本成果はアップコンバージョン発光効率の飛躍的な高効率化に向けた指針をもたらす重要なものであり、太陽電池や光触媒などの種々の太陽光デバイスの抜本的な機能改善に繋がります。

<用語解説>
(注1)アップコンバージョン発光現象
物質(分子を含む)に光を照射すると、物質が光エネルギーを吸収した後に,照射した光と異なるエネルギーの光を放出します。一般的には照射した光よりも低いエネルギーの光を放出します(ストークスの法則)。一方、このストークスの法則に従わずに、低エネルギー光を吸収し、高エネルギー光を放出する現象をアップコンバージョン発光といいます。これまで、希土類系ナノ材料を用いたアップコンバージョン材料や、二光子吸収を活用するアップコンバージョン現象が知られてきましたが、これらは光源にレーザー光などの非常に強い光を必要とし、太陽光で駆動することが困難です。一方、三重項-三重項対消滅を利用するアップコンバージョン発光現象は、原理上、太陽光レベルの低い光で駆動可能になるため、非常に注目を集めています。

(注2)プラズモン共鳴
ここで述べたプラズモン共鳴は、正確には局在型表面プラズモン共鳴といいます。金属ナノ粒子やナノ構造に光を照射すると、粒子(構造)内の自由電子が集団的に振動し、入射光の電場の振動と共鳴することによって生じます。この現象はいわばナノ粒子による“光捕捉現象”であり、入射した光よりも強められた光電磁場を粒子近傍に局在させます。共鳴する波長は粒子の形やサイズ、材質によって任意に調整可能であり、この研究では、それぞれプラズモン共鳴を異なる波長で示す、3つの異なる辺長を持つ三角形プレート型銀ナノ粒子を合成して利用しました。

(注3)集光アンテナ効果
上述((注2)プラズモン共鳴)のとおり、プラズモン共鳴による強い光電磁場の発現は、ナノ粒子が光を集めて粒子周辺に留める効果であると言い換えることができます。すなわち、光のアンテナとして機能しますので、集光アンテナ効果と呼んでいます。

(注4)太陽電池
太陽光エネルギーを吸収して直接電気エネルギーに変換するエネルギー変換素子を指します。もっとも普及しているシリコン系太陽電池をはじめ、多くの種類の太陽電池が開発されていますが、太陽光に含まれている全ての光エネルギーを利用できているわけではありません。現状では、近赤外光などの低いエネルギーの光ほど、利用できていない傾向があります。

(注5)光触媒
光を照射することによって触媒反応を発現する物質を指します。これまでの光触媒材料の多くは、太陽光の中でも高いエネルギー光に該当する、紫外光でのみ駆動するものが多く、太陽光を効果的に利用することができていません。

<研究に関する問い合わせ先>
日本大学 理工学部物質応用化学科
准教授 須川 晃資(すがわ こうすけ)
Tel:03-3259-0833


物質応用化学科超分子化学研究室 須川 晃資准教授、博士課程1年 神 翔太さんらが携わる共同研究の成果が、アメリカ化学会のハイインパクトファクター雑誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

図1 太陽光デバイスの機能改善のためのアップコンバージョン現象の活用例

物質応用化学科超分子化学研究室 須川 晃資准教授、博士課程1年 神 翔太さんらが携わる共同研究の成果が、アメリカ化学会のハイインパクトファクター雑誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

図2 三重項一三重項対消減現象に基づくアップコンバージョン発光現象の駆動機構

物質応用化学科超分子化学研究室 須川 晃資准教授、博士課程1年 神 翔太さんらが携わる共同研究の成果が、アメリカ化学会のハイインパクトファクター雑誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

図3 用いた3種の銀ナノ粒子とアップコンバージョン薄膜との複合化の模式図

物質応用化学科超分子化学研究室 須川 晃資准教授、博士課程1年 神 翔太さんらが携わる共同研究の成果が、アメリカ化学会のハイインパクトファクター雑誌「ACS Photonics」にオンライン掲載されました。

図4 アップコンバージョン発光におけるプラズモン共鳴の影響の総括図