担当講師:河村 泰良
皆さんもご存じの通り,水は冷やすとある温度で突然氷になり,温めると水蒸気となって蒸発します。
日常の中では当たり前のことのように思えるかもしれませんが,温度を変えるだけで,たくさんの水分子の集まりが,まるで一つの意思をもったかのように性質をガラッと変える――改めて考えてみるととても不思議な現象です。
実はこのような現象は,水に限らず,さまざまな物質で見られます。
例えば,金属を十分に冷やすと,ある温度で突然,電気抵抗がゼロである「超伝導状態」と呼ばれる特殊な状態に移行します。また,普段はクリップなどを引きつける磁石も,加熱していくとある温度で磁力を失ってしまいます。
このように,温度を変えただけで物質の性質が劇的に変化するという,身近ながら奥深い現象の背後には,「たくさん」の粒子が集まったときに生まれる協調的なふるまいが潜んでいます。
これは,「ひとつ」の粒子では決して起きない変化が,集団として協力しあうことで初めて生じる現象であり,物理学では「相転移現象」と呼びます。
私たち理論物理の研究者は,この相転移のしくみを,熱力学や統計力学という物理の言葉で読み解いています。
この講義では,相転移の不思議さと面白さを,身近な例や簡単なシミュレーションも交えながらやさしく紹介し,熱・統計力学という深遠な物理の世界へと皆さんをご案内できればと思います。
