日本大学理工学部 日本大学大学院理工学研究科
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2019年08月30日

メディアレポート

【参加報告】日本大学理工学部航空研究会メーヴェ36「鳥人間コンテスト2019」にて学生新記録達成!!<飛行距離38010.28m>

【参加報告】日本大学理工学部航空研究会メーヴェ36「鳥人間コンテスト2019」にて学生新記録達成!!<飛行距離38010.28m>

小学生の頃、テレビでみた鳥人間コンテスト。
限界を超えてもなお仲間のために力を尽くすパイロットに憧れた。
僕は、日大のパイロットになりたいと思った。
絶対に日大でなければならなかった。

そして今、
僕は琵琶湖の夢の舞台に立っている。
日大のパイロットジャージに身を包んで。


パイロット森田順也君(精密機械工学科3年)はいつも多くを語らない。夢見ていた日大のパイロットに決まった1年の冬から、ただひたすらに、長時間飛ぶことができる身体を作ってきた。先生達にアドバイスをいただきながら、筋力アップと体重制限のため食事も制限してきた。
もともと自転車好きだったというのもあって、練習は苦ではなかったという。
週末には往復200㌔をロードバイクで走り、負荷のかかる山道を走行するなどして鍛えてきた。総走行距離にすると2000㌔は超えているという。見えないところで一生懸命努力するかなりのストイックな性格だ。でも森田君にとってみればそれは当たり前のことで、特別なことではない。毎年毎年テレビでみてきているように、鳥人間コンテストのパイロットは、限界を超えてこそ見える景色というものがあることをわかっているからだ。他のチームのパイロットも同じ想いで努力を続ける中で、さらにそこから一つ飛び出す筋力と根性がないと上位に食い込めないこともよくわかっている。だからストイックですねと言われると「そんなことはない。当たり前のことをしているだけなので。」と答えるだけなのだ。

森田君の想いは格別だ。
日本大学の人力飛行機には、Linnetから始まる長い歴史と伝統がある。
さらに、日本大学理工学部航空研究会は、鳥人間コンテストに39回という最多出場を誇り、スタート直後の滑空機部門も含めると現在まで10回の優勝を誇る。その中でのチーム記録は2003年の大会の平綿甲斐先輩(メーヴェ 20)が飛んだ34654.1m。
この時は、当時の最長地点にあたる琵琶湖大橋付近まで飛行に成功し、パイロットの体調にも問題がなかったが、安全を考慮し着水命令により着水せざるを得なかった。
無念であったろうと思う。
だから、夢が叶った今、先輩達の想いの分まで飛びたかった。

メンバーは、「森田ならやってくれる」と口をそろえる。
機体を製作するチームは、前年の機体をさらに改良できるところは改良し、粛々と作業を進めてきた。部室である船橋キャンパスの6号館地下(通称6地下)には毎日必ず7時になると全員が集合し、作業の内容を確認する。
代表の吉田嶺花さん(航空宇宙工学科3年)は、とにかく決まりを守るということを大事にしたという。
楽しくても厳しく。
少しのミスがすべてに連動するため、一切の妥協を許さなかった。少しでも気になれば1からすべてやり直し。
航空研究会の特徴はほぼすべてを手作りするところだ。なるべく機械を使わない。手の方が精度が高いこともある。レーザーカッターも使わず、手で削っていく。揃いのつなぎはいつも発砲スチロールの粉で真っ白だ。
6地下では、背中を丸めて夢中になって一人ひとりが作業に没頭している。
そんな彼らが座っている長いベンチはびっちりと計算式がかかれている。それは、先輩が後輩に作業をしながら教えてあげる航空研究会の伝統だ。

チームはパイロットのためにラジコンをプレゼントした。
これは、旋回のシミュレーションができない森田君に、せめてイメージだけでもつけてもらいたいというチームの愛情だ。ラジコンとは言え、これが随分役に立ったと後日笑顔で語ってくれた。

大会初日の琵琶湖は、台風6号の影響で激しい風雨に見舞われた。
機体審査待ちをしていた各チームは翼を守るのに必死だ。
テントをブルーシートで囲い、そのブルーシートが風で飛ばされないように雨の中、必死に押さえている。
テントでは、設計担当の宮崎君と森田君がスマホで天気と風の状況をよんでいる。天候の変化に慣れている彼らは、こんな展開でも落ち着いて情報収集をしている。結局、あまりの天候に1日目の大会は競技途中で中止となってしまった。
やがて、さきほどの風雨が嘘のように天候が回復し、琵琶湖には大きな虹がかかり、空がオレンジ色に染まった。

いよいよその日はやってくる。
オレンジ色に染まったプラットホームをみて、森田君は何を想っただろう。

大会が近づいたある日、

「今、チームのメンバーに伝えたいことは?」

の問に

「機体を整えておいてほしい」

と静かに答えた森田君。
それは、一見そっけないように感じる人もいるかもしれないが、彼の本心は、機体さえ整っていれば僕がどこまででも飛んでやるよという気持ちのあらわれだった。
自分の体にあわせてた機体を、寝る間も惜しんで作り上げてくれたメーヴェ36の仲間たち。
彼らに一番いい景色をみせてあげられるのは、あとはもう自分の脚力次第なのだ。
やれることは全てやってきたつもりだ。
絶対に誰よりも長く飛んでみせる。

大会当日は、多少風の乱れはあったものの、好天に恵まれた。
ただし、台風の影響で予定されていた飛行順は、機体審査が終わった順となり、だいぶ変更がでてきている。
順番が早まった航空研究会がプラットホーム上にいる。
メーヴェ36は、33mほどもあるその長く美しい翼を照りつける真夏の太陽のもとキラキラと輝かせている。遠くからみてもその機体の美しさがよくわかる。白とブルーの花の模様のプロペラがはっきりと確認できる。代表吉田さんの渾身のプロペラだ。
森田君は、いつも通り涼し気な表情に見えるが、あのずっと思い描いてきた夢の舞台に日大のパイロットジャージを着て立てている事をかみしめ、内心は誰よりも闘志を燃やしていることだろう。自分との闘いの旅路がこれからはじまるのだ。

「41㎞飛んで新記録を作りたい」

彼の眼に迷いはまったくない。

風はおさまっている。
ゲートオープンの声がかかる。
そして森田君の声が響く。

「ペラまわします!」
「右翼OK?」
「左翼OK?」
「テールOK?」
「行きます!!」
「3!」
「2!」
「1!」
「GO!!!!!!」


メーヴェ36はまっすぐに滑り出した。
歓声があがる。

「美しい!」

メーヴェはその機体の美しさで鳥人間コンテストファンの中で人気がある。
プラットホーム上ではすでにメンバーたちが泣いている。

「行け―っ!!森田―っ!!」

気温は30℃。
これから気温はどんどん上がってくるだろう。
スピードにのっている。

応援ブースでは、絶叫している。

「押っせー押せ押せ押せ押せ日大!」

「飛べ飛べ飛べ飛べ飛べメーヴェ!!」

「森田―!いいぞー!」


高度を保った美しいフライトだ。
やがて竹生島が見えてきた。
島が近づいてくると風の流れが変わるため要注意だ。

ここまで15㎞を飛行時間40分。
森田君は自分に言い聞かせる。

「超えろ!ここだ!」


暑さもあって相当きつそうだ。

18㎞通過。
その時、コックピットのフィルムが剥がれた。
一瞬会場中が静まり返る。

「涼しくなった」

少しほっとしたような声がでる。
思わぬ出来事にも冷静だ。影響ないようだ。

やがて旋回ポイントのホーンがなる。

19㎞通過。
仲間が買ってくれたラジコンで何度もイメージトレーニングをしてきた。
絶対にいける。集中だ。

旋回完了のホーンがなる。

「シャーッ!!」


ここで暫定トップに出る。

21㎞通過。
少しづつ高度が下がっていく。

「森田、高度を少しづつ上げて。」

「きつい!」

「うるせー!あげろ!!」

「きついんだって!!!」


33㎞地点。
湖面に何度も近づく。
相当きつそうだ。
足がつりそうと声が漏れる。

「チーム記録が見えてきたぞ!!」

「高度をあげろ!!」

機体が湖面をかする。

チーム記録まであと1㎞。
機体は湖面すれすれだ。

「がんばれ森田―!」

会場中が絶叫だ。

「チーム記録超えたぞ!」

「シャーッ!!」


フライト時間100分。
学生記録36キロが見えてきた。
学生新記録通過。

「学生として最も飛んだ機体です!!」

会場中が湧く。
大会記録まであと4㎞。

37km通過。

「がんばれーがんばれーがんばれー!!!」

会場が一つになる。

森田君はもう声も出ない。
限界をはるかに超え
やがてメーヴェ36は静かに着水した。
その距離38010.28m
学生記録の更新となった。

一度水面に着いてから粘りに粘った理由を聞かれた森田君は一言絞り出すように

「意地っす」

「途中からきつくてきつくて何度も諦めようと思ったけど、宮崎のヤバイって声がきこえて・・・」

「聞こえたんだ・・・」

「ありがとな」

そう言って抱き合う宮崎君と森田君に、なんでもわかりあえる固い絆を目にした気がした。
お互いの声が魂を奮い立たせ、これだけ支えあえた証だった。

会場からは、この航空研究会の学生たちのまさに「ひたむき」な青春群像に、そして限界を超えてもなお、チームの想いを胸に挑み続けた姿に、大きな拍手が沸き起こりました。

メーヴェ36

秋山(交通システム工学科3年)
笹久保・野口・疋田・真船・宮崎・吉田(航空宇宙工学科3年)
森田(精密機械工学科3年)



今年も応援してくださいました皆様、誠にありがとうございました。
一緒に高めあってきた他のチームの皆さまも、本当にありがとうございました。
心から感謝申し上げます。
日本大学理工学部航空研究会は、
来年の挑戦に向け、新しいチーム、メーヴェ37が活動をはじめました。
どうぞこれからも応援をよろしくお願いいたします。

#日本大学理工学部 #日大理工 #日本大学 #日大

【参加報告】日本大学理工学部航空研究会メーヴェ36「鳥人間コンテスト2019」にて学生新記録達成!!<飛行距離38010.28m>

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