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2022年11月16日
レポート
【開催報告】公開市民大学を3年ぶりに開催しました。
11月5日(土)に公開市民大学講座を開催しました。
3年ぶりの開催となり、聴講希望が多く寄せられ、抽選で当選された方のみの受講となりました。
熱心な受講者に応えて公開講座も大変充実した内容でした。
1つめの講座は、航空宇宙工学科 山﨑政彦准教授による「地球と宇宙-超小型宇宙機による新しい科学と工学-」でした。実物大の超小型宇宙機を見せながら講演していただき、現在研究室で開発中の宇宙から地震予測をする技術などについてお話しいただきました。
2つめの講座は、数学科 橋口徳一教授・青柳美輝教授による「数学の愉(たの)しみ-和算からAIまで-」でした。日本の数学の歴史“和算”の歴史の紹介と、現在浸透してきている“AI”について、数学からのアプローチの紹介をしていただきました。
多くの皆様にご応募・ご参加いただきましたこと、感謝申し上げます。
第59回公開市民大学講座
- 講座1
- ■「地球と宇宙 -超小型宇宙機による新しい科学と工学-」山﨑政彦准教授(航空宇宙工学科)
13 時から 14 時 30 分に開催され、超小型宇宙機の実大モデルを見せながら講演が行われました。
①超小型の人工衛星による新しい科学と工学の形を探る。
②既存の技術にAIを融合させることで無限の可能性を探る。
③宇宙/衛星開発産業にもっと様々な人が参画する方法を探る。
の3つの視点から話が進められました。
①ではわれわれが人工衛星から受けている恩恵が改めて紹介され、超小型宇宙機(CubSat)の現状が紹介され、本学の CubSat 開発の歴史が語られました。さらに現在、宇宙から地震予測をする技術を開発中であること、AIを組み合わせることによって新たな科学成果が得られるよう研究を重ねていることが紹介されました。
②ではコンピュータによりデザインの最適解を素早く見つける「ジェネレーティブデザイン」の紹介がありました。
③では人工衛星開発が「システムズ・エンジニアリング」の優れた教材であることに着目し、トレーニングプログラムを開発し、教育に役立てていることや、今後も地球規模の課題解決につなげる超小型人工衛星開発に尽力していくことが宣言されました。
- 講座2
- ■「数学の愉しみ -和算からAIまで-」橋口徳一教授・青柳美輝教授(数学科)
15 時から 16 時 30 分に開催され、科学技術史料センター特別展とのコラボレーション企画として講演が行われました。
橋口教授からは「和算」と呼ばれる日本の数学の歴史が語られました。
「読み書きそろばん」とよく言われますが、そろばん伝来は室町時代の終わりごろであり、実際にはそろばんが教えられていた寺子屋は3割程度とあまり普及していなかった一方、そろばん教育が和算の始まりで、珠算の教科書『塵劫記』が和算の発展に寄与したことが紹介されました。さらに、和算家が自分で考えた問題を絵馬として奉納したのが「算額」であり、楽満寺の算額から2問が紹介され、今日ではコンピュータを用いて解を求めるような問題であったことが紹介されました。
青柳教授からは、まず現在の社会が置かれている状況から、今後 Society5.0 が目指されていること、「AI戦略 2019」ではAIがデジタル社会の「読み書きそろばん」と位置付けられていることが紹介されました。AI(人工知能)では自然言語処理、エキスパートシステム、画像認識、音声認識ができること、生物の神経細胞のニューラルネットワークを数学の理論によって代替する概念が紹介されました。さらにAIを学習させるためのモデルと、その中で最適なパラメータの見つけ方が最も重要であることが語られました。
モデルをどこまで複雑化するか、その結果が真の分布により近づくためには確率的に考察することが必要であることが紹介され、全体を通してAIに対する数学からのアプローチの紹介となりました。