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2022年12月17日
日本大学理工学部が設計製造した戦後初の本格的国産モーターグライダーN-70 Cygnus(シグナス)初飛行から51年
昨日2022年12月16日は、日本大学理工学部が設計製造した戦後初の本格的国産モーターグライダーN-70シグナス初飛行から51年です。さらに、本日2022年12月17日は、公開初飛行から51年、そしてライト兄弟初飛行の記念日でもあります。
N-70シグナスは、理工学部機械工学科航空専修コース(現航空宇宙工学科)と精密機械工学科が合同で、木村秀政教授(日本大学理工学部第6代学部長)の指導のもと昭和46年度(1971年度)(卒業研究は45年度から)卒業研究「N70 モーターグライダーの設計・試作」として進められたもので、昭和46年(1971年)12月16日に太田飛行場(群馬県太田市:現在は株式会社SUBARU 大泉工場)にて初飛行、翌17日に報道陣を招いての公開初飛行となりました。
N-70シグナスは、自動車用水冷水平対向型エンジンをつけたモーターグライダーで、耐空類別、特殊航空機X(動力滑空機)を目指したわが国では初めての試みでした。製作にあたっては、グライダー製作の専門家の指導を受け、基礎計画から細部設計、風洞実験から飛行実験まですべて学生の手で行われました。
白地に青のストライプ、そして垂直尾翼に描かれたシグナスのシンボル(白鳥座)が描かれた機体は、公開飛行時、黄金色に色づいた地上に映えて本当に美しかったそうです。
その機体は、名古屋国際航空宇宙ショーに展示され、木村秀政教授も機上され、操縦席にて満面の笑みを浮かべ、大変喜んでいらっしゃったとのことです。後に木村教授と佐貫教授共著の「世界の飛行機」(山と渓谷社)にて、佐貫先生から「シグナスは一種独特のスタイルを持ち、ソアラ―とも軽飛行機とも言える両棲的存在となった流麗な姿態は骨身を惜しまぬ学生たちの手仕上げで商品には見られない鏡面のような平滑さになり、後方にはね上がる気配を見せた操縦席のキャノピーは美しい水泡を形成している」と表されました。
機名のCygnus(白鳥座)は、木村教授が大きく羽ばたくことを念願し命名され、命名式は当時の日大両国講堂で1972(昭和47)年2月11日に行われました。
1955(昭和30)年代は、実機設計や実機飛行試験を大学で体験させることは不可能であり、真理を追究する大学としては、「もの作り」はふさわしくないとする雰囲気にありました。そのような中でも、木村秀政教授はいち早く実機開発の企画・設計・製作・実験の一連の機会をもうけ、学生達に提供し続けてきました。これら開発された機体は権威ある「ジェーン航空年鑑」でも日本の欄に日本大学の実績が大企業の専門メーカと対等に紹介されています。
この木村秀政教授の想いは、現在も日本大学理工学部の教育に引き継がれており、実験や実習をしっかりと行いながら、学生たちも教員も未知未踏の領域へ挑み続けています。
日本大学式 N-70 Cygnus(シグナス)モーターグライダー
- 滞空類別
- 特殊航空機X
- 諸元
- 乗員:1名
全長:6.90 m
全幅:15.00 m
全高:1.75 m
翼面積:15.0 m2
エンジン:スバルEA61(1100cc) 自動車用水冷水平対向4気筒(44hp/3800rpm)
最大速度:160 km/h
航続距離:417 km
- N-70の経歴
- ・習志野(現船橋)校舎でロールアウト(1971/10/27)
・登録 滞空類別、特殊航空機X 日本大学 定置場習志野校舎
・群馬県太田飛行場で初飛行(公開飛行は17日)(1971/12/16)
・卒業研究で、各種実験に使用される
・かかみがはら航空宇宙科学博物館に展示(現在に至る)