シミュレーションでみる量子カオスの世界

担当講師:佐甲 徳栄

「ブラジルの蝶のはばたきが,テキサスで竜巻を引き起こすか」――。
そんな比喩で語られる「初期値鋭敏性」は,カオスと呼ばれる現象の大きな特徴です。この予測不可能な複雑さは,化学反応や二重振り子,気象など,私たちの身近な物理現象の中に広く存在しています。 
では,原子や分子が躍動する「ミクロの世界」にも,カオスは存在するのでしょうか。数学的には,カオスが生じるには方程式が「非線形」である必要があります。しかし,ミクロの世界を記述する量子力学の基礎方程式は「線形」であり,理論上はカオスが起こらないはずなのです。

本講義では,二重振り子の量子版である分子振動のシミュレーションを通じて,量子世界に潜む複雑な振動の不思議を解説します。

二酸化炭素分子の対称伸縮・変角振動モードの波動関数
二酸化炭素分子の対称伸縮・変角振動モードの波動関数